85話 遥
あ熱ぃ…
また、この灼熱地獄か、毎度毎度アバター焚きやがって!ふざけるな。
流石のスーパーオーガボディもメガトン級のパンチを往復で食らったらかなりのダメージが入った。
普通ならここで補佐AIがベイルアウトを促すところだが、このアバターボディ、まだ、戦えるってか?
吹き飛び倒れ込んだ先の炎の中で体の下に何かある。
(そうか、三木の人狼ボディ、満月の夜の特効でまだ朽ちてないのか)
…ならば。
折れた腕を無理矢理に動かし、燃える人狼ボディの胸に手刀を突き立て、胸の中の魔核を抉り出す。
体液に塗れた核を頬張り、スーパーオーガその牙でばりばりと噛み砕いた。
◆◇
「が、あ、ああああ」
炎の中から吠え狂い、立ち上がる【闇王牙】。
未だ立ち上がるだけの力を残しているのか、
呆けている美都莉愛の頬を張り飛ばす。
目に意志が蘇る。
「未だ終わってない!行くぞっ美都莉愛!」
「ハイッ!」
溢れる涙を振り払い、二人で五六八〇様から飛び降りる。
合体!【炎矢】体勢を取るっ。
「五六八〇様っ!退避をっ」
「わかったのー」
慌てて天蓋を閉め後方に下がる五六八〇様
正武先生が徒士で【闇王牙】に躍りかかる
縺ゅj縺後→繧医ャ!繧キ繝ウ繧ッ繝ュ邇?3??カ翫∴縺溘▲!譁ー險倬鹸縺?繧上▲
(ありがとよッ!シンクロ率93%越えたっ!新記録だわっ)
ことごとく攻めを受けられ転がされる八八二三〇様。
「ぐぬぬぬぬ」
悔しそうな正武先生の声が頭部防具から流れる。
脚部の魔導装置が完調であれば…これは初期に飛空装置を破壊した【闇王牙】の判断が正しかった事にほかならない。
【闇王牙】に打ち込む【炎矢】も最初の一本二本はともかく、三本目から太い枝付の木を振り払い叩き落とされる様になってしまった。
でも、諦めない。
ボク達の方に一歩、また一歩と近づいてくる【闇王牙】
莉夢がボク等の斜め前に長杖を構え立つ。
そうだ、ボク等はまだ戦える、背中には守らなきゃならない木ノ楊出流の未来があるのだから。
正武先生と八八二三〇様も何度も【闇王牙】の前に立ちふさがるけれど、弾かれ、森の中に投げ飛ばされる度にあちこちの装備が破損して行く。それでも立ち塞がる何度も、何度でも。
ボク達も逃げない、撃ち続けられる限りの【炎矢】を撃ち続ける。
やがて、目の前の【闇王牙】の手があと数歩でボク達に届く所までやって来た。
美都莉愛は【障壁】で魔力の続く限り守る。最期は…。
さっきと似たような状況になったけど心持ちはまるで正反対だ。
先鋒莉夢。
「出る」
莉夢は、一言発して前進。
「諏訪久」
美都莉愛の声に振り向く。
美都莉愛の唇が口元に押し当てられた。
惜しい、面頬上げておけばよかった。
莉夢が、腰だめに杖を構え突っ込んで行く。
よし!
次鋒諏訪久いきます!!。
ボクだけどボクじゃなかった。
後方から飛んできた丸太が莉夢を追い越し【闇王牙】を吹き飛ばした。
思わず振り向く。
「木ノ楊出流の未来に何するものぞ」
木ノ楊出流の重鎮、白熊様の蛮声が響き渡った。
◇◇
若い頃は息子にこんなに使い勝手の悪い魔法を宛がうアホウがあろうかと、散々粗忽者の親父殿を恨んだものだが。
この場、最期の最期でまさか…感謝する時が来ようとは…。
【火事場のクソ力】
沸々と吹き上がり湧き出る最後の力を絞り出せ袰瓦、操作舵を握りしめ押しだす。前進!
