80話 闇
はん、三木よ、まだまだだな。あんなガキ共にやられっちまうとは、格闘の腕は俺とほぼ互角だっつーのに相手を見た目で舐めすぎるのが玉にキズだ。
まぁゴブリンボディの時に杖女に押されててイラ付いてたんだろうが、限界までシンクロ率あげすぎるとベイルアウトんときにゃ神経系の分離に時間がかかるからな、今異世界潜行ユニットの中で動けずに臍を噛んでいる頃だろう。
どの道、神経系が焼死の記憶から立ち直るのには暫くかかる。当分三木は使いものにならねぇ。
普通はショック死か廃人だが、殺しても死ぬようなタマじゃねぇからな、奴なら復帰は早いだろうよ。
さて、隣接異世界の女共をモンスターアバターを通して客に抱かせるこの裏商売もこんなガキ共に邪魔されるたぁ思ってもいなかったなぁ。
足のつかない旅の女や傭兵っぽい女を中心に攫ったつもりだったんだが。
モンスター見られて無理やり町女攫ってきたからか?あの小僧に女集めさせたのがケチの付き始めか?程よく魂の腐ったこっちの都合よく動きそうな小僧だと思ってたが。やっぱ殺しておいた方が正解だったか。
客を取らせながら同時に女の胎を使ってモンスターアバターを増産すれば、通常は一月程度はかかる魔核からのアバター生成も五日から十日ですむ。
あんまりガタイの良いモンスターの魔核埋め込むと裂けちまうけどなぁ。
アバターレンタルで回転良いヤツぁ体の小さい雑魚系だからな、神経同調で得られる快楽は同じだし雑魚でもヤリモクにはちょうどよかった。
マジで一石二鳥三鳥のアイデアだったんだが。
まぁいい、補佐AIが偶然見つけたモンスターの巣にあった魔核も千個以上は回収できたし。
もっと深い階層にゃあドラゴンやら巨人もでるらしいからまぁ潮時か?
こんな田舎じゃねぇところでこっちの女を只で使ったウリ部屋再建して現実世界でがっつり丸儲けするとしよう。
さて、そうはいってもガキ共よ、なかなか面白れぇ運命なんじゃねぇか?俺たちも。
三木in人狼アバターを倒したってのはなかなかだ、早いとこヤリたくて俺もアバターもギンギンだぜ。
大丈夫、簡単には殺さない、そうだな、雄ガキってのも需要があるらしいし、お前は安価設定で回転数で稼いで貰おうか、お客様はカミサマだからな。
今回の損失を埋めるぐらいには稼いでもらいたい、だから三人ともできるだけ殺さないようにしてやる、すぐに殺してくれって喚くかもしれんがな。
では、斎藤in超オーガアバター。いくぜ?
◆◇
登り立つ黒い煙と炎の柱を避けながら
ゆっくりと旋回する巨大な鳥とその脚に捕まりボクらを睥睨する闇色の肌をした【王牙】は炎嵐の明かりに照らされながらゆっくりと高度を下げ。
十間(約20メートル)程の高さになると鳥の足から手を離し飛び降りた、
ずん
と地響きの音と砂塵を巻き上げながら。
森の木々の間に降り立った闇色の【王牙】
GAAAAAAAAAA!
両腕を振り上げ雄叫びを上げる
瞬間、周囲で待機していた忍者達は周囲の木々の間を縫い走り抜ける。
gua?
一瞬の間に細い硬鋼糸を撚り合わせ作られた鋼索が巻き付けられる、周囲の太い木々の幹にその端は縛り付けられていた。
忍者部隊において熊狩に使われる鋼索は【大躯】、【王牙】を狩るに当たっても必需品だ、人狼戦では準備が遅れたが今回は目標発見から着地まで充分に準備時間があったため効果的な場所への設置が可能だった。
この鋼索を、数十本巻き付け自由を奪い周囲を囲んで圧殺するのが大物魔物狩りの基本戦術なのだ。
美都莉愛お嬢様も異様な気迫で通常の矢を【闇王牙】に向って連射し始める。
【闇王牙】は全領総力を持って当たるべき怨敵との認識は聞いてはいたがここまでとなると流石のボクも莉夢も引き気味だ。
縺。繧?▲?√?縺」?√♀蜑咲ュ会シ√メ繝ァ繝?シ√∪縺ヲ繧?シ
(ちょっ!ばっ!お前等!チョッ!まてや!)
問答無用で飛び交う投槍、投げ苦無、棒手裏剣に石礫。
「光ょッ!導き給えっ」
いきなり炸裂する美都莉愛の必殺技は動きを止められた【王牙】の胸元へ突き立った。
魔力枯渇が近く脂汗を垂らし、よろける美都莉愛の傍らに寄り添いボクはその腰へ手を回し身体を支える。
数舜の戸惑いの後、そっと預けられる体重。愛おしい。
肩全体で深く呼吸を繰り返す美都莉愛と忍者軍団。やったか?
結果を案ずるよりヤルが易し!制御できないのが不安だけれどもやっちゃえ!ボクの最終究極奥義!
【闇王牙】に向け左掌をかざす。
New!【炎嵐】×三⇒【竜巻炎】!目標!【闇王牙】
縺舌≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゑシ?シ
(ぐああああああああああ!!)
【闇王牙】は炎に包まれた。
これ、いきなりヤッチャいました?
