93話 湖底二哩
お待たせしました。昨日更新できなくてすいませんでした。
魚人を先導に湖底を進む。
湖底には折れた木々が沈んでいて滑るし歩きづらい事この上ない。
思ったよりヘドロが溜まっていないのは嵐などで湖底が撹拌されるからなのだろうか?
這うように歩き、時には筋力で無理矢理泳ぐ。
浮かない身体で水中を行くという行為自体が人間の感性に逆らっているのか中々に神経負荷が高い。
湖を出るまでフェードアウトして置けば良いのだが、完全に自律行動させると先導の魚人を頭からマルカジリしちまう。
スーパーオーガボディの飢餓感が止まらない。
魚人達のうち何体かは湖底の彼方此方に落ちている魔核を拾い集めてはおっかなびっくりスーパーオーガに手渡してくる。
意外なことに湖の底には結構な数の魔核が沈んでいた。
多分陸棲の魔物が湖に落ちて溺死し魔核に戻ったまま再生分の魔素を吸収できずにそのまま何十年も沈んだままになっているのだろう。
明らかにレアなものや極端に大きい大物(魔核はプログラミングが複雑なもの程大きくなる傾向が強いため大きい魔核は強力な魔物のモノである可能性が高く当然生成には時間を要する)は残し後は貪り喰らう。
残した魔核はシリアルナンバーを異世界ナビゲーターへ登録し検索を掛ければ何時でも場所を特定でき魔物化した後は何時でもフェードインできる様にして置く、魔核へ斎藤のナビゲーターIDをマスター登録しておけば誰かに横から奪われる事も無い。
取り敢えず魚人共もマスター登録無しだったのでナビゲーターIDを登録して置く。いつもどおりサブマスターには三木のIDを登録。ヤツが発見さえできれば使えるようにはして置いてやる。
ナビゲーターにアバター登録さえしておけばイザというときフェードインすれば何時でも操作可能になるし、半自律で遠隔操作もできる。次に落水したときはサッサと魚人呼び出して救出させよう。
簡単な命令なら一度に数体同時操作もできるが知覚系が交錯して頭がおかしくなるので余りお勧めはしない。
スーパーオーガボディが魔核を喰らえば喰らう程に腹の奥底に熱くドロリとしたものが溜まっていく感覚がある。
そしてそれが溜まれば溜まるほど更に飢餓感が強くなっていく。
湖底を進むうち次第に周辺が明るくなり始め湖底が緩やかな登り調子になる。
半日ぶり位に湖面から顔を出せば、もう昼頃であろうか太陽はほぼ真上に位置していた。
息を吸おうとして深呼吸するが吸えない。肺の中か湖水で満たされているのに気が付いた。
上半身を捩りれば鼻からも口からもゴボゴボと湖水が排出される。
まだ肺に水が残っているが何とか呼吸はできるようになった。
やはり陸棲の魔物は肺から魔素を吸収するのが一番効率がいい様だ、一呼吸一呼吸毎に全身に活力がみなぎっていくのが判る。
サバザバと水をかき分け岸まで上がるとそこで膝を付きゲボゲボと肺の中の水をすべて吐き出す。
はぁはぁと息を繰り返し、人心地着くと顔を上げ辺りを見回した。
昨夜の闘いの後は見受けられない。周囲の山や湖の地形から言って戦いの場の対岸辺りに出て来たらしい。
それにしても…。
gyaaaaa!guooooow!gowoowowo!!gyaaaaa!guoowooow!!gowowowowo!gyaaaaa!guaooooow!gowowowowo!!
水面から顔を出した時に気付いてはいたが、湖岸周囲一帯を覆いつくすほどのモンスターの群れ、まさに百鬼夜行。
まぁ昼なのだが。
(どうなっていやぁがる)
魔物騒ぎの一角から他のオークやらオーガから小突かれながら一匹のゴブリンがガクガクと膝を震わせながら近づいてきた。
大きな頭陀袋を抱えている、震える両手で差し出した頭陀袋には大小雑多な魔核が詰め込まれていた。
(献上品か!?)
