82話 燃える男の
「わらしーたすけにきたのー」
炎柱の炎の光ををその赤銅色に輝く装甲に写し込んだ巨大な…。
蟹?蛸?
gyann!
四本の脚を交互に動かし前進しながら三本爪の長い腕を振り数匹の【魔狼】を薙ぎ払う。
「伯父様ぁ!」
ボクの背中にもたれ掛かっていた美都莉愛が歓喜の声を上げた。
「おおう!おぬし等がおったのか!皆無事か!ワシの”わらし”は足が遅いでな、単身で独断先行しておったのよ!炎が立ち上ったので何事かと来てみれば【魔狼】の大群、ワシの稼ぎ場はまだ残っておるか?」
【泰山級戦術魔導重騎 管理魔導知能№ 五六八〇】様。二本の長い腕と四本の脚が乗り合い馬車程の身体に付く乗り込み型の魔導騎様。
有手倉騎士爵家所有の袰瓦様の乗騎だ。
喋りながらも迫って来る【魔狼】たちを長い腕で片端から捕まえその三本の爪で千切っては投げ千切っては投げ。
莉夢が面頬を外し五六八〇様の前で片膝を着いた。
「有手倉卿!我が養父正武が【闇王牙】に苦戦しております、ご助力お頼申します!」
莉夢の叫びに有手倉卿の声色が変わった。
「【闇王牙】とな!お主ら我等が積年の怨敵ついぞ見つけたか、よくぞ!後はワシと正武に任せ何処かに隠れておれ!」
「かくれておれー」
魔導騎管理知能五六八〇様が復唱する。まだ【魔狼】居るから隠れても居られないんだけどなー、でも蹴散らしてもらった分個別撃破で対応できるから確かに楽にはなった。
僕等の脇を四本の足が交互に動き器用にすり抜けていく、通るのに邪魔な木を掴んだ三本の爪の手首から飛び出した回転する刃、回転鎖刃剣にバッサリ断ち切られた樹木を丸ごと【魔狼】共に投げつける。
銀と黒の交錯する戦場に赤銅の巨爪が乱入し闇色の【王牙】は伸縮自在の赤銅の鋼鉄の拳を食らい派手に弾き飛ばされた、数本の木々をなぎ倒しながら。
そのまま【王牙】と八八二三〇の間に割って入る赤銅の巨蟹。
「正武!珍しく苦戦しておるようだな!」背を向けたまま正武・出翁礼騎士爵へ語り掛ける袰瓦・有手倉騎士爵。
「おお!有手倉卿!面目無し!穴があったら入りたい」
「なんの!いつもは足の速い八八二三〇殿の独壇場ではないか!偶にはワシの”わらし”にも活躍の場を譲ってたもれ」
「ハヤブサオー!わらしにもゆずってたもれー」
「かたじけない、有手倉卿」
「五六八〇よ!ヤツは”わらし”より硬く速いぞ!戦闘情報を転送する、心して当たるべし」
「わらしーわかったのー」
【王牙】の吹き飛んだ先に牽制の羽手裏剣を多量にばら撒きなから八八二三〇が後退する。
「はてさて、我が姪共と婿、僚友迄もが随分世話になった様だのう」
にこにこと笑いながらまだ姿を現さぬ敵へ向け一人ごちる白熊。いやさ木ノ楊出流重鎮、袰瓦。
「ワシも”わらし”を全開で回すのも久方ぶり故、多少乱雑な扱いともなろうや覚悟されたし…」
好々爺然とした面が引き締まり、闘う獣の相貌と化す。
「五六八〇!遠慮するな、全開でいくぞ!」
「わかったのー」
猛獣が叫ぶ。
「ぶっちらばったる!」
◇◇
「正武先生!」「お頭様っ!」
森の端まで後退してきた八八二三〇様にボク達は駆け寄った。
「うぬ、不覚を取ったわ」面頬を上げた正武先生の口惜しげな表情。飄々然とした何時もの先生からは想像もつかない。
見れば八八二三〇様の片脚は魔導装置が歪み一部亀裂が入っている。
魔道騎様が魔物に破損させられるなんて聞いたことが無い。【闇王牙】恐るべし、そんなのにさっき迄石ぶつけてたなんて信じたくない、信じられない。
先生の口へ水筒の水を介助しながら莉夢が問うた。
「手合わせの感触は如何に?」
僅かに息を着いた先生は、
「侮りがたし、武の心得のある魔物を相手したは初めてぞ」と答えた。
!
