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【エタってないんだからね!筆力向上修行中】屑星だって生きている~誰か教えて!ユニークスキル【editor】の使い方~  作者: Darjack


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73話 潜入 ver.R15 ※胸糞表現あり、苦手な人は回避推奨

 ボクは単身【大鬼(ほぶごぶりん)】達の死角から回り込んで、そろそろと丘の傾斜沿いに進みなんとかここまで近づけた。


 囚われているはずの人々の安全を考えれば失敗は許されないけれど、万が一の場合可及的速やかに【大鬼(ほぶごぶりん)】達を始末して頂けるよう森の中の目立たぬ位置から狙撃体制を取ってもらっている。


 周囲の状況に応じて自然な迷彩色に変化してくれる魔導細外套(るぅんこぉと)頭部防具(へっどぎあ)の性能のお陰だと言うことは忘れない。仄暗い森の底でも目標をしっかりと捉えられる面頬(ふぇいすがぁど)のお陰でもある。


 ボク達唯一の遠隔攻撃である美都莉愛(びっとりあ)の弓も二体の【大鬼(ほぶごぶりん)】を同時に沈黙させるには心許無(こころもとな)い。片方残って叫ばれ仲間を呼び寄せられたら救出は覚束なくなる。


 ここまで気づかれずに近づけたのだから近い方をボクが仕留め、遠い方を弓で即死させるという選択も面頬(ふぇいすがぁど)時機(しお)を計るということが可能なのでまあ出来なくはないけど、もう少し確実な手を取らせて貰おう。



 【睡眠(すりぃぷ)】×二(体)


 

 ありがとう【催眠蝦蟇(かえる)】ちゃん、君たちのおかげです。


 崩れる様に昏倒した二体の【大鬼(ほぶごぶりん)】の喉笛を黒刀(まけん)で掻き斬る。ビクビクと身体を痙攣させ息絶える【大鬼(ほぶごぶりん)】達、何度やっても慣れない嫌な感触だ。

 特に二体目の時は斬ると同時に喉から”ピユゥ”と音が鳴りビビった。喉()とはよく言ったものだ、正武先生に話したら「経験、経験」と笑われそうだ。


 更に二体とも胸から心臓を一突きし、確実に仕留めたことを確認してから森に隠れている二人を呼び出した。死骸は直ぐに発見できない様気休め程度に丘の脇に避けておく。魔石になるのを待っている暇はない。


 ボクが【捜索(さぁち)】を使いながら先行。少し後ろから援護できる位置に弓を構えた美都莉愛(びっとりあ)、その護衛兼殿に莉夢(りむ)という布陣。

 灯り無し、声漏れ無し、頭部防具(へっどぎあ)のお陰で隠密度は爆上がりだ。

 もし、無事に帰れたら県都や王都の公開魔導迷宮(だんじょん)へ潜って稼げばメチャクチャ稼げるだろう。二級(しろ)一級(ぎん)冒険者だって夢じゃないかもしれない。装備召し上げられなければの話だけど。


 途中いくつか分岐はあったけれど今回は目的地へ一直線。幸い探知できる範囲に魔物は見当たらないので現段階で乱暴をされている人間はいないと思うけど。衰弱して今にもこと切れそうな人がいないとも限らない。奥様の【治癒(ひぃる)】を複写(こぴぃ)できていたのは僥倖だ。


 暫く進むと何か囀る様な音が聞こえ、更に進むと次第にそれが誰かのすすり泣く声だと言うことが判ってきた。


 いくつかの角を曲がり始めて仄かな明かりが漏れている隙間が見えた。


◇◇


 「ごめんなさい、皆私のせいだわ、ごめんなさい」

 ここへ連れて来られてもう何千何万回この謝罪の言葉を繰り返したことだろう

 洞窟の床に薄布一枚を引いた床から半身を持ち上げ、自分の胸元に縋りつきすすり泣く後輩を抱きしめながら不羅毘(ふらっぺ)は無力な言葉を繰り返していた。


 噂話に聞かされた魔物に捕えられた女の末路。多数の【小鬼(ごぶりん)】【大鬼(ほぶごぶりん)】や【大躯(おぉく)】達に身も心もボロボロになるまで相手をさせられるといったことこそなかったものの。

 自分たちより先に捕まっていた孔雀草(まりぃごおるど)や町の住民、旅芸人商人の女まで含め今までこの部屋…洞窟の区切られた一角に集められた女は個別に別の区画の小部屋へ連れ出され辱めを受けていた。


 つい数刻前にこの部屋へ連れて来られた農民着の褐色肌の女…あの貴族の配下、山の民の女戦士を思い起こさせる…を除いては。

 とはいっても彼女の貞操も風前の灯火だろう。縛られ猿轡を噛まされたまま床に転がされていた女は轡を外し水を飲ませてやったときに礼を言われて以来同じ場所に転がったままだ。勝手に縄を解いて彼女が脱走を試みでもしたらこちらにどの様なとばっちりが及ぶか想像もつかない。

