表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【エタってないんだからね!筆力向上修行中】屑星だって生きている~誰か教えて!ユニークスキル【editor】の使い方~  作者: Darjack


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/119

31話 はじめての魔法

 書庫はお屋敷の結構奥に位置する区画にあった。


 このあたりまで普通に来れるのはお館さまのご家族か使用人でも直接奥様付きの方々位じゃあないかしら。

 ボクが一人でうろうろしていたら胡乱なことこの上ない、すぐに見咎められて追い出されそうだ。お嬢様同道も意味がある訳ですね。


 日中でも薄暗い廊下の一角でお嬢様は懐からゴッつい鍵を取り出し、書庫入り口の重厚な扉を開いた。もちろん力仕事は従者の担当です。


 暗い…。本が傷まない様に日頃は日光が直接入らないように造られているみたいだ。


莉夢(りむ)

 お嬢様が示した先に室内用の魔導照明があった、その充填器の部分に掌を当てると莉夢(りむ)は魔力の充填を始めた。

 少し屈んだ拍子にちらりと見えてしまった首元に件の玻璃珠(ぺんだんと)の銀鎖。思わず目線を外した。


 なるほど、普通の貴族様は皆様魔力をお持ちだからこれで十分な訳か。お嬢様が操作端子を弄ると部屋の中を照らす仄かな明かりが点灯した。


 充填中の莉夢(りむ)を尻目に部屋の中に入ったお嬢様はこれまた重厚な窓の内鍵を開ける、重い窓を動かすのはもちろんボクの仕事。


 窓は換気用らしく斜めに付けられた小型の木製庇(るぅばぁ)が沢山並んでいる、なるほど、お日様からの直射日光は入らないけれど庇と庇の隙間から適度に乾燥した空気が上がってきて埃か黴なのか部屋に入った時に感じた独特の臭いは次第に薄れて行く。


「あっちは歴代領主(ごせんぞ)様の記録とか入ってる禁書庫ね、一応触っちゃダメよ?お父様しか開けられないから触ったくらいじゃどうにもならないんだけどね」

 部屋の奥に鉄製の壁と一体に作りつけられた本棚に扉と鍵穴が付いている。窓と同じく鉄製の細かい庇が付いているのは換気の為か。


 窓の多段庇の隙間から漏れる外からの間接光と莉夢(りむ)の充填した魔導照明の灯りのおかげで本が読める程度の明るさは確保できた。

「私の魔法の勉強兼書庫の風入れって条件で許可してもらったんだからね、影干しの時は皆でやるわよ」


 OH…重そうな本が結構ありますよお嬢様…。


 お嬢様が本棚から引っ張り出してきたのは”魔素と魔導進化論”、手伝いながら分厚くでっかい本を見書台へ設置し表紙を捲る。


「……」


「…どうしたの?」


『どうしたね、諏訪久(すぽぅく)


「ま、まどうじゅつこうしにおけるたいないまそのじゅんかんとうんよう…?」


 とりあえず一行目冒頭から意味がわかりません。


『あー、そうか。いきなり応用編はきつすぎるな、まずは基本から行こうか、えーと、”はじめての魔法”がどこかにあるはずだが…』


「お嬢様、”はじめての魔法”はありませんか?」


「そっか、諏訪久(すぽぅく)はご先祖様から啓示受けてるだけで基礎は知らないんだっけ?貴族家御用達本の書名がポンポン出てくるってのもちょっとアレだけど、まぁ…魔法の基礎ならアタシが教えられるかな?」


 再びお嬢様を手伝いながら、一度”魔素と魔導進化論”を片付け”はじめての魔法”を見書台に設置。

 先程より厚さは薄くどこか薄汚れ擦れている、歴代の領主様がこれで魔法を学んだのだろう。


 お嬢様の解説付きで”はじめての魔法”を読んでみた。


 簡単に要約するとこうだ。



 魔法とは。


 神の遣わしたる技能(すきる)の内 魔力を持って奇跡を成す御業の事なり。


 魔力の過多により施行しうる奇跡に大別あり。


 魔力の源も神授せし奇跡も家代々の積徳に因る、先祖父母を尊び子々孫々を慈しむことが肝要…。



 えーと、技能(すきる)にも種類があって魔法じゃないやつもある、上慎(かむしん)の〖詐術〗とか、地図職人の〖成図〗とか〖俊足〗とか、これらはその技に精通したときに“生える“ものが殆どでその行使により能動的に効果が上乗せされるというもの。

