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【エタってないんだからね!筆力向上修行中】屑星だって生きている~誰か教えて!ユニークスキル【editor】の使い方~  作者: Darjack


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54話 施療院急襲

「どけどけぇ!どけどけぇ!どけどけぇ~い!」


 暴走馬(うま)は走るよボクらを乗せて、御代(みだい)の町中を駆け抜ける。


 お嬢様の大音声が轟き慌てて道をあける通行人。


 お嬢様が手綱を握り僕と莉夢(りむ)はその後ろに合い乗る。


「お嬢様!無茶です!馬がつぶれっちまう」舌をかみそうになりながらお嬢様の耳元で告げる。


「施療院までもてばいい!!ってか諏訪久(すぽぅく)もっとお尻あげて!そのっ…擦りつけんな!」悲鳴に似た声が耳につき刺さる。


 へ?いやいやいやいや不可抗力ですって、怖いことをおっしゃる。


 (うまや)に常備している緊急用の伝令軽騎の単鞍馬に三人乗り。尻を落ち着かせる場所なんぞ在り様もなく仕方なく半分宙に浮かせている。

 先頭のお嬢様は鐙の高さを合わせる間もなかったので膝脛踝(ひざすねくるぶし)で馬の背を押さえ体を固定、大腿の動きだけで振動を吸収している、その背に覆いかぶさる姿勢で走る馬の律動に合わせて体を揺らすボク。

 側から見ると非常にけしからん見え方してること間違いなし!あ、安心してください履いてますよ。お嬢様はちゃんと乗馬ズボンを。


 なんというかお嬢様の背中、後ろ髪に顔を埋める恰好になっているので…その緊張の汗と石鹸の香り。更にボクの背中に縋り付く莉夢(りむ)とのですね、女性二人の肢体にぴたりと挟み込まれ。…ボク今日死ぬのかなぁ、いやもう死んでるのかも…いいか…いやまだよくない!もうダメ(のぅもあ)!煩悩!


 冷静に考え…なくても、男子の本懐なんだろうけれど幸せをかみしめて居る余裕なんて無いのですよ。


 施療院の中には傷病療養人出産直前直後の母子赤子、施療看病の神官さんぐらいしかいないのだから戦闘能力なんてほぼ期待できない、そんな安全地帯のど真ん中に魔物が現れたら!


 警邏中の領兵さんを見かけるたびに。


「領軍ぅぅん!ツ・ヅ・ケェェぇぇ」と凄まじい剣幕で怒鳴るものだから一個小隊ぐらいの人数が馬を追って走って来ている。流石に馬には追い付かないけど。


「かいもおおおおん!かいもおおおおん」


 到着よりだいぶ前からから叫びつづけた甲斐あってか馬の進入までには十分大門が開かれていた。


「男爵家が一女美都莉愛(びっとりあ)木ノ楊出流(きのゃんでぃる)であるっ!領軍進入を待って閉門!施療院内部に魔物潜伏の可能性有!絶対門外に放つな!死守せよ!後続領軍にもそう伝えよ!」


 顔見知りの門番さんは目を白黒させ乍ら強く首を縦にふるった。


 降りる、というよりほぼ振り落とされながら馬を乗り捨てる。流石に慣れているのか門番さんが手綱を引き取ってくれていた。


「魔物?!受付待ち合いで狼藉者が暴れているとっ!先程領軍の方に出動のお願いに向かわせた所でっ」


 間に合わなかったか!


「そうか!後から来る領軍を迎え入れたら門を閉ざせ!魔物を町中に放つでない!」門番さんに指示を出す。


「受付待ち合いに急ぐぞっ!」


 先頭切って走り出すお嬢様、捲くるぞォ!



