30話 修行の二 【editor】まとめ
諏訪久です。
木ノ楊出流領名来流村七十八番戸在住。
故あって今はご領主様のお屋敷に住み込みで木ノ楊出流領吏員見習い修行中の中央学校初年生。
中学(中央学校)入学前の洗礼の儀で神様から授かった謎の特異恩恵技能【editor】のおかげで木ノ楊出流男爵家に青田買いされちゃいました。
将来の夢は正式な領の吏員として採用され、安定した平和な生活を送り幸せな家庭を築くこと。
吏員見習いとしての主な業務は領主様の御息女、美都莉愛・木ノ楊出流様のお子も…従者であります。
でもそれは世を忍ぶ仮の姿。
ボクの本当の仕事は正体不明の恩恵技能【editor】の正しい使い方を発見する事なのです。
(10話:脱出はできなかったよ 参照)
難しいのは【editor】があまりにも強力な能力だった場合、その技能の所有者である《星》は特に《金星》と呼ばれ県や国の中央へ引っ張り出され色々大変らしく、男爵様が間に入って色々と調整して頂ける手筈になっているものの一抹の不安は否めないのです。
貴族の皆様利害に敏いからなぁ…莫大な利益と引き換えなら庶民であるボクを斬…切るのは吝かではないだろう。
そうなると、どこかの貴族家に婿入りして種馬として一生を過ごすことになるのだろうか。
…まぁ、悪くもないか…いやいやボクはまだ中学生、未来を諦めちゃだめだ!
理想としては領内で程よく活躍できる程度が望ましいんだけれどなかなかうまくはいかないのは世の常人の常。
実力を隠して適度に活躍すればいい?
この僕が生きている世界。シマノクニの社会主義的封建主義社会において上位存在を謀る事がどんなに恐ろしい事かご存じない?
良くて打ち首獄門、悪ければ一族郎党連座。
バレたときの危険が大きすぎてそんな気にはとてもなれません。
イナヅマの存在を内緒にしてる件?イナヅマって領主様が伏し拝む程のお方ですよ、更なる上位存在の意向に沿っているわけだからその件では罰せられる心配はしてない。
あ、能力の偽装申告もイナヅマに罪をかぶってもらえば…。
『へぇっくし!うう、急に寒気が…』
……。
魔導機様付属の昆虫擬態偵察体が風邪ひく訳ない…例の“直結”からなんとなくボクの気持ちを見透かされるようになった気がするのだけれど気のせいダヨネ?
『ん~!?なんのことかなフフフ…』
…気を取り直して、このところ色々事件が続きすぎて滞っておりましたボクの使命である所の本来の仕事を進めたいと思います。
今の所分かっている【editor】のできることと欠点をおさらいしてみます。名称命名、監修はイナヅマ先生です。
出来ること
その一、削除
自分の周囲の魔法発動に伴い開く”窓”の中の紋様(イナヅマは魔法構文と表現)を消し去る事で、その魔法の起動を停止できます。
これは、一般的には【無効】【魔消】【耐魔】【解呪】等の希少な魔法対抗恩恵技能の下位互換とも呼べる能力で、前述の四つの恩恵技能が自動で発動なのに対して意識しないと、作用しない所から下位に位置づけられると考えられます。
これだけだと、恩恵技能があっても使えない役に立たない《屑星》って呼ばれる存在に近いのかな。多分《屑星》確定したら夢の吏員見習い生活が終了しちゃわないか…と心配しましたが。
【editor】の名称から言ってこれだけで終わりじゃないはず。とイナヅマが言ってくれていたとおり新たな能力が発現しました。
その二、複写再現(こぴぺ)
自分の魔法の”窓”を開き、過去”窓”に映したことのある紋様(魔法構文)を任意に再現し発動できます。
これは【小鬼】戦の最中に偶発的に見つけた使い方でまだほとんど試していません。
複写再現自体は【複製】という希少な魔法恩恵技能の互換で大概は直前に体験したもの限定ということらしく、過去体験したものを任意に再現できるなんてのは上位互換も良い所で中央招聘まったなし、《稀星》に《金星》が合わさって《金剛星》(イナヅマ作語)とか呼ばれてもおかしくないとのこと。
このことはお嬢様や家令様にはまだ話していません、もう少し調べてから報告することになるけど、正直、報告したらサヨウナラになりそうな予感…。
その三、超絶!謎の攻撃魔法
これボク自身は全く覚えていないし、自分の魔法の”窓”を遡っても表示される紋様(魔法構文)が灰色のままで起動が出来ない。
記録はされているのだから発動はしたのだろうと思うけど、【黒大躯】とその魔石まで含めて周囲を火炎で焼き払ったのだという、効果の似た魔法に【業火】というものがあるらしいけれどイナヅマはそれとはまったく違うと断言した。
流石先生、千年前から活動しているだけあって博識です。
聴聞会では発動したことすら覚えていないと正直に伝えたけれど、中級魔物を焼き尽くす魔法ってそれだけでRe:中央招聘間違いなし、複写再現と合わせたら《二つ金剛星》?
実際には自由に行使できないのだから能力の一つと数えて良いのか分からないけれど、今回は一応数えておきます。
ボクには過ぎたるものが二つもあり…安定した平和な生活が過ぎ去っていく。ああ、当たり前に生きたい。
その四、欠点
もう克服はしていますがうっかり油断しないように戒めの為。
自分の周囲で魔導具等が複数同時に魔法起動を起こしたときに全てに”窓”が開き、魔力を使いきって魔力枯渇で昏倒してしまいます。
これは複数同時起動かつ自動発動型の魔法を持っている人の持病みたいなものらしく、対応方法は慣れて意識的に同時起動数を制限するしかないとのこと、もうなんとなく制御できるようになっているのでいいのですけれど。
複数同時起動できること自体が一つの才能だそうなのでそういうものだとして受け入れるしかないみたいデス。
その三の超絶…については自由に使えないこと自体が欠点というか欠陥みたいなものなので…そのうちボクは考えるのをやめた。
イナヅマ曰く作動原理不明、使用魔力もお嬢様の【光矢】の一万倍以上はかかるはず…らしいので普通の人間の魔力量では起動不能、使えないと考えた方が現実的なんだそうで。本当にそんな魔法をボクが使ったんだろうか?
Knock! knock! knock!
「はぁい」
自室の扉を呼打された、扉を開けるとお嬢様と莉夢。
いつもなら女中さんが呼びに来るのに、めずらしい。
「お嬢様、ご用でしたらお呼び頂ければ」
「えー、諏訪久が行きたがっていた書庫の閲覧許可がおりたから。迎えに来たのよー今暇だから付き合ってあげるわ」
お嬢様、相変わらず嘘つきだなぁ…あなたに暇なときなんか無いのは知っていますよ従者なんですから。
「よろしいのですか?働き次第とは伺っておりましたが」
「いいのよ、でも私からも条件があるわ」
ヤバい、○○の毛まで毟られる。
「私が同席することと、あなたが読んで理解できたところを私にも教えてちょうだい、噛み砕いてわかりやすくね」
…この場合イナヅマの講義はどうなってしまうのだろう。
『構わないぞ、我々には小窓の会話があるではないか、君の主にも判りやすく解説しよう、あまり詳しいとまた疑われる元だからな、概要の概要ぐらいにしておくが』
『はい、嘘つきにならない程度にお願いします』
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