 こちらは奇跡というより熟練度の目安と言った方が合っているのかもしれない、本人の努力が神に認められた時形に現れるものとされ、単に技能(すきる)とだけ呼ばれる。


 同じ名称の技能(すきる)であっても中学入学前に行われる洗礼の儀の時に神様から授かるものは恩恵技能(ぎふと)と呼ばれる。


 神様から授かった技能(すきる)を持っている、神に愛された人全般を《星》という呼び方をするのだけれど、元来は《星》というのは魔法恩恵技能(ぎふと)を持っている人のみを指した言葉だったらしい。


 なぜならば、魔法は後から努力で”生える”ことはなく、神様から授かる恩恵技能(ぎふと)でしか取得できないものだからだ。昨今では敢えて魔法恩恵技能(ぎふと)を持つ《星》を《真星》と呼んだりもするらしいけれど。


 千年の昔、魔王大戦の最中、人と魔物がその存亡をかけて争っていた時代。


 この魔法恩恵技能(ぎふと)を持ってして初めて人は魔物に打ち勝つことができたという。


 その貴い魔法を使える方々が子をなしたとき、その子供にも魔法の恩恵技能(ぎふと)が受け継がれたのだそうだ。


 そう、貴族の方々はこの世界を魔物から救った方々の末裔という事になる。そして魔法が使えることこそがその貴い方々の末であり、神様から愛されていることの証なのだとされている。


 ただ、時代が下り千年の時が移るうち、その力は次第に薄れ、大地を割き天を焦がしたとされる極大魔法の使い手は今や現れず、お嬢様や若様の様な”光の矢”を出す、”炎の塊”を投げつけるというだけでも現在では十分魔導士と呼ばれる。


 次第に父母が魔法恩恵技能(ぎふと)所持者であっても子供が必ずしも魔法恩恵技能(ぎふと)を授かるとは限らなくなり。そうした子は嫡子であっても貴族家を継げなくなる場合もあったそうな。


 兄弟すべてがそうであったときなどは他家から魔法恩恵技能(ぎふと)持ちの子息子女を迎え婚姻によりその子供の恩恵技能(ぎふと)に期待し継がせたのだという。


 では、兄弟の誰かが家を継いだ後、魔法恩恵技能(ぎふと)を持たないその他の貴族子女たちはどうなったかというと主に有力な庶民に入婿降嫁させ血の縁を繋ぐ一種の捨て駒となった。魔法恩恵技能(ぎふと)が無くても貴族の親戚になるというのは庶民にとってはそれなりに価値があった訳で。


 そんなこんなで数百年もすると、庶民の中に稀に魔法恩恵技能(ぎふと)を授かる者が現れ出したのだ。


 今では公平なる神の御業ということになっているけれど、当初はもっと下世話なものだと思われていた。まぁ、その…畑は庶民だけれど…種が貴族様…とか?。不義の疑いを掛けられた方はたまったもんじゃないけど。


 ところが、魔法恩恵技能(ぎふと)を授かる庶民の家系を辿るとその殆どが過去貴族家から入婿降嫁を受けていたことが判り、俄かに貴族家出身者の株は爆上がり、やはり貴族家は貴いということになり、いわゆる“星無し貴族”の婚活市場は大いに盛り上がったという。


『隔世遺伝だよね』とイナヅマは語っていた。


 今では魔法恩恵技能(ぎふと)の無い貴族様なんて殆ど聞かないけれどやはり稀にはあるみたいだし、子どもが生まれない場合もあったりするので僕みたいな魔法恩恵技能(ぎふと)持ちの庶民にも養子婿入りで貴族編入の目があるし、強力な魔法恩恵技能(ぎふと)の因子を取り込んで将来の魔法持ちの確率を上げるとか、魔法恩恵技能(ぎふと)持ちの庶民を囲い、掛け合わせて魔導士量産を試みる悪趣味な貴族様もいらっしゃるそうで…こっちだと種馬人生に近くなるねぇ…。


