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【エタってないんだからね!筆力向上修行中】屑星だって生きている~誰か教えて!ユニークスキル【editor】の使い方~  作者: Darjack


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29話 続 九厘戦

 お嬢様所用により今夜の弓訓練がなくなり、ボクは莉夢(りむ)と二人屋内練習場で模擬戦をおこなっていた。


「何を迷っている、諏訪久(すぽぅく)


 莉夢(りむ)が新しい杖、折れてしまったお父さんの杖の代わりに正武(せいぶ)先生から新たに頂いた長杖の一端で床を突いた。この長杖、樹齢四百年の赤樫の芯木から削り出した代物らしい。


 莉夢(りむ)の視線はちょっとキツめだった。


「ごめん、身が入ってなかった?」


 莉夢(りむ)を仮想九厘(くりん)と想定して闘っていたのがバレたか。


「私には剣の形の事は判らないが、受けていて君と剣との繋がりがばらばらに感じられる、小手先の技は上手くなった様だが、【小鬼(ごぶりん)】戦の時の強さが、味方であったときの頼もしさが今は感じられない」


 やっぱりこう言うのは伝わるものなんだな。


 正直に自由形式試合で九厘(くりん)に勝てなくてくやしいと、思っている事を自白した。


「そうだったのか、私は領軍に混ざって模擬戦しているからな、そこまで気が付かなかった。

剣の事は判らないが気になっていた事の本質は判った」


諏訪久(すぽぅく)、キミは九厘(くりん)になりたいと考えているのか?

 九厘(くりん)九厘(くりん)諏訪久(すぽぅく)諏訪久(すぽぅく)だ。諏訪久(すぽぅく)九厘(くりん)になれないしなるべきではない」


 それを聞いていて不意に正武(せいぶ)先生の言葉が蘇った。


『そうさなぁ、自分がどうやったら勝てるか考えてみたらいいかもしれないなぁ』


 どうやったら自分が勝てるか、()()()勝つためにできるすべての事をボクは考え、実践してきたか?


 キレイに勝とうとか。

 カッコよく勝とうとか。


 九厘(くりん)の様に相手を圧倒して勝とうとか。


 じゃなくて


 純粋に、勝つ。

 ただ勝つためにできることは何か。


 先生は最初から答えを教えてくれていた、ボクがそれに気づかなかっただけだ、いや気付けるほど考えても居なかったし、判る程に自分を鍛えていなかっただけだ。


莉夢(りむ)、手合わせをお願いしてもいいかな?」



 ―――――四半時(約十五分)後



 息を弾ませながら莉夢(りむ)はニヤリと笑って言った。


「敵として怖くなり味方として頼もしくなった、こちらの諏訪久(すぽぅく)諏訪久(すぽぅく)らしいと私は思う」


「ありがとう莉夢(りむ)


 吹っ切れた。



 ◇



「はぁじめぃっ!」審判の掛け声。


 と同時に振りかぶる九厘(くりん)、長剣が振り下ろされる。


 でもその先にボクは居ない。


 振りかぶりと同時に一気に間合いを詰める。

 長剣の剣先に比べれば根本に近い場所はたいして速度は乗らない、柄に近い所なら当たってもたいして痛くはない、木剣には刃はついていないんだから当たったとしても切れやしないし、当たらなければどうということもない。


 長剣は重い、慣性が働く分破壊力は大きいが急激な軌道変化は苦手だ、振り下ろそうとした先よりも九厘(くりん)から見て右懐に移動したボクを捉えるのは無理だよ。


 身体のでかいほうが有利な打ち合いなんてまともにやってやらないことにした。


 九厘(くりん)は右懐に飛び込んで来たボクを躱して真正面に捉え直すために左脚を踏み出し上体を右に捻った。そうだよね、その位置関係に持ち込まないと打ち合えない、でも近すぎたから距離調整のため腰が後ろに引けてるよ、結局体重が乗せられない、腕の力で振るうだけのただの手打ちだ。


 隙だらけ。


 ぱぁんッ!!


「あグうッ!」


 カララン!


 苦悶の声と木剣の転がる乾いた音が同時に響いた。


「それまで!」


 審判が割って入った。


 周りの連中も自分達の試合そっちのけでこちらを見ている。


 尻餅を付き、右手の甲を押さえる九輪。

 その喉元に剣先を付き受けるボク。


 ざわ…ざわ…。


「大丈夫か?」


 審判が九厘(くりん)の横へ座り剣をとり落とした右の腕を調べている。


 赤く腫れているが大事は無いはず、木剣の刃側じゃなくて腹側の方で打つ位の配慮はありますので、ボクにだって。


 大事を取って今日九厘(くりん)は湿した布で右腕を冷やしながら見学する事となった。




「おい!諏訪久(すぽぅく)!汚いぞ!九厘(くりん)は強いけどお前にケガさせたコトなんかないだろ」


 えー、結構肩とか腕とか青あざ出来てますけどー。


 案の定、演習場からの帰り道、撫散(ぶちる)智生(ちうぶ)に絡まれた、なんだようお前らだって短剣組のくせして。プンスカ。


「別に九厘(くりん)よりボクのが強いなんて言ってねーし、でも戦場で相手がまともに剣で受けてくれるかどうかなんてわかんねーぜ、盾持ちも居るし槍だって斧だってあるだろーし、長杖でくるかもしんねー、弓兵に剣が届かないとこから撃つのは汚いから近くに来いっていうのか?」チロリと前を歩くお嬢様|の弓に目を向ける。


「そうかもしんねーけどサ、何か違うくネェ?」撫散(ぶちる)が食い下がる。


 美しく戦って散るのは本人の勝手だけどそれを他人に強要すんな、ボクはごめんだ。

 貶されようが侮辱されようが仲間全員そろって明日の朝日が見られたほうがずっといい。


「でもよぅー…結構かっこよかったぜ、切りかかる長剣をサッと躱して、腕をビシッて…峰打ちでゴザル!みたいな」


 腹打ちだけどね。ふっ…智生(ちうぶ)は転んだか。


 ワイワイ騒いでいる中、手に濡れ布を巻いた九厘(くりん)は何も言わぬまま歩いていた。



 ―――――翌日。



 ない…。


 隙が無い。


 大振りはせず中庸に構えた九厘(くりん)は脇と肘を絞り込み、やや紗に構えている。

 前面投影面積が小さくなったうえ横への回り込みを警戒し変化に対応しやすい様に足運びも小刻みで丁寧だ。

 これでは()()()が狙えないじゃあないか…。

 攻めあぐねていると九厘(くりん)めニヤリと笑いおった!きぃぃー!!


 慎重になった九厘(くりん)は以前の様に激しく圧倒的ではないけれど重くズシリとした剣筋に変わった。これでは勝てん…。


 後で聞いたら、元領軍所属で剣を得意としていたけれど怪我で引退した場瑠部(ばるぶ)さんに色々と教わったらしい。


 くそぅ…いつかまた攻略してやっからな。くすん。

今回5話目ですが日常編を前後に分けたので、明日もう1話分更新します。

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