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【エタってないんだからね!筆力向上修行中】屑星だって生きている~誰か教えて!ユニークスキル【editor】の使い方~  作者: Darjack


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10話 脱出はできなかったよ

「……ちゃん、おーい兄ちゃん」


 あー、ここは?

 そっと目を開ければ見慣れた天井だった。


「あっ! 母ちゃん! 兄ちゃん目を覚ましたよー!」

 ボクのオデコの濡れ布を交換してくれていた妹が立ち上がり母ちゃんを呼びに行った。


 もう夜になっている、一つしかない魔導照明に目を向ける。


 ……開く、窓。


 昨日までこんなことは…


諏訪久(すぽぅく)、すまん、私が気付いて忠告しておくべきだったのだ』


 イナヅマサマが殊勝なことを呟いている。明日は雨が降るのかな。


『魔法を行使するためには魔力の消費を伴う。君の【editor】も例外ではなかったということだ』


 あの、魔法の流れが見えるらしい窓、その一つ一つを開くのにボクの魔力を消費していると言う事らしい。


 イナヅマ様によれば今人間の使っている魔法はあくまで体内に蓄積された魔力を消費することによって発生させうる現象であるとのこと。


 体内に残っている魔力を超える魔法は行使できないし、起動できない。


 但し、魔法によっては複数同時起動が可能なもの(イナヅマ様はそういう使い方のできる魔法を複数同時起動(まるちたすく)と言う呼び方で分類しているのだそうだ)もあってボクの【editor】みたいに条件が揃うと発動してしまう(ぱっしぶ?)型の魔法が複数同時に起動した場合、一気に魔力が消費され、魔力枯渇を引き起こし昏倒してしまうのだそうだ。


 魔力(おど)流と魔力(おど)圧が~とか魔導器官抵抗の云々…とか難しいことは判らない。


諏訪久(すぽぅく)、大丈夫かい?」


 母ちゃんがボクの顔を覗き込んだ。


「ダイジョウブだよ、ちょっと休めば良くなるよ」


 少し気張ったけど、しっかりした声を聴いた母ちゃんは少し安心した様だった。


「今日、家令様がウチへ見えられてね。お前に無理させたって謝っていただいてねぇ」


 家令様…。貴い方は庶民には謝らないのが普通なのに。


 家令様はボクの恩恵技能(ぎふと)をずいぶんと評価してくれ、両親が許してくれた上でボクが懲りていなければ、吏員見習いとして雇いたいというお話をしていってくださったらしい。


 ありがとうございます、家令様。


「兄ちゃん、吏員になるの?ヤッター」


 妹は、るんったった♪るんたった♪と小躍りしている。


 まぁ普通、家人の誰かが吏員になるなんていったら、この村の庶民からすれば大分出世扱いだ。


 妹だって嫁入り先の選択肢がずいぶんと広がる。

 母ちゃんだって村の共同調理場で鼻が高いだろう。


「無理しないでおくれよ…王都にいたときアンタは体が弱かったんだから…」


 昔の話だ、今はこの村の環境のおかげで体力もついて来ているし力だって…九厘(くりん)辺りには敵わないのかもしれないけど。


 遅い晩飯を食べながら、当たり障りの無い範囲で今日の話を家族とした。


『よく寝た方が魔力の回復も早い』

 イナヅマ様の助言に従い早めに寝ることにした。明日、またお屋敷へ行けるかな。


◇◇


 朝から雨だった、雨の日は学校は休みになるので家で親父の仕事の手伝いをした。

 ゲンコツを2発貰った。


 更に翌朝、雨は昨日の夕方上がっていたので朝には道はそこそこ乾いていた。

 そして信じられないことが起こった。


「なんだよぅ…」


「いや…おまえら…わざわざ御代(みだい)町から名来流(なくる)村まで来るなんて、中学校とは逆方向じゃないか」

「ウルセェ、何となくサンポしたかったんダヨ」


 朝、学校へ向かうために家を出たら外に三人組が居た。


 何気に初めての集団登校。にやけてくる顔を必死で冷徹面に変える、キャツラに見られてはナラナイ。


「なんかよぅ昨日ぶっ倒れたらしいじゃねぇか」


 歩きながら、九厘(くりん)が心配そうに聞いてきた。


「ああ、うん、ちょっとね、家令様のご用だからあまり話せないんだ」

「そっかー、なら仕方ないな」


 その後、魚釣りとか虫取りの穴場とかとりとめのない話をした。


 ごめん、襤褸(ぼろ)は出したくないんだ。



 珍しいことに初年生の教室にお嬢さまが居…らっしゃった。


「あによぅ…アタシが教室にいちゃいけないの?」

「イエ、オハヨウゴザイマス、オジョウサマ…」


 いつも一番後ろに座っている九厘(くりん)のさらに後ろに新たに二つの机が増えていた。


莉夢(りむ)が授業を受けるのよ、アタシが近くに居ないと護衛できないじゃないの」


 普通は逆じゃないでしょうか? オジョウサマ。


 お嬢様は中央学校の初年生程度の勉強は既に終えられているので授業へは出なくても差し障りはまったくない。


 意外だったのは莉夢(りむ)嬢はこれまで学校に通ったことがなかったらしい事だった。


 授業中、莉夢(りむ)嬢の世話をあれこれ焼いているお嬢様を見ると素敵に輝いて見える。


 ナラヌ、ダマサレテハナラヌ。


 そして放課後、再びお嬢様軍団に拉致されたボクは三度(みたび)目の家令様とのご拝謁を迎えるのだった。


◇◇


「具合はどうだい?諏訪久(すぽぅく)、魔力枯渇は苦しかっただろう?