 大幅に話がそれた。


 魔法施行にあたっては恩恵技能(ぎふと)そのものもだけれど保持魔力、保有魔力量の要素が重要になってくる。


 魔法恩恵技能(ぎふと)の種類によって使用魔力量と効果は固定されているのだそうで。

 困った事に必ずしも持っている魔法恩恵技能(ぎふと)の行使を賄えるだけの魔力量を恩恵技能(ぎふと)拝受者は保証されている訳ではない。


 最悪なのは保有魔力量が所持魔法恩恵技能(ぎふと)の使用魔力量に達しない場合。

 《星》であるのに実際は使えない《屑星》確定なのだそうな。

 これは大量の魔力を必要とする極大魔法の使い手程陥りやすい両刃の剣。コンニチワ種馬人生。

 なんとなく極大魔法の使い手が居なくなった理由が煤けてるぜ…。


鑑定(あぷれぃず)】で恩恵技能(ぎふと)の有無は判るので行使できないからと言って貴族籍をはく奪されるところまではいかないらしいけれど、事実上”星無貴族“と同じ扱いの上に”星無“達からは”屑“でも持ってるだけマシ、恵まれた奴が俺たちの市場(しょば)を荒らすなと鬼子扱いされ立場が無いと…。


 ただ、最近はそんな純正の《屑星》自体は減っていて代わりに“屑”の適用範囲が広がり。


 お嬢様の様に、魔法行使回数が極端に少ない者。

 莉夢(りむ)の様に、魔力はあっても魔法恩恵技能(ぎふと)が無く、魔力充填しか能が無い者。

 ボクの様に、使い方がよくわからない、実質使えない者。


 半端にしか神様に愛してもらえなかった者たち。


 そんな者たち全般を《屑星》と呼び、蔑むのだそうだ。



 べらんめぇ!“《屑星》だって生きている”ンだゾ、コのヤローめ。



 …お嬢様と雑談形式で進めているため結構脱線が多い。


 雑談ついでにボクはお嬢様に聞いてみた、


「なぜ【光矢(らいとあろぅ)】は自分で目標に向かって飛ばないのか?」と


 その疑問に

「矢は射なきゃ飛ばないでしょ?」と莫迦を見る蔑みの目で見つめられてちょっと背中が“ぞくっ”と来た。


 けれど「普通の矢は急角に曲がらないけどお嬢様曲げてましたよね?」と指摘したら。


()っ!あれは…アタシの最後の技なんだから絶対に当てなきゃって思ってて…以前練習で疲れてて外した時に“曲がれ!”って強く願ったら軌道がずれたことがあって…あ、これは必殺技になるんじゃないかって、練習してるうちに…急角にも曲げられるようになって…」


 言ってるお嬢様の顔がだんだん思案顔になっていった。多分ボクでなきゃ見逃しちゃうね。


 そろそろお嬢様の御用の時間が迫っているという事で魔法の勉強は途中で切り上げることになってしまった。お嬢様もボクに教えることで改めて色々と気付きがあったようでまた近々こういった魔法の勉強会を行う約束をし撤収を始めた。



 もう一つ疑問に思っていることがあるんだよね。【黒大躯(だぁくおぉく)】との戦いの中でイナヅマが使っていた魔法【念動(ふぉぉす)】あれ強弱を調整していたような気がするんだ。

 それに、イナヅマ…羽生さんは夢の世界の中で『節約のため【障壁(しぃるど)】を最低限にしていた』って言ったはずだ。


 多分イナヅマは…羽生さんは魔法の強弱を調節できている。


 これってさっきお嬢様に聞いた「魔法恩恵技能(ぎふと)の種類によって使用魔力量と効果は固定されている」って説明と矛盾しているんじゃないか?と思うんだけど…。

前30話分 魔法名称の書き方を改めました気になる方はご確認ください。


31話目にしてタイトル回収です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