77話 だよ
【捜索】で感知した魔力の感じから言ってこれは魔物だ。
多分一体だけなのだと思う。
こちらが止まれば止まり、動き出せば動く。着かず離れず常に同じ距離を保っている。
何時からだ?
最初からということは無いはずだけど。
面頬の内緒の会話機能を使って美都莉愛お嬢様と莉夢と相談する。
「このまま、集合場所まで引っ張って行くことはできないわ、どこかで…」
◇
日が完全に落ち切る前に。
湖のほとりで歩みを止めて、ボク達準備するのさ、朽木倒して。蒸暑く長い夜を待つ。
流石に夜中まで移動は体力が持たない。簡易な野営地を作り休息に入る。火は焚かない、獣除けにはなるけど逆に魔物に対してはここに人がいるぞと目印になってしまう。
忍者の皆様には申し訳ないけれど休息は交代で取って頂きボク達三人は一足先に休息に入らせて貰う、その代わり…。
◇
月満ちる夜。森の木々の影からそっと辺りを伺う。その場で片膝を付いて倒木の隙間からじっと岸辺の野営地を観察する人影。
『本当に魔物なんでしょうね?』お嬢様の何度目かの確認が魔導兜から流れる。
『…見た目はアレですが…間違いなく魔物です』明かりも持たず単身で魔物の森中に入りうるような人間がいるか?だ、少なくとも夜目は効いている。
野営地から遠巻きに物陰木陰伝いに隠れ隠れ時間をかけてぐるりと迂回し追跡者の後ろに陣取る。
こちらの様子を伺い等間隔を保ちながら追跡して来ていた魔物の姿を捕えるとその姿は人間の様に見えた。
まだ後ろ姿だけなので前を向いたら目が一つだったとか口が耳まで裂けていたとか目も口も鼻も無かったりするのかもしれないけれど。
【捜索】をかけた時に帰って来る反応は間違いなく魔物だ。間違えてたらボクが全責任を負う、そう心に決めている。
意を決した美都莉愛お嬢様は弓を引き絞り、一瞬のためらいの後その背中に向け必殺の一矢を放った。
暗闇の中、未知の飛来を”ゆらり”と躱したかのように見えた。
!
ガッ!と音を立てその先の木肌へ食い込むお嬢様の矢。当然その背中の持ち主が気づいておらぬはずもなく。
ゆっくりと立ち上がった背中の持ち主に此度は必殺の間で二の矢を放ったお嬢様。その男の胸元に吸い込まれるはずだった矢は直前に払いのけられ、折れ曲がった矢軸が傍らに転がった。
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(背中から撃つとは非道いじゃないかガキ共諸君!病院では見逃してやったろう?)
薄黄色い犬歯をむき出しにして笑う筋骨たくましい男、でも上半身裸で魔物語話してるじゃん!口きかなきゃ分からないけど。
人の姿をした魔物、魔人?図鑑にも載っていない新種か?
髢馴&縺?↑縺上≠縺ョ縺ィ縺阪?髱「蟄舌□繧医↑?―――――。
(お前らぁ間違いなくあのときの面子だよな?短剣持ちの魔法小僧、長身の女棒使い、女魔法弓使い。そらぁ認識阻害の魔法か装備か?…銃も車も作れねぇ原始人共のくせに魔法だの光学迷彩だのは持ってるってなぁアニィじゃないがマジでインチキチートくせぇ、歴史バグってんのか?)
だーかーらー。魔物語で話しかけられても解んないってばさ!ベッチ!
繧医≧縲∵」剃スソ縺??√≠縺ョ譎ゅ?閭御クュ縺ォ―――――。
(よう、棒使い、あの時は背中にお荷物ぶら下がってたから防戦一方だったがな、お前とは一度闘ってみたいと思ってたんだ。…小僧だけ残して置けば他は喰っちまっても兄ィには怒られねぇよな。お前らの後つけて寝座当たろうとも思ったが何故だか見つかっちまうし、持ってかれた女共の代わりに二人にたんと稼いで貰うか?)
魔物の言葉を呟きながら暗闇の森の中をすいすいと進んでくる筋肉男。
言葉は解らないけど莉夢と美都莉愛の方を見やる視線がどうにも気に入らない。
無造作に刺突の間合いに踏み込んだ筋肉男に遠慮なく長杖の突きを叩き込む莉夢。
男は肘を支点に両手手刀で回し受けた。うそぉ!そんなん摩擦で皮膚持ってかれるって!
まさかの回し受けからの棒絡みに元手を捻って外した莉夢の死角から。男の放った上段回し蹴りが鞭の様に伸び側頭部をしたたかに掠めた。躱しはしたけれど頭部防具の厚みの分だけ躱し損ねた。
この動きはアレだ!【黒大躯】と同じ、ナカノヒトが操作(?)しているっていうヤツだ!
クッ!イナヅマは居ない、一体どう戦えばいいのか、そもそもナカノヒトって何だ。
体勢を崩した莉夢に追い打ちをかけようとする筋肉男の目を狙って印字撃ち、すなわち投石だ。
莫迦にしてはいけない、石を投げるという攻撃は太古から続く人間の遠隔攻撃手段の一つだと図書室の本には書いてあった、昔から廃れていないということは効果的だというコト。しかも補給はほぼ無限大。先程湖の畔でも十分補給してきた。
射程の短い黒刀しか物理攻撃の手段が無かったボクの攻撃の幅を広げるため莉夢にコツを教わっていたのだ。元々川で水切りなどやって遊んでいたので覚えは早かった。はずだ。
水切り?ええ、ただのボッチ遊びですよ、何か問題でも?