場の空気が凍りつく。
【人狼】に続いて二体目のナカノヒト入り魔物だ。【黒大躯】を入れたら三体目かもしれない。
一部の低級魔物を除いて、腕力、体力、反射速度、移動速度。諸々の肉体的な優位は明らかに魔物側にある。
千年前人類は、魔道騎様を騎装し、魔法を携え、やっと魔物達と対向しえた、そして千年もの間魔物達と戦い続けて来た。
魔物側の首魁、魔王を倒し魔物の侵攻は回避されたかと思えたけれど、魔王討伐後は大規模な組織的連携こそ見せなくなったものの魔物達の跳梁跋扈は無くなりはしなかった。
現在でも人間は自らの生活圏を守るのに精一杯なのだ。
第一の対抗手段であった魔導騎様は今以上増えることはない。千年前、戦に向けて造られた魔道騎様を創造する技が人間立から失われて久しい。その理由は何故か語られることが無い。
魔動機様は自己補修能力を持ち、時間さえあれば魔素を取り込んて再生される。
それでも大事な部分を破損した場合、機能低下のままとなる場面もあるし、形も残らず破壊された場合は永久に失われる事も無い訳ではない。
だから千年前から少しずつその総数を減じている。
木ノ楊出流領にだって魔導騎様は一七ニ〇含めて三騎しかいらっしゃらない。
一騎当千の魔導騎様とてその密度で木ノ楊出流領全範囲を守れる訳も無く。
それに次ぐ戦力、魔導士様、今で言う貴族の方々も数こそ魔導騎様より多いものの魔法の威力は千年の間に衰え、単騎で魔物と対抗するなど夢のまた夢な現状。
そんな中、魔物と人類の戦力を拮抗させているものはなにか。
武と策と集だ。
人間個々が武を磨き技を練り策を弄し数で囲んで圧殺する。
そこで始めて肉体的な劣勢を覆し魔物の増殖を抑えているのが現状なのだ。
だのに魔物側に武を修める物が出て来た、これが魔物全般に広まるものであるのだとすれば均衡は簡単にひっくり返る。
本来自然発生的存在である魔物の繁殖を積極的に促す動きも、集の力を無効にさせられることに繋がる。
これらの所業がナカノヒト魔物によるものなれば。
その出現は人類の劣勢、千年前の大戦の再来を予感させるものに違いない。
◇◆
「どりるぱーんち!」
手首から回転する三本爪が樹木と土砂を巻き込み土砂煙をあげながら大地を穿つ。
跳ねて躱した【闇王牙】の未来位置に斬り付けられた回転鎖刃剣の根元を蹴り、跳んだ【王牙】が咆哮をあげる。
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(エグいぞテメェ!性格悪いな、ってかなんで此方のヤツは技の名を叫ぶ?!)
その口元は笑いに歪む。正直、ここまでの手練とヤリ会えているのは正直愉しい。
(強いし戦い慣れちゃ居るが雑魚ばかり相手にしているな?超オーガの耐久と俺の反射速度があればなんとかならなくもないな)
シンクロ率は未だ80%といった所か、
千年も前に発見された隣接世界と共有するエーテル空間を通した回線を使い此方の世界から送り込んだモンスター体に神経系を接続しもう一つの体として操作する。Vじゃけして味わえないスリルと快楽。
シンクロ率が高ければ殆どラグなしで高速操作できるが常人のシンクロ率は行って70%がいいところだ、俺も三木も調子が良けれは90超えることもある。
これは個人の持って生まれた資質と言うやつだ、異世界と繋がるのにも相性があるわけだ。
通常。
アバターが受けた感覚情報を此方側の世界で感じ取るのは倍率補正でなんとでもなるが、此方側世界からの行動がストレスなく異世界側に通ずるのは異世界潜行ユニットの回線速度や空間抵抗の強度と異世界ダイバーの資質が絡む、此等を総合的に鑑みた数値がシンクロ率だ。
補佐AIによって偶然見つけた次元の壁の薄いこの場所ということもあるだろうがかなりイカレタ事になっている。
生死ギリギリの所迄手練れとヤリ合える、アゲアゲだ!しかも実際に死ぬのは常に異世界側の人間だけ。
こんなに面白いことが他にある訳がない。
異世界干渉禁止法?どんだけ違反しようが所詮異世界での出来事だ、異世界人を何人殺ろうが犯ろうが現実世界では死刑になる事なんてない、つまりはルールを作ってる側が常に有利なのさ、まさしくヤッた者勝ち、それがこの世の仕組みなんだよ。
高千穂遙先生ごめんなさい。
調子に乗ってゲリラ更新なんてしたもんだから書き溜め残がヤバミです。
今回2話更新かもしれません。
主人公君がまた予定にない行動(書き溜めの中で)始めちゃったのでプロット引き直しデス!
頑張って書き溜めますので応援お願いします!




