87話 無言の凱旋
お待たせしました
「と言う事で、取り敢えず追加の魔導小板かっぱら…お借りして参りましたわ、オホホホ」
取り繕ってももう遅い。わざとらしく笑う美都莉愛に忍者軍団皆様方ドン引きです。
でも魔導小板を使っての連絡体制は作戦遂行に鬼の様に有効だと言うことは間違いなく思い知らされたので美都莉愛とボクで(イナヅマ=羽生さんの薦めてくれた)魔導小板通信網の構築作戦も並行して行ってきた。
具体的には魔導小板よりも通信距離の長い魔導書板を防魔の里を始めとする各拠点施設に配置、範囲内に有る魔導書版小版同士で中継通信網を作り、木ノ楊出流市街と防魔の里との間で通信できる態勢を整えたと言う事になる、勿論美都莉愛の判断と権限で決定したのであくまで貸与と言う形を取らせて貰っては居るけれど。方向性としては間違えてはいないと思う。
これでいつ【闇王牙】が復活したとしてもどこかの拠点が補足できればお屋敷にまで連絡が届く。
お値段を気にしたら正直夜眠れなくなるほどの金額になるんだけれど、この非常事態に有効な手段を遊ばせておくなんて事は愚の骨頂であるので如何様にさせていただいた。
責任はボクと美都莉愛が夫婦で取るつもりだ、美都莉愛と共ならば、たとい火の中水の中だ!
ついでに言うと、美都莉愛は正武先生から先生呼びの許可が出た、本人は喜んで居たけれど以前の美都莉愛でいればモットはしゃいでいたはずが予測よりもずっと落ち着いていた。
確かに美都莉愛は少し雰囲気が変わった、何というか、莉夢に近い空気を纏うようになったと言うか。
正武先生は”覚悟が定まった”と評した。
そこに至る事こそが先生の弟子基準の第一条件だったみたいだ、なんとなくボクもそういった風に見て頂けたんだと思うとなんだか気恥ずかしい。
忍者軍団方々にもかなりの台数の魔導小板を配布したことによって密度の高い通信網が成立したと思う。やっぱり羽生さんは頼りになる。
合流したところで正武先生と八八二三〇様は先行して木ノ楊出流へご帰還頂いた、今本領は丸裸な訳だからそんな状態が長く続くのは好ましくない。
単騎で踏ん張って頂くことにはなるけれど僕達よりそちらを優先していただいた方が安心できる。
僕達の守りは忍者軍団の皆様で十二分です。正直、あの【闇王牙】とあそこ迄戦えたボク達耀導徒第二の火力はそこそこあると自負している。忍者の皆様の物腰からもそういった意味での敬意は感じ取れるので多分冷静に考えてそうなのだと思う、勿論、魔導装備の性能のお陰だと言うことを忘れてはいけない。
ボクたちは郷土の英霊と共にお屋敷への向かう道程を進むことになる。
◇◇
「さて、可汎殿、貴領上空へ入り申した、領都迄もう少しですよ」
「忝ない、伽令度新吾殿、この借りはいずれ…」
家格としては格下とはいえ朱秘頼図弩伯爵直臣の騎士爵といえば樫鵜県内ではほぼ同格扱いと言っても良い。
朱秘頼図弩県軍内においては何かと馬が合うと言うこともあり懇意にさせて貰っては居るがそれとこれとは別問題である。
友人づきあいとは言っても貴族同士の貸し借りはとても重要だ。
「いやいや、卿にはいつもご厚情頂いております故、ほんのご恩返しですよ」
【制空級搬送魔導飛装 管理魔導知能№ 八七二三】号は乗り込み型の飛空魔導騎、魔導騎士である伽令度新吾・沙綾部呂騎士爵はにこやかに応えた。
伯爵の威を借りず何かと気を使い立てるべき所を弁えてくれるのも有難い。落ち着いたらご家族を領にお招きし充分に杯を酌み交わしたいものだ。
朱秘頼図弩伯爵閣下も突然の可汎の申し出に快く虎の児の飛空魔導騎の使用を許可してくれた。名目上は定例訓練飛行ではあるがこういう時融通が利くのはありがたい、今年も盆暮れの付け届けは欠かさない様にしよう。
数日後に立つ予定ではあったがやんごとなき事情の発生により帰省の馬車隊は息子に任せ、個人の伝を駆使しで単身空路にて帰郷の徒についた可汎であった。
(あの秘事を知っているとは、まさか本物…いや、偶然の可能性も?…はあり得ないな)
色々の思いを胸中交錯させながら、八七二三号の客座席に腰かけぼんやりと外部映像を見つめる。見覚えのある地形、上空から望むとこう見えるのかと感心しているうちに、御代町が視界に入ってくる。
一番高い建物は施療院、中央学校と併設されている神殿の中央塔。あそこの上からならば遥か防魔の山頂がかろうじて見渡せる程だ。
その手前に見える屋敷の庭に着地して貰えるよう沙綾部呂卿へ願い出る。
屋敷の直ぐ脇まで寄ったときに不可思議なモノが見えた。
屋敷裏手の森へと続く道、進軍準備中と見られる領軍が真っ二つに分かれ直立不動で敬礼を捧げる間を徒士で進む小集団。その中央付近に袰瓦の五六八〇がゆっくりと歩みを進めている。
(片腕がない!)
沙綾部呂卿も異様な雰囲気を感じ取ったようだ。
「木ノ楊出流卿、少し手荒い着地となるが構いませんな?」と問うてきた。
「構いません、よろしくお頼申す」
些少予定を変更して屋敷の中庭でなく裏庭へ着地してもらう事とした。
着地と同時に乗降扉を解放してもらい、可汎を認識した領軍兵士たちが、五六八〇までの道を開く、その人道を走る可汎。
まさか、まさか、まさか、まさか。
嫌な予感がよぎる。
徒士で進む小集団、正武配下忍者軍団の中から駆け寄って来る者がいた。その出で立ちはギョッとさせるものであったが、かける途中で開いた面頬の中から現れた顔は
「美都莉愛!」
「お父様!」
両手を開き駆け寄る娘を受け止める抱きかかえる。
くるくるとその場で回転し勢いを相殺しながら。
「美都莉愛、暫くの間に随分と大人に…」言いかけて
ぐいと歯を食いしばった娘の目から大粒の涙がボロボロと溢れ落ちた。
「お、おどうざば…おじ、おじさばが…」
巨熊墜つ
木ノ楊出流男爵領重鎮、袰瓦・有手倉騎士爵、英霊の館へ登るの報は樫鵜県内はおろか近隣国域にまで轟き渡った。
昨夜は更新できませんでした( ノД`)シクシク…
これから明日夜までに1話分書けたら明日も更新しますが書けなかったら来週になります。
なんで平日中は一話完成できないんだろう…。
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頑張りますので今後もよろしくお願いします




