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【エタってないんだからね!筆力向上修行中】屑星だって生きている~誰か教えて!ユニークスキル【editor】の使い方~  作者: Darjack


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33話 冒険者にボクはなる

 正直、冒険者になるだけなら比較的簡単になれる。

 町の人々も冒険者登録だけしている人は多いと思う、ウチの親父も登録だけはしていたはずだ。


 何故かというと本業外の税金の納付が楽になるからだ。


 例えば捕まえた兎を白銅貨二枚で売ったとしよう、肉屋が買った場合白銅貨は二枚受け取れるが、冒険者組合(ぎるど)に売ると白銅貨は一枚と半分。白銅貨半枚=赤銅貨五枚分は税金と組合(ぎるど)手数料で差し引かれる。


 一見損に見えるが、肉屋に卸した場合、受け取った金額の二割は後で纏めて税金として納める必要があるので自分で帳簿なりを付けて管理しておかなければならないのだ。

 その帳簿は肉屋も付けており徴税吏員の抜き打ちで突合せ調査があるので誤魔化すことはできない。


 口裏合わせて脱税?何度も言うけれど封建制で上位存在を謀ってバレた場合。信じられない程の極刑が待っていて親族一同に累を及ぼす。顔も見たこともない遠縁親族の脱税で一族郎党老若男女一切合切消滅することだって有り得る。そこまでの危険を冒して些少の金銭に拘るかどうかなのだ。


 正直に税を払い普通に生活していく分には領兵さんは魔物や犯罪者から領民を守ってくれるし、学校、神殿、施療院も無料もしくは領民価格で見て貰える、共同調理場も使えるし収穫祭に新年祝祷会を楽しみ、成人の儀、洗礼の儀も受けられる。

 少しばかりのお金をケチるよりキチンと税金を払って安心して生活した方が得だと町のほとんどの住民はそう思っているはず。


 自分の商売での収入などであるならば、仕入れや設備投資などを経費として税金の対象から引けるので敢て自己納付にして税金の支払い額を抑える工夫が生きて来るけれど、たまたま獲った獲物の売買や、臨時収入を得た場合等。いちいち帳簿につけて一年後に纏めて税金を払うのかと。

 臨時収入なんだから経費なんかないし税金の減額も期待できないのに、うっかり払い忘れたら脱税という危険を冒してまで自己納付に拘る理由がない。


 そんな時は手数料を払ってでも組合(ぎるど)経由で取引をすれば取引分の帳簿は組合(ぎるど)がつけてくれる。

 製材組合(ぎるど)や狩猟組合(ぎるど)はその生業を行っていなければ加入できないけれど冒険者組合(ぎるど)なら些少の登録料さえ払えば誰でも帳簿付けから納税まで一切合切を面倒見て貰えるという訳。

 一線を引退したお年寄りなんかが小遣い稼ぎの小商いや野草薬草採取したり、奥様方がチョットした内職なんかする場合凄く重宝するみたい。


 本当は人頭税やら商売税、領主様からお借りしている住居の使用料とかあったり、怪我や病気で働けなかった人の減額免除とかもっと複雑なんだけど今関係あるところとしてはこんな感じ?


 ゴメンナサイ、将来家令様の部下になりたくて税金の勉強もしているのでチョットひけらかしてしまいました、てへ。


 で、冒険者登録なんですが。


「あによう、兄さまだって倉利州(くらりす)様達と”木ノ護(きのまもり)”って一団(ぱぁてぃ)組んで二級(しろ)まで行ったのよ、お母さまにも麗芙鄭(れふてぃ)にも相談して()()は取ったわ」


 ()()じゃない所がお嬢様ですよね…。


 どうやら下級貴族様方の間では冒険者登録して等級を上げることが判りやすく実力を示す方法になっているみたいなのだ。

 誰でもなれる初級(こっぱ)四級(くろ)ならともかく三級(あか)二級(しろ)ましてや一級(ぎん)特級(きん)など実績が無いと取得できない等級であれば持っているというだけである程度実力は推し量れようというもの。