傍らを見れば今だ炎の柱の中で倒れた【人狼】は燃え続けている。再生能力と炎の焼却能力が拮抗してしまい魔力ある限り永遠に燃え続ける。【闇王牙】といえども永遠の業火の中で焼かれ続ければいずれは。再生能力だって【人狼】よりは落ちるはず。
もう矢も投槍も尽きたのか忍者軍団とお嬢様は周囲に落ちている石礫を拾い投げつけている、多分、命燃え尽きるまで。
縺オ縺悶¢繧九↑縺ゅ≠縺√=縺√=??シ
(ふざけるなああぁぁぁぁ!!)
【闇王牙】の雄叫びと共に張り巡らされた鋼索がビキビキと音を立て固定に使われた樹の幹がぎしぎしと揺れる。
なんてこった…。元々筋肉ダルマな【王牙】の肉体が二倍にも三倍にも膨れ上がって見える。
心なしか【竜巻炎】の炎も人狼の時より弱い気がする?…。あっ!
多分【竜巻炎】がボクの制御を離れても成立しているのは火柱が回転しながら周囲の空気を取り込み、同時に魔素を補給することによって火力、回転力を保持しているからだ。
二つの【竜巻炎】を近距離で発動した場合、お互いに空気と魔素を奪い合い…最初に周囲の枯葉草花を巻き込んで火力を上げた人狼の【竜巻炎】の方が保持した総魔素量は多いはずなので…。
次第に火力が弱まっていくように見える【闇王牙】を包む【竜巻炎】ボクの最終究極奥義いきなり弱点発覚!
縺後≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゑシ
(がああああああああああ!)
ブチブチと音を立て伸びて行く鋼索。ヤバい、高熱で鋼を脆くしてしまった?
止んでしまった投擲攻撃の代わりに飛び出した莉夢が今だ炎に包まれた【闇王牙】を滅多突きにする。両の目は勿論正中線に沿った急所を的確に突いて行く、ものの。
一向に効いている様子が無い、【竜巻炎】も消えかかっている、何だ?この反則的魔物は!【人狼】の再生能力も厄介だったけどそもそも【王牙】には攻撃が効かないのか!?
「…違う」
ボクの疑問を察したのか傍らで美都莉愛が呟く。
「【王牙】戦の話は何度も聞いているけれど、こんなに硬いなんてあり得ない…多分この【闇王牙】が特別なのよ」
いつも強気の美都莉愛の言葉の端が怖気を含んでいる。
ビキビキと音を立てて伸び千切れて行く鋼索。
「全員散開!【闇王牙】は倒せない!逃げ延びて!」美都莉愛の声が周囲に響く。
美都莉愛の手を引き暗闇の森の中を走り出す、だめだ!あんなの倒せるもんか!【人狼】だってもう少し手応えがあった。
森の中に駆け込んで始めて…。
それ以上は簡単に進めない事を理解した。
今だ【人狼】の燃ゆる炎の明かりが照らすその先の、暗闇の中赤く光る目、目、目。無数の目がグルリと周りを取り囲んでいた。
【魔狼】。
【人狼】が引き連れて来ていたのか【王牙】が呼んだのかは解らない。
数匹は何とかなる、でも魔力枯渇寸前の美都莉愛を引き連れてこの大群を突っ切るのは…。
背後がぼおっと明るくなる、獣毛の焼け焦げた臭いが辺りに漂う。
縺翫>縺翫>縲∝?縺ヲ縺?§繧??繧ァ縺銀?ヲ
(おいおい、冷てぇじゃねェか…。
譽剃スソ縺??蟋峨■繧?s鄂ョ縺?※縺大??縺九=?
棒使いの姉ちゃん置いてけ堀かぁ?)
【王牙】の腕にぐったりと力なく抱えられた莉夢の姿が。
まさかの瞬殺!莉夢も全力撤退したはずなのに追い付かれた?!
前門の【王牙】、後門の【魔狼】。
なんとかして、なんとかして、美都莉愛だけでも逃さないと!考えろ考えろ!今のボクに何がのこされている、残っているとすればそれは…。
伸びてくる【王牙】の掌。
美都莉愛を背後に隠す。
魔力が続く限り【障壁】で受ける。
その後は…。
だめだ、その後の見通しが浮かばない
助けて…。
「助けて!イナヅマ!」
「はいよ」
え?
目の前にいくつもの窓が開く。
風が、嵐が、青い閃光。
(な!)
疾風の様に黄金の甲虫が目の前を斜めによぎる。
伸ばした【王牙】の手は不可視の障壁に触れ放電した青い電光に弾かれた。
『【電障壁】』
電撃にたたらを踏んだ【王牙】の傍らを白銀の閃光が奔る。
だん!と地響きをあげ周囲の土砂砂煙を巻き上げ中空に飛び上がったそれは。
月の光を背に赤々と燃える炎柱の火影をその白銀の装甲に映し。莉夢をその腕に抱え上げる。
「汚い手で某の娘と弟子共に触らないでいただこうか」
【制空級機動魔導飛装 八八二三〇】様及び、正武・出翁礼騎士爵。
降臨。
今回の公開はここで一区切りです。
更新情報は「活動報告」とツイッターで流します。
https://twitter.com/DarJack51
暫く週末のみ更新になりそうですが
また書き溜め頑張りますので今後もよろしくお願いします。




