Pv5000記念閑話 いなづまさまとぼく
Pv5000 あざまーす
けんらんごうかな飾りの付いたおっきな花の台の上で、あしを組んで座りこみ、お腹の前で両手を重ねてポーッとどこかを見てる。
金色にかがやく人形。
朝夕の拝礼に焚かれる香の残り香がぼくはあまり好きじゃあなかった。
いつの間にか父母と共に朝に夕にと拝礼を行うことが一日のおつとめになっていたのだから否が応でも日に二度はこの訳の分からない金色の人形と対面せねばならない、その時父上の焚く香の臭いが一日中鼻の奥にこびりついている気がしてしようがないんだ。
父上が忙しく拝礼できないときは母上が焚き、両親共に忙しいときには家令の袰瓦が焚き一緒に拝礼してくれる。
二礼二拍手一礼。
父上はこの辺りで一番偉いダンシャク様なのにこのキンキラ人形には頭を下げる。ただ座っているだけの作り物なのに。
キンキラ人形は昔々に民草を苦しめる魔物の王を倒したこともある英雄様の鎧”まどうき”というものらしい。
【わくせいきゅうせんりゃくまどうげんしょういなづま】号様、というお名前なんだそうだ。
でも昔々のご先祖様が民草を助ける為に持ち出して少し壊してしまって今は使えない。壊れているなら直せばいいのに、直せるだけの腕を持ったショクニンが木ノ楊出流には居ないんだって、それで魔動騎様のジコホシュウノウリョクに期待して自然に直るのをずっとまっているんだって。
ぼくが父上のダンシャクけをついだら英雄様のご子孫の住んで居らっしゃる”おうと”からショクニンを呼んで直すんだけどな。
だって、使えない今ってキレイなだけのヤクタタズじゃあないか、拝礼しても意味ないよね。
でも、ホントウはいなづま様嫌いじゃあない、なんでかって?
台の花びらに足をかけて登るとこの人形の裏側に隙間があって…。
「若!可汎様!どちらへ行かれた、若!」
袰瓦から隠れるのに丁度いいんだよね。
ボクばっかり勉強勉強って、まだ初学校へも入ってないんだから、もっと外でみんなと遊びたいよ、こないだトモダチになった名来流村の子供大将、比樽と今度川で魚を取る約束してんだ、場瑠部や得楠、そうだ典打にも声をかけないとな、アイツの焼いた魚美味いしな。
さて、袰瓦もどこかへ行ったことだし、恒例の”いなづま登り”始めますか。
背中の出っ張りと壁の出っ張りに交互に足をかけて少しづつ高みへ登ってゆく。
上の方へ行けば行くほど壁と人形の隙間が広くなっていくから要注意。
肩の辺りまで登ったら、壁を蹴って一気に頭へ飛び付く。あっぶねぇー手のかかりが浅かったけどガシガシ人形の背中を蹴りまくってギリ登り切った。
庭の木より登りにくいからバリバリ征服感ある。
上から見ると結構な高さあるんだよね、頭のすぐ上が天井だ。流石にここは年に一回の大掃除の時以外はホコリっぽい。
人形の首に跨って頭の飾りを掴んでガチャガチャと揺する。父上の肩車より高い所から部屋中が見渡せて気分がいい。千年前の英雄様もこんな風に見えていたのかな。
ガチャん!
あ…。
何かの外れる音と共に、不意に抵抗が無くなった。
いなづま様の頭を抱えながら一緒にコロリンと前へ転がって行く。
ヤバい、この下って祭壇にローソク立てに香炉に…。
落…死…。
体が硬直してしまっている、このままじゃ頭から…。
不意に優しき何かに包まれる、ふうわりと落下の速度がゆるんだ。
ぼくといなづま様の首はいなづま様の両腕に抱かれていた。
「悪戯小僧め、怪我は無いか?」
ぼくが抱きかかえていた、いなづま様の首が喋った。
いなづま様の腕の中で泣き弱っているぼくを袰瓦が見つけたのは暫く後だった。
それ以来、いなづま様の両腕は何かを抱える様にずっと両手を広げたままになった。
ぼくは少しだけお香の臭いが嫌いじゃなくなった。
頑張りますので今後もよろしくお願いします。