 そのことは轡を外す前に伝え彼女も了解していた、魔物に捕まった女がどんな目に合うか判っている様子ではあった。

 子持ちの様にも見うけられるが魔物達は決して容赦しないだろう。そしてあの忌まわしい儀式の犠牲者がまた一人増えることとなるのだろう。


 不羅毘(ふらっぺ)自身、既に数度に渡り忌まわしい呪いをかけられ心も涙も枯れ果てた。


 もともと()()()から自分が生きる価値などなかったのだからこの地でこの身果てても少しも惜しいものでは無かった。それでもここで自ら命を絶つわけにはいかない、自分を信じてついてきたが故にこのような目に合わせてしまった妹分たちを地獄に残したまま一人逝くことはできない。


 自分がこの部屋の入口近くに陣取ることによって、女を物色する【大鬼(ほぶごぶりん)】共を自ら誘い、妹分たちの労苦を少しでも減らすことができるのだと信じて。


 それが叶うときもあれば叶わぬ時もあったが。

 不羅毘(ふらっぺ)達の直後に囚われて来た奈原(なはら)街の女達が不羅毘(ふらっぺ)と共に労苦を引き受けてくれた。


 孔雀草(まりぃごおるど)含め武装していた女達は皆装備を剥ぎ取られたまま下着同然の姿で部屋に転がされていたものだが。対照的に奈原(なはら)街の女達は替えの衣服も含めて手荷物は全て持ってこられた様だ、むしろ危険は無いと判断されたのだろう。


 そんな奈原(なはら)街の女達は不羅毘(ふらっぺ)達に貴重な衣服を分け与えてくれた。


「困ってるときはお互い様だから」


 力なく、それでもほほ笑んでみせた奈原(なはら)街の女達の心根に不羅毘(ふらっぺ)は泣いた。

 自分が堕とされる前には”身持ちの悪い女達”とどこか蔑みの気持ちを持って接していた己の不明を恥じた。



 ここでの食事は日に数度、水と木の実や果実、薄い穀物だけの粥が配られるだけだ。


 しかし行為の前後には別室で十分な水浴びが許される。

 その時、身体と衣服を洗いながら隠し持った水筒に水を汲む事が出来た。


 部屋に帰るときには冷めている焼いただけの動物肉や干し肉、干し果物、保存食、パンや時には菓子などが手渡された、恥辱の代償としては安すぎるモノであったがそれらは室内にいる女達全員で分け合った。


 多少でも魔力のあるものは魔導角灯(らんたん)に魔力を充填し幾ばくかの灯りを灯すことができた。

 それらは特に取り上げられることもなく、放っておかれた。

 おかしな言い方をすれば呪いの儀式と強制的にさせられる行為を除けば存外に女達への扱いは丁寧であったといえよう。

 いつしか女達は運命共同体となりお互い助け合い慰め合いながら生き延び、少なくとも不羅毘(ふらっぺ)達が監禁されてからこちら命を失った者はいなかった。


(でも、そろそろ限界だよ)


 冒険者の妹分の内経験の浅かった娘の様子が芳しくない、碌に物も食べず日に日に瘦せ細っていくのが判る。


 このところずっと不羅毘(ふらっぺ)は部屋の出口を見つめている。

 囚われて最初のころ、いつかここから出るためにと斥候に洞窟の出口までの道筋を探らせたことがある。

 難しくはない順路ではあったがそこそこの距離があり道中は明かりも無く、冒険者ならともかく一般庶民の女達が整然とたどり着ける道筋とは思えなかった。

 その上出口に陣取る二体の魔物。最低でも武装した【大鬼(ほぶごぶりん)】下手をすると【王牙(おぅが)】が居ることもあった様だ。

 女数十人が素手で飛び掛かってもどうにもならない。もし、叶うなら、自分が囮となって引き付けている隙に皆を逃がすことは可能か否か妄想する。


 よしんばそれが可能だったにせよ裸足の女達数十人が尖った岩や棘のある木の枝のある森の中、魔物に担がれてすら三日もかかった道程を無事に木ノ楊出流(きのゃんでぃる)のどこか、せめて保護を求められる場所まで逃げられるものか…。


 それができると考えるより万に一つ”緑の牧場”元仲間の冒険者達が領軍を引き連れて救助に来る事を待つ方がまだ可能性がある様に思えた。


(ごめんよぉ樽素虎(だるすとら)もっとあんたの忠告を聞いときゃよかったよ、あの日は夜眠れなくて本当に寝坊しちまったんだよ、決して雨田隊(あまだたい)に恥をかかせようと欠席した訳じゃない、それだけはあんたに伝えてから死にたいよう)


 年上の、口下手で要領の悪い女冒険者の屈託のない笑い顔が目に浮かび、枯れ果てたはずの何かがツンと鼻の奥を焦がし、一筋の雫が頬を伝った。


 視界に一瞬薄白いモノが飛び込みコツンと額に当たると妹分を抱きしめていた手の下に落ちた。

 幾筋か折り目のついた懐紙。鳥を模したのかムササビか?一方がとがった歪な三角に折られ空を舞ってきた懐紙に墨書。


『助けに来た 静かに入口迄 美都莉愛・木ノ楊出流』

R18版はXページにて1:00公開

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