 中央学校や神殿と同じ防壁に囲まれた施療院、名来流(なくる)村の診療所よりかなり広うござんす。


 はたして、受け付け待合で裂けた口から血を流し倒れていた冒険者や腕、脚を抑えて呻いている数人に応急処置を施しながら、青い顔で蹲っている人に【魔狼(うるふぇん)】の向かった先を訪ねる。


 ガグガクと震える指が示す方へと急ぐ。


 はたして、通路に沿って何人かの神官様が倒れている。


 辺りに散らばる、盾や戦棍(めいす)と血糊の痕が激戦を物語っている。


 通路の最奥、片側だけ半分開いている扉。傍らの看板に書かれている部屋名称は“新生児室”。


 ふざけんなよっ!!!


 倒れている神官様方には申し訳ないが突き当りの部屋へ飛び込む。


 あだっ!顔面に柔らかな衝撃。


 入口間際で先に飛び込んだ莉夢(りむ)が硬直し突っ立っていた。猫の肉の様に靭やかなる背筋に顔を埋めてしまった。不可抗力だから!



 Ogyaaa...


 部屋の中央、落下防止の木の格子のついた寝台には力なく泣いている赤ン坊たち。

 中央辺りの寝台に、お屋敷で見た【魔狼(うるふぇん)】より一回り大きな灰色のヤツが陣取り寝そべっている。その前に立つのは。


 どきり、心臓が唸る。


 少女。


 【魔狼(うるふぇん)】と相対し狼の前脚の間際で泣いている赤ン坊にゆっくりと手を伸ばそうとしている。震える背中から緊張感が伝わってくる。


 金色の髪に、栗色の肌。女中(めいど)服姿の()()()莉夢(りむ)がそこに居た。


「だいじょうぶ…こわくない…」


 【魔狼(うるふぇん)】に伝えているのか、自分に言い聞かせているのか、そんな言葉をつぶやきながら。

 そんな小莉夢(りむ)を興味深そうな視線で眺め、するがままに任せている【魔狼(うるふぇん)】。

 その気になれば目の前の赤子も小莉夢(りむ)の頭も一瞬のうちに噛み潰せるという余裕の表れなのか。


 この距離から跳びかかるのは無理だ、莉夢(りむ)でも間に合わない。赤ン坊か小莉夢(りむ)かどちらか、または両方が死ぬ。


念動(ふぉぉす)】改こと【衝撃(いんぱくと)】全開で弾き飛ばす?【魔狼(うるふぇん)】の後ろや周囲にまだ他の赤ン坊が居るんだ。授乳の為に来ていたのであろうか、赤ン坊を抱いた母親たちも何人か部屋の隅へ固まって震えている。危険すぎる。


 【魔狼(うるふぇん)】を刺激しない様、赤ン坊を抱えたままゆっくりとふり向く小莉夢(りむ)


 入口で硬直しているボク達にやっと気が付いたのか。


「姉ぇさん、お嬢様…」信じられない!と目を見開いたもののすぐに目を伏せ。


「この子たちを助け出すまで…狼サン刺激しない様お願いします」しっかりした物言いで、でもはらはらと伏した目から零れ落ちる雫。


 女中(めいど)服を着ていたからてっきりお屋敷の使用人の中にいると思い込んでしまったけれど。

 そうか、施療院にいたのか、どうりで会えなかった訳だ。


 さあっと床を滑り傍らの壁にぶつかり止まる弓と矢筒。


莉夢(りむ)諏訪久(すぽぅく)武装解除、一歩下がれ。赤ン坊と仁芙瑠(にっぷる)の安全を最優先する」


 カララ、とお嬢様の弓に莉夢(りむ)の長杖が転がり当たる。


 ボクも鞘ごと帯剣を外しそっと滑らせ放った。


 【魔狼(うるふぇん)】の一噛みで命潰える距離を保ちながら、抱いた赤ン坊をすぅと胸前に差し上げる小莉夢(りむ)仁芙瑠(にっぷる)


 じっと、ボクを見つめている。振り向き莉夢(りむ)の後ろに目線を送るとお嬢様は小さく頷いた。


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