 以前も言ったけれど下級貴族の出世街道は上級貴族様に認められ雇われることが最短経路なので冒険者としての等級を上げるというのは()()下級貴族様方の必須の実力誇示方法なのだ。


 問題は。


「お嬢様、お嫁に行かれるにしても、女中(めいど)採用されるにしても冒険者等級はあまり…」軽くたしなめてみたが

「お母様はお父様へ嫁ぐ前隣領文和(ぶんな)の冒険者組合(ぎるど)一級(ぎん)張っていたのよ、私にだって出来ないことはないわよね」


 ぼ、冒険者登録されていたとは聞きましたけど一級(ぎん)!普通になれる範囲で最高位階じゃないですか!あんなに可憐で華奢なお方が?!そういえば【大躯(おぉく)】とか討伐されたとか聞いた様な…。


「アタシにも色々考えがあるのよ、あなたたちは黙ってついて来なさい!」がははと袰瓦(ほろぐらむ)様ばりに豪快に笑い、のしのしと受付へと向かうお嬢様。


「御意」すかさず返答し続く莉夢(りむ)。仕方なし、付いて行くボク。


「新規登録、三名でお願いするわ、これで…」


 話をしていたボクらの方を先程からちらちらと見ていた受付のお姉さんが”やっぱり来るの?”といった表情を慌てて営業の微笑みへ切替えお嬢さまへの対応を始めた。


 お嬢様は懐から魔素遮断袋を取り出し、蛙の魔石を受付の卓上へ三個並べる。


「納品実績各一件、登録料一人銀貨一枚納付で四級冒険者登録三名様でよろしいですね?木ノ楊出流(きのゃんでぃる)男爵令嬢様」


 流石にお嬢様の顔は知っていた模様、登録用紙を三枚差し出しながら問う受付嬢。


 冒険者等級は最低が初級からなのだけれど、この初級、小遣い稼ぎをする一般庶民のためにある様な等級で登録料も白銅貨半枚=赤銅貨五枚で済む。その代わりに対外的に示す組合(ぎるど)証は手のひら大の木製、”木っ端(こっぱ)”の板だし、他領の冒険者組合(ぎるど)では通用しない。


 本格的に冒険者を目指す人はその上の四級から始める場合が多い、登録料は銀貨一枚かかる代わりに黒い鉄製(てっちん)組合(ぎるど)証が発行され、今週中に隣接領の冒険者組合(ぎるど)へ通達。

 来月には県内、三か月後には全国の冒険者組合(ぎるど)で通用する証になる。

 初級から四級(くろ)への昇格条件は一回以上の納品実績のみ。

 冒険者用の依頼も受けられるようになる。


 お嬢様は蛙の極小魔石を納品し実績としつつその報酬を登録手数料として納付することにより初級(こっぱ)の手順をすっ飛ばした訳だ。


 納品販売自体は登録なしでもできるけれど二割五分持って行かれても納品者の実績として払った記録が残らないので後からあの時の実績を…なんていうことはできないし積み重ねが昇級への繋がるのでそんなもったいないことしない、登録同時納品でほんの少し初級登録分の費用も手間も時間も節約できた、結果的に蛙の魔石三個を最大限に活用したことになる、こういう所そつがないですよね。


 そのまま別室で暫く待機し冒険者としての諸注意、心得の講習を受ける。殺すな、盗るな、嘘つくなの一般常識さえ守れば普通に行けそうな感じを受ける。逆に言えばそれすら守れない輩も居るってことかも知れない。