 《魔導小板》での調査結果ではその年齢にしてはかなり魔力がある様子だったから油断してしまったよ。


 魔法を使わせている私が気付いてあげられなくてすまなかった」


 いきなりの謝罪、恐縮です。


「いえ、大丈夫です。あの、両親の件ありがとうございました」


 家令様の説得のおかげで我が家族会議において。


 母ちゃん:賛成1

 妹(参考票):大賛成1


 棄権1


 と賛成大多数によりボクの野望(ゆめ)の第一歩である“吏員になる”が、見習いとはいうものの中央学校在学中という早期に実現の兆しがもたらされたのだ。感謝しかない。


 契約書と言ってもあくまで見習いなので“何かあったら相談して解決”的なゆるゆるなモノ にサインをした。

 この契約の本質(みそ)は“業務上知り得た(残念な←諏訪久(すぽぅく)空目)事柄についての一生の秘匿義務”の部分だと個人的には思っている。


 両親の署名(さいん)は既に記入済みの様だ、これで晴れて“吏員見習い”として正式採用されたことになる。



「さて、諏訪久(すぽぅく)吏員見習いの仕事なんだが…」


 ずしり、と両肩に重いモノが圧し掛かった。


「ふふふ…契約に署名したわね?」


 さっきからボクのうしろの百…いや、後ろにたむろしていた残念さ…いやお嬢様と栗色肌金髪金眼の美丈婦。

「お嬢様、これから吏員見習いの仕事がありますので…」


 後ろからボクの両肩に手を置いて体重をかけてくるお嬢様をやんわりとたしなめる、お子様の相手をしている暇はないノデス、なんかイイニホヒが…ふうわりと漂って…くるがダマサレナイゾ、カツマデハ。


「あー……悪いが諏訪久(すぽぅく)。多分君は書類整理とか雑用的なものを期待していたかもしれないがそちらは手が足りていてね」


 なんとなく気まずそうに話す家令様。言葉にいつものキレが無い。


「君に取り繕っても無駄だろうから敢えて言おう、君は未来の《星》候補として我が木ノ楊出流(きのゃんでぃる)男爵家に青田買いされた。


 今後判明する恩恵技能(ぎふと)の能力如何によっては国や県からお呼びがかかるだろう。


 そのときは男爵家が寄親として色々と協力(いっちょかみ)させて貰うつもりだ。


 なので当面の君の仕事は正確な恩恵技能(ぎふと)の掌握ということになるが、対外的にそんな説明はできない。


 そこで表向きのお仕事はお嬢様付きの従者としての採用ということになる」


 淡々と語る家令様の事務口調が辛い。


「先日も言ったけれど今の君にはまだまだ力も体力も足りない。

 吏員に必要な知識や経験もだ。ただやみくもに勉強するよりは、お嬢様付きとして屋敷に出入りして実際に吏員の仕事を間近で見て学ぶというのはそんなに悪い話ではないと思うよ、お嬢様次第だけれどお屋敷の図書室だって閲覧できるかもしれない」


 あー。

 お屋敷の図書室は魅力的だなー。

 たしかに今のペースで読んでいたら中央学校の図書室の本を読みつくすのに半年もあれば事足りてしまう。


「えー、あたしあんな訳の分からない“魔素と魔導進化論”とか“魔導器官解体新書”なんか読みたくないわよ?」


『受けたまえよ、諏訪久(すぽぅく)(`へ´)b』


 突然イナヅマが割り込んできた。(あ、コソバユイので以前通りに呼べとのご本人からのお達しです)


『“魔素と魔導進化論”と“魔導器官解体新書”は魔法を極める為には必須となる知識が豊富だ、三割程誤りがあるがそこは私が補完しよう、その方が楽……いや、魔導士としての向上が見込める。


 官吏としての評価が増せば君の野望とやらの達成に貢献するのではないかな?』


 チロリとお嬢様に視線を向ける。


「……お屋敷の図書室の閲覧はお願いできるのでしょうか?」


「業績によって考慮します」


 腕を組んだお嬢様がボクをねめつける。


「お願い致します。私の主君(まいろぅど)。こんごともよろしく」

 深々と頭を下げた。


 こうしてボクは従者となった(たましいをうった)

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