49話 面会要求
上慎の拘束で今回の騒ぎが終結した訳じゃあない。
二級冒険者不羅毘含む元”翠の牧場”四名。
御代町の繁華街、通称”奈原街”の夜に舞うお姉ぇ様方三名。
そしておそらくは三級冒険者集団”孔雀草”三名も。
この短期間に十名ものうら若き女性が行方不明となっている。
もし、永遠の尊多が殺害隠蔽しているとしても十名もの遺体を何処に隠しているというのか?
それに、永遠の尊多が何処からか入手した四個の【小鬼】魔石。
今のところ不羅毘達が入手したモノを横取りした可能性が示唆されているけれど、流石に上慎の屁っ放り腰に負ける程には二級冒険者は弱くはない。…毒か?毒飼なのか?
あの事情聴取のすぐ後、冒険者組合支所長はお嬢様とともに家令様と面会。
今回の顛末を報告、監督不行き届きに因を発する進退の伺いと同時に冒険者七名一般民間人三名の捜索を木ノ楊出流領軍に対し要請した。
内容を重んじた家令様は事態の収束まで支所長の進退は預かり。領軍の先発隊が”七曲り”を中心に大規模捜索を開始した。
ド新人とはいえ仮にも中級冒険者の端くれが引き起こした事件として県域級の支配人までもが動き出している模様。
こりゃぁ準男爵様でも庇いきれないと思いますよ、上慎君。
ボク達は冒険者の立場として強制拘束され位階に応じた日当を保証されたうえで常に冒険者組合の要請によって何時でも出動できるよう待機を命じられた。
あの日、お姉ぇさんの涙を目の当たりにしたボクとしては飛んで行って何か領軍さんのお手伝いをしたいところだけれど門外漢が混ざれば現場は混乱する。専門家に任せるのが結果一番早いというのが世の常だ、ボクはボクの出番が来るまで力を蓄える。
現在は冒険者の新規の依頼受注は止むを得ない場合を除いて凍結されているので今日の昼間はお屋敷の中庭で九厘達と軽く型稽古に勤しむ。
撫散の父ちゃん庭師の得楠さんが仕事の合間時折助言を投げてくれる、元領軍兵士でやっぱり剣を得意としていたらしい。
「昔はお前達のように剣の修練に励んでいたのだが、膝に矢を受けてしまってな」
お屋敷で働いている使用人の方達は領軍や何かの公務等で怪我をして十分に役目を果たせなくなりお屋敷に再就職した人が多い。
「オレの親父もそうだな」「ウチの父ちゃんも!輜重隊だけど!」と九厘と智生。皆さん膝はキチンと保護しましょう。
四人で汗をかきながら剣を振っていると。
「諏訪久くん、面会のお客さんが来ているわよ」九厘の母ちゃん。女中の奈兎さんが呼び出してくれた。
汗を拭きながら使用人用の扉から顔を出すと、何とびっくり”ポチャ”がやつれた顔で立っていた。周りを監視役と思われる冒険者達に囲まれている、顔見知りの友好冒険者集団構成員が片手を挙げている、チィース。
「す、すまん庶…えぇと」体に見合わぬ耳に付くキンキン声も今は力なく”ぎんぎん”ぐらいに落ちていた。
「…諏訪久」名前も覚えてない人間に面会求めるかね、キミは。
「そうか、諏訪久、頼みがある!聞いてくれ」…おいおいいきなりかよ。普通初対面なら”君”とか”さん”とか…まあいい、阿呆相手に人の道人生などを説くのは無駄か。
「知っている事全てを話す、木ノ楊出流男爵令嬢に繋ぎを付けてくれないか」
…あいあい。
いきなり男爵令嬢に面会を求めても門前払い食らうぐらいの知恵はあったらしい…いや、それとも場瑠部さんあたりに一度蹴られて考えたのかもしれない。
兎に角、”ポチャ”を待たせ一度お嬢様にお伺いを立てることにした。
お嬢様の選択は「会う」
但し、家令様との協議の結果、イナヅマ様の鎮座する玄関広間での立ち話で、家令様は例の小部屋で待機拝聴ということになった。
お嬢様と莉夢の準備を確認しポチャ一行を門前まで迎えに行く。
その時初めてその他冒険者のうち二人は永遠の尊多構成員だと気が付いた、青い顔して脂汗を垂らしている、そんなに緊張せんでも…。
イナヅマ様に拝礼の儀、ボクも拝礼指導は初めての経験だけどポチャ以下冒険者諸君は目を白黒させながら追従している。
一応、一七二〇号様縁起を解説。主上様(建国の父舞夜・常侍)と初代様(初代木ノ楊出流領主九郎守様)の御関係と領設立の背景を解説。知らなかった人も多く皆様に感心と感動をお届けした後、お嬢様と莉夢の元へご案内。
一緒に黄金虫の姿をした何かが手を合わせていたけど気にしたら負けなので見なかったことにした。
ちょと待たせ過ぎたみたいでお嬢様イラってたけどまぁギリ許容範囲かな。知らんけど。
「尊多商会副会頭が息子、上慎の秘書を自認いたします鳫間と申します。お嬢様にはご機嫌麗しゅう…」
自認かい!ってか名前あったんかい!
お嬢様は敢て尊大な態度で相対する。
「うむ、挨拶ご苦労」
まぁ、百歩譲って上慎は領内の流通を担う有力商会の血縁者だから貴族としてのお嬢様の知己を得ていても不思議ではないけれど、その秘書が直接お嬢様の言葉を賜るなんてのは本来ありえないんだけどね。
ちょっと勘違いが鼻に付く尊多商会の関係者にはたいして有難みもない話なのかもしれないけれど。
だから、お嬢様の出番は基本これで終わり。商会の副会頭の息子の秘書(自認)程度でもお嬢様が直に面会応対してくださるなんて噂がたてば多分連日門前に行列ができる。
今回はポチャは従者であるボクを訪ねて来て件の顛末を話す、たまたま同席したお嬢様がそれを耳にするという設定ね。嗚呼、貴族の世界。ややこしや、ややこしや。
「で?話って?」
促すボク。
「そ、その前に、全て話したら僕と家族、後ろの二人、それからここには居ないが体調不良で施療院へ行った一人の身の安全を約束して貰えないだろうか…」台本は理解している様子で僕の方を向きながら話すポチャ。
時折チラッチラッとお嬢様に視線を向けるあたりお嬢様への敬愛が足りないなぁ、全て終わったらお嬢様愛を注入してくれるわ。
「話の内容によって検討ね、役に立つ話だったら審判の時に”調査に協力的だった”と証言しても良いわ」
明後日の方を向いて話すお嬢様。あくまでポチャの話は偶然耳にに入っただけ。回答は単なるお嬢様の独り言という体だ。
語り始めたポチャの告白にその場に居た者は全員騒然となった。
今回の公開はここまでです。
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