48話 上慎の最期(前編)
本気の怒りは時に周囲の心をわし掴む。ボクの隣で立ち上がった女の子の絶叫に周囲は息をのんだ。
こちらへ振り向いた上慎はボクの隣で頭覆付き外套をバサリと落とした派手派手半裸なお姉さまを見て愕然となった。
こちらを見て親指立ててるお嬢様の悪ィお顔ったら!好ゅきぃぃ…。
「お店のお姉ぇ様方を!県中央のお店で綺麗どころを探しているからと誘ったではありませんかっ!」
ふしゅぅぅう、ふしゅるるぅぅうと呼吸を荒げ喉も張り裂けんと怒り叫ぶお姉ぇさん。怒り心頭に発するとはこのことか。ボクはお嬢様から離れた席でお姉ぇさんの護衛兼発言機会を計るお役目だったんだけどお姉ぇさん堪えきれなかった様で、結果的には最高の場面で爆弾発言投げ付けてくれた形になりました。無能でスイマセンデシタ。
「私はおばあちゃんの世話があるから行けなかったけれど!尊多商会の若様の紹介でお給金が一杯貰えるから、おっ父おっ母に仕送りできるからって、中央までの護衛も尊多の若様が無償で引き受けてくださったってお姉ぇ様方喜んで付いて行ったのに…」
目の周りに塗った目塗が涙で流れ落ち綺麗に化粧した顔の目の下に黒い縦線が流れる。
「お手紙たくさんくださいって!お花の便箋渡して、泣きながらさようならしたのにっ!」
はい、昨日長渡から帰って御代町の雑貨屋廻って足が棒になりましたわ、捜査は足が肝心じゃ、なぁ莉夢さん。
あの押し花の便箋取り扱っていたのは御代町では繁華街の通称奈原街にある一店だけ。近々で同じ便箋買った人を店員さんが覚えていた、というかお店の常連さんだった。隣で泣き叫んでいるこのお姉ぇさんのことね。
「護衛はしなかったって!じゃあお姉ぇ様方はぁ!誰に付いて何処に行ったって言うのぉぉっ!」
泣き崩れるお姉ぇさんを横から支える。あうっ!いい匂っ…ボクの胸で泣き出してしまった、抱きしめたくなるけどグッと我慢。静まり給え、お嬢様が見てる、莉夢も見てる、お嬢様が見てる、莉夢も…。
上慎君はあたふた、目は白黒、自分の体勢を崩されても即復勢できる様にしないと莉夢と模擬戦なんてできないんだぞ、どやぁ!
「いやっ!そのっ…!そうだ!たっ確かに”七曲り”の辺りまでは奈原街の三人の女性と同道しておりましたっ、そこで護衛はここまでで良いと告げられ…森の中に入っていくのは危険と警告したのですが、聞き入れられず無理に警護する訳にもいかず…」
その後長渡で酒宴かい?…よく、そこまで無理繰りコジツケラレマスネ…はい、皆さん、殺すな、盗るな、……………。はい、もう一回、殺すな、盗るな、……………。
「病気のおっ父おっ母残してお姉ぇ様方が逃げるものかっ!泥水啜ってでも生き延びる夜の蝶舐めんな!」お姉ぇさん…。
うっ。
どデカい殺気を感じて目をやれば。胸筋から頭頂からありとあらゆる場所に#印を浮き上がらせた支所長は赤を通り越したどす黒い怒り顔で叫び吠えた。
「…冒険者組合木ノ楊出流支所登録永遠の尊多代表三級冒険者上慎!
冒険者組合木ノ楊出流支所長の名において、貴様の冒険者資格を凍結するッ!同時に重要参考人として永遠の尊多全構成員の行動を制限!
許可なく御代町から出退した場合、理由の如何を問わず冒険者組合より指名手配、全国冒険者によって生死問わずで狩るのでそのつもりで!」
お嬢様と同じくらい怖いわ、おっさん。永遠の尊多の構成員達は他の冒険者達に囲まれて青い顔をしている。
「違う!これは罠だ!何かの間違いだ!こんなことが許されるものかぁあ!」取り乱し泣き叫ぶ上慎。お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?
「冒険者組合から男爵様へ審判のお願いを申し立てる、そのときに十分に申し開くのだな、今回の聴取の記録は参考発言含め一字一句漏らさず証拠資料として提出するのでそのつもりで。
上慎を奥の間に軟禁せよ!永遠の尊多構成員は常に所在を明らかにしておくこと、証拠の隠滅等図った場合は罪一等を増ずる」
♯印を浮かべながらも言葉は厳密に選ぶ、いやはや流石一級、どこかの似非三級の狂言とは格が違う。
「だ、男爵家の阿婆擦れに嵌められたのだ!そうだ!男爵家の陰謀だぁ!隣領”富嶽和の”尊多準男爵様に上訴してやるぅ自分の身内にばかり甘い愚領審判があぁあぁ!」
テメェ!言うに事欠いて何言いやがる――――死刑!!☞☞。
ことり野デス子先生ごめんなさい