 講習修了後、自分たちの名が彫られた手のひら大の黒い鉄の板を受け取る。

 何か頬がにやけてくる、自分を証明する何かを手にしたことで何となく大人になったような気がしたからだと思う。

「あによう、いろいろ言ってたけどやっぱり嬉しいんじゃない」ニヤニヤと笑いながらお嬢様。


「再発行にはお金がかかるし、盗られて悪用されたら所有者の責任になるから気を付けなさい、この証を守るのも冒険者の仕事の一つなのよ」


 なるほど、最低中学生にならないと冒険者登録できないのは洗礼前は責任が取れない年齢とされているのもあるのか。


 ふと莉夢(りむ)を見ると黒鉄(てっちん)の板を随分と感慨深げに見つめている。むしろ涙ぐんでいる風にも見える。


 ボクたちの視線に気が付いたのか、フッと目を上げボク等の顔を見渡し「…いや、流れていたときはずっとこれが欲しかった、いくら獲物をしとめて納品しても、肉屋では流民の持込は買い取りはしてもらえないし、買ってもらえたとしても非道く買いたたかれてな」


 そりゃ、流民は帳簿付けられないしどこにいるかも分からないからバレたら脱税扱いだもんね…。


「冒険者組合(ぎるど)に持ち込むのが一番()()なのだが、いくら持ち込んでも冒険者登録していない者は都度一見(いちげん)扱いで、冒険者用の依頼も受けることは叶わなかったし、組合(ぎるど)を通さぬ仕事は、辛く厳しいものばかりで…」


 あー申し訳ないけれど流民自体に信用というものが根こそぎない。


 冒険者組合(ぎるど)だって自分たちが仲介した冒険者に仕事先で事件でも起こされれば面目が丸つぶれだ、組織としての信用に係わる。

 よって保証人が居なければ冒険者組合(ぎるど)への登録はできない。

 そうなれば根本的に流民は冒険者登録できない。都市部の場末には流民の保証人になって冒険者登録させ稼ぎの上前を撥ねる商売もあるみたいだけれど相当組織立ててやらないと無理だろう、流民だって莉夢(りむ)の様に清廉潔白な人達ばかりじゃない。


 親族の繋がりがないから犯罪を犯してもその場から逃げれば済んでしまう場面がある。領民として拠点を築いている人は気軽に遠出できないのですぐに追い駆ける事なんてできやしない。

 そういった犯罪者たちは各領、町々に指名手配され最後には寄る辺が無くなりどこかで野垂れ死んでいくか、懸賞金を掛けられ賞金稼ぎか領兵さん達に逮捕拘束され審判にかけられる。大概は死罪だ。


 流民というだけで犯罪者予備軍と見做す領民だって少なくない。誰だって下手は打ちたくないものだ。


「お嬢様に拾っていただいたおかげで、こんなにも夢が叶う日がやってこようとは…」震える語尾に思わず貰いこみ上げるものがある。

 ボクら庶民なら少しのお金と時間を割けば簡単に手に入るモノがほぼ永遠に手に入らない世界。


 こんな時、莉夢(りむ)を見つめるお嬢様の御姿は優しい。大慈母神様の顕現の様だ。

 ずっとこんなんだったら…本当に好…いやいや、従者ごときが何たる不敬!剣吞剣呑。

 お嬢様は何処ぞの上位貴族な旦那様の元で幸せな一生をお過ごしになる。その後ろに控える執事服姿の莉夢(りむ)


 …あれ。その時ボクは…?


「ぐすっ…さて時間は大切に使いましょ冒険者として受けられる依頼を閲覧して傾向と対策、最短で三級(あか)冒険者目指すわよ!」


 莉夢(りむ)から渡された手巾(はんけちーふ)でビーと鼻をかんだお嬢様は再び受付へと向かった。


 お嬢様、意中の殿方の前では止めてくださいね、百年の恋も醒めてしまいますよ。


 その時だった。


木ノ楊出流(きのゃんでぃる)男爵令嬢様、暫しお時間よろしいでしょうか?」


 凛としながらもどこか冷たい雰囲気を漂わせる女性の声が待合に響き渡った。

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