片手を突っ込み一握り掴みだす。
ざっと見てレア魔核はなさそうだ。
ガラガラと口内へ突っ込みボリボリ豆でも齧るかのように噛み砕く。
魔核は無味無臭ガラス玉でも食んでいるかのような感覚だが一袋食べ終わる頃にはなんとなく飢えは凌げてきた様な気持ちになった。空気中から魔素を補充し始めているのもあるかもしれない。
集団の方を見やり、先程ゴブリンを小突いていたオーガとオークを手招きする。
ニヤニヤした表情で近づいてきた二頭の頭に手を置き。
握り潰した。
胸をえぐり魔核を引きずり出し口内へ放り込む。
周囲の魔物共もドン引いている。
最初に近づいてきたゴブリンは腰を抜かしその場で小便を漏らしていた。こいつ等にも恐怖心というものがあるのか?
フツフツと腹の底から湧き上がる熱い塊に衝き動かされ両腕を高く掲げる。
「ウがゴぉあああああああああああああああ!」
腹の底から湧き上がる衝動に駆られた斎藤=スーパーオーガは雄叫びを上げた。
Wgagoaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!
周囲の魔物どもも呼応し叫び、湖の畔で周囲の山々に反響し響き渡った。
◆◇
Rrrrrri!
Rrrrrri!
再び美都莉愛の魔導小板が音を立てた。
何となく耀導徒第二はボクがお館様の小姓見習いとして参陣、美都莉愛と莉夢は御代町で後詰といった流れになった。
まぁこの部分はお館様とボクの利害が一致するところなので文句はない。
その後も玄関広間で行われている会議で今後の流れが決まって行っている最中。昼食も遅くに女中頭奈兎さんを先頭に御盆にのせられた炊き出しの握り飯が振舞われていた。
ボクは皿小板に握り飯を取り分け最奥に座るお館様の元へ、その横へ膝を付き捧げる。
「うむ、苦しゅうない」
お館様はそのうち一個を取り上げガブリとかぶりつく。
「うまいぞ、主らも食め」
お館様の一言に皆がそれぞれ山盛りの握り飯に手を伸ばした時だった。
「…隊長!魔物の群れが!?」
美都莉愛の魔導小板に忍者隊長が告げてきたのは最悪の報告だった。
魔物の群れは街の方向…木ノ楊出流市街地。つまりはこの御代町の方向に進みだしているらしい。
ついにこの事態が起こってしまった。
「館!」「お館!」
色めき立つ木楊団部隊長様方。
「まぁ、食え。腹が減っては頭も身体も働けぬ」
ニヤリと笑いながら握り飯を食み、味噌汁の椀を傾ける。
顔は笑いながらも身体から溢れ出るる闘志は隠しようもない。
…さっきボクはこの人と一戦交えようとしてたのか?今は何をやっても勝てる気はしない。
袰瓦様は大自然の中にたたずむ巨大な岩の様な存在感。正武先生は竹林にそびえる一本の野竹の様に飄々としながらもしなやかで強靭な雰囲気を持っているけれど。今のお館様は鍛え上げられた鋼の鞭。剛柔併せ持つ鋼鉄の柱には何をやっても効きそうにない。
そのお方が娘のことになるとあそこ迄ぐだぐだになっちゃうんだにぇ。
「鎧を持て!」握り飯を食べ終え緑茶を一服啜った後。お館様は下知された。
「はっ!」鎧番の方々が従前に用意された藍染色の魔導軽鎧を玄関広間へ運び込む。金の象嵌で家紋が彫り込まれた逸品だ。推定金貨千枚超。
木ノ楊出流家は【惑星級戦略魔導現象専用魔導知能№一七ニ〇】号様というシマノクニ随一の魔導騎を領しているものの五百年もの昔破損、職人による修理もままならず今日に至るまでその自己修理機能に望みを託し見守って来た。
そのため領主が戦場に出る場合魔導軽鎧が準備されているのだろう。
実際、魔導騎様を持たない貴族家、特に法服貴族や新興貴族の方々は先祖代々伝わる魔動騎等用意できないのだから比較的数のある魔導軽鎧の方を装飾したりして用いる事が多いのだそうだ。
ボクもお館様付小姓としてその着付けを手伝わねば、そう思い立ちあがった時だった。
「おいおい、首もぎ小僧、我を置いていく気か?」
広間に響くその声に、思わずほくそ笑んでしまったよ。さあさ、皆さま…。
ご唱和ください 彼の名を。
今回はこれで終わりだと思います、次回は来週更新の予定です。
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頑張りますので今後もよろしくお願いします