子どもらの、木ノ楊出流の宝の声を頼りに【闇王牙】へ向かう。
くそう、目が霞んでよう見えんわ。
「五六八〇、【闇王牙】へ近づけ、我等の最後の力を使う」
「御爺!だめ!御爺死んじゃう」
「よいか? 五六八〇、ワシは死なん、あの頼もしき若人共が木ノ楊出流に生き続ける限りワシは死んではおらん、わかったか?五六八〇」
「…袰瓦…」静かに落ち着いた男性の声が五六八〇の天蓋の中に流れた。
「はて、どちらかな?御声は先代様の様にも聴こえるが」
「私は九郎、木ノ楊出流初代九郎守だ」
「なんと…初代様とな、ついにこの老骨目をお迎えにござったか、なんと勿体ない…しかし今少し待たれよ、木ノ楊出流の敵を道連れに道すがら参りましょうぞ」
「勘違いするでない粗忽者め、私が汝の敵にまで導こう、見事討ち果たしてみせよ」
「お、お、お、感謝申し上げますぞ!初代様」
◇◇
「袰瓦様ぁ!お退りください」
「逃げてぇ!伯父様ぁ」
ダメだ、僕達の声届いていない?
五六八〇様はずんずんと【闇王牙】に向かって進んでいく。
ボクの胸元から金色の甲虫が飛び立った。
『イナヅマ!』
『袰瓦を援護してくる、矢での牽制を続けてくれ』
◇◆
あんだぁ?デカブツ退場じゃなかったのか。
まぁいい後か先かだけの違いだ、おっと、いくらマニュピレーターで捕まえに来てもそんなトロい動きじゃ捕まってやれないぜ?
銀鷹といい火の矢のガキ共といい何故にこうも諦めが悪い。
この世界ができたとき、科学力の低い方は先に発展した隣の世界から搾取蹂躙される事は自然な運命だったんだよ。
運命に逆らっても無駄だ!諦めろ!――――俺のように。
銀鷹の蹴りを躱す、火の矢を払い落とす、マニュピレーターを避ける。
踊りかかって来る銀鷹を再び森へ蹴り飛ばす、火の矢を払う。めんどくせぇ!
譁手陸縺輔s!螟ァ螟峨□
(斎藤さん!大変だ)
あん!だれだ!今、いそが…
譁手陸縺輔s!
(斎藤さん!)
なん…だと?
声の方に振り向く、肩口に止まる小さな金色の塊。
繝舌?繧ォ繝舌?繧ォ
(バーカバーカ!)
ブゥうううと音を立てて黄金虫が飛び立った。
◆◇
「今だ!袰瓦!」
九郎守様のお導きにより一瞬動きの鈍った【闇王牙】を捕らえることが叶った。
だがこのままでは爪をこじ開けられまた元の木阿弥だ。さようなれば。
袰瓦には、【闇王牙】との戦いの中で気付いたことがある。
余りにも硬すぎる守り。余りにも重すぎる攻め。この二つを両立させる条件とはどういったものか。
そしてその予想は五六八〇の主腕で【闇王牙】を捕えた時確信に変わった。
「皆聞こえておるか!こ奴の特性が判ったぞ、他の魔物よりもずっと濃くて詰まっておるだから硬く重い」
イナヅマや羽生なれば”魔素密度”とでも表現しただろうか?
「獣のしなやかさを保ちながら体は石や鋼の様にできておる、後に【闇王牙】と戦う者に伝え備えよ!」
伝われば次の闘いまでに数多の賢者が対応策を練ってくれよう。後進の道を開く、それも老頭竜の役目。しかし、今はこれが精一杯。
「ふうぅぅぅぅぅぅぅぅん!」
【闇王牙】を捕えた五六八〇はその爪を固定、上半身を回転させ始めた。
「だぁ~いかぁ~いてぇ~~ん!」五六八〇の涙声が叫ぶ。
「袰瓦殿ォ!」
「伯父様ァ!」
もはや五六八〇の回転は【闇王牙】を目で追えない程に加速していた。
腰部回転軸の焼ける匂いが操作室にも漂い始める。
回転の中心にいるとはいえ今の袰瓦にとっては致死に近いほどの負荷であった。
「御爺!おくのてのふういんをハズして!あとは”わらし”がやる!」
おおよ、最後の封印を外さねば、しかし、いつもなら普通に届くはずの封印解除の引き金が今日に限ってはやけに遠い。
ままよ!
【火事場のクソ力】重ねがけ!
世界から音と色が消えた。油断すると意識ごと持って行かれそうだ。
どどけ、あと半寸…。
ふわりと己の手の甲に温かさが纏わりつく
これは、は、母上?お久しゅうございます。
あと、四分の一寸。
ぐいと力強く引き上げられる
親父…何もかも皆懐かしい。
不肖、袰瓦・有手倉最期の御奉公、ご笑覧あれ!
届いた!あとは封印を引きちぎるのみ。
「ぶっちらばったれ!」
あああああ
間に合ってないのに時間が来てしまった
明日1.5話分書くということで今日はフライングです
後は野となれ山となれ~