流石に筋肉男も顔面に向かって投げられた小石には反射的に反応し躱してしまった様で、無事莉夢は戦闘範囲から離脱。
ボク達は 体勢を立て直した。
かに、みえた。
ボクと莉夢が気が付いたときには美都莉愛お嬢様の眼の前に筋肉男は居た。
「しまった!」「ちぃいい!」
完全にボクらの失態だ、真正面からやり合っている二人を無視して援護に回っている美都莉愛お嬢様へ向かうとは思っていなかった。
でもお嬢様だっていっぱしの貴族だ、この国の貴族は千年前の魔王大戦で戦った戦士の末裔。貴族というのは戦える者の別称でもある。
筋肉男の間合いに入ったことを悟った瞬間。今の自分ができる最大の攻撃、引き絞っていた矢を解き放つことを選択した。
攻撃は命で受けることを覚悟して。
近距離かつ真正面、絶対外さない必殺の間合い。筋肉男も上半身を捻り正中線を外すのが精いっぱいだったようだ。
肩に矢を受けた筋肉男の崩れた体勢。
それが美都莉愛の命を救ったのかもしれない。
筋肉男の繰り出す掌底に左手に持った弓を叩きつける。砕け折れた弓を代償にその反動を利用して後方に跳ぶ。
水月近くに突き刺さった掌底は結果、破壊力を大幅に減じ“突き押す”こととなった、細外套、魔導衣、鎧下の恩恵も大きかったと思う。
それでも、美都莉愛の息は詰まり耳元に流れる嘔吐の音はボクの心を引き裂いた。
イナズマが居てくれたなら【鎮静】を使ってくれたのかもしれない。
脚部【衝撃】最大→ New!【爆裂】
周りの石木を吹き飛ばしたボクの足から“ゴきっ”て振動が響いたけどそんなの関係ねぇ。
「なにやっとんじゃぁわれえぇぇぇぇぇぇ!」
ロケットのように飛び出したボクの体は両手で握りしめた黒刀の弾頭を筋肉男の脇腹に突き立てていた。
手首が変な形にひしゃげ、肩口から筋肉男の背中に体当たる形になっていた。
「!」まさかの衝撃に仰け反り突き飛ばされたる筋肉男の振り払らった腕でボクの体は黒刀からもぎ取られ弾き飛ばされた。
菴輔□莉翫?縺ッ?√%繧後′!繧「繝九<縺ョ險?縺」縺ヲ縺溘う繝ウ繝√く縺?!
(何だ今のは!これがアニぃの言ってたインチキか?!)
ざまぁ!刃の根本まで突き込んでヤッた。最低でも内臓まで届いているはずダヨな!。
起き上がろうとして右足が体重を支えきれずよろけた、見れば右足首から先も明日の方を向いちゃっている、不思議に痛みは感じ無い。
【治癒】
両手首がゴギゴギと音を立て、元の形に戻っていく、なんで今メチャクチャ痛い。
尻をつきゴリゴリと足首をひねって向きを戻す。
こちらも【治癒】でゴキゴキとねじ切れた足の腱が戻りつながっていくのが判る。体の治る速度を早回しているみたいだ。やっぱりムチャクチャ痛い。
脇目でお嬢様の防守に入った莉夢を確認しながらその場でバンバン飛び跳ねて首を振る、少し足首への違和感が残るけど動ければ十分。
刃をひねって内臓をかき回してやれなかったのが悔やまれるけど贅沢は言っていられない、後は遠巻きに牽制して時間を稼げば内臓から失血死―――――。
縺セ縺?▲縺溘↑縺√?∝撃縺?r霑ス縺??縺ォ驛ス蜷医′繧医°縺」縺溘°繧峨%縺ョ繧「繝舌ち繝シ縺ォ縺励◆繧薙□縺娯?ヲ
(まいったなぁ、匂いを追うのに都合がよかったからこの魔物体にしたんだけどなぁ…)
筋肉男は何事もなかったかのようにスタスタと月の光あふれる場所へと歩み進むと、
まぁんまるの月を見上げた。
驕九′縺?>窶ヲ莉雁、懊?譛医′縺ィ縺」縺ヲ繧り直縺
(運がいい…今夜は月がとっても蒼い)
後ろ脇腹に突き刺さった黒刀を引き抜く。刃の勢いと共に辺りに飛び散る血潮。でも筋肉を締められ直ぐに出血は止まった。
Woooooooooooooo!!
天を仰ぎ遠く吠える声と共に星々を見上げる筋肉男。
顔が…メリメリと音を立てて変形していく。
口元が伸び耳が上方にせり上がっていく、顔も胸も腕も、灰色の剛毛に埋め尽くされていく。
これは…この姿なら知っているぞ。この姿は…。
縺薙s縺ー繧薙?縲∫蕎逕キ縺?繧
(こんばんは、狼男だよ)
今回の公開はここで一区切りです。
更新情報は「活動報告」とツイッターで流します。
https://twitter.com/DarJack51
暫く週末のみ更新になりそうですが
また書き溜め頑張りますので今後もよろしくお願いします。




