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side オリヴィア

ちょっと鬱?かも?

「ねぇ私の可愛いオリヴィア。あの子(シャーロット)は神の子なんかじゃ無いわ。悪魔の子なのよ。

 この世界では、お母様()以外を信じては駄目よ。」




 産まれからずっと子守唄のように、お母様からそう囁かれて生きてきた。



「あの力も、煤のように黒い瞳や髪も、全て呪いなのよ。あの子は悪い子だからいつか必ず天罰が下るわ。」

「ああオリヴィア可哀想に。血が繋がってないとしてもあんな女の妹だなんて嫌よね。でもどんなに辛くても、今は死んでは駄目よ。何があっても、お母様が守ってあげるわ。」

「あの女、きっとオリヴィアの事見下してるわ。勝った気になっているのよ。でも、オリヴィアの方がずっと賢いし頭も良いもの。気にすることは無いのよ。」



 幼い私にその言葉の全てが理解できたわけでは無いけど、シャーロットが悪だと言うことくらいはわかる。



 お義姉さまは悪い、私は良い。


 私の小さな頭の中の世界はお母様の言う事だけが真実で、

 それを疑う余地などなかった。



 そんな中訪れた、3回目の冬。


 私がお日様の当たる窓辺で、いつものようにお人形遊びをしていると、お義姉さまが人形を抱えて歩いていた。

 私はそれまでお母様以外の誰かと一緒にお人形で遊んだ事が無かったから、身近に同じ趣味を持つ人がいる事に心を躍らせた。


「おねえさま、そのにんぎょう…」

 とっても可愛いね!一緒に遊ぼうよ、私のお人形も貸してあげるわ!


 そう言うつもりだった。

 だが、私に気付き振り返ったお義姉さまの柔らかな笑顔とそれに共鳴して咲く花々に、お母様の言葉を思い出した。


『あの力も煤のように黒い瞳や髪も、全て呪いなのよ。』


 そうだ。

 お義姉さま(この女)は、悪。お義姉さまと私が喋っていると、お母様が悲しんでしまう。


 そう思った。



 だから、「なあに?」と用件を問う義姉に、こう言った。


「そのにんぎょう、あんまりかわいくないけど、わたしがもらってあげる。

 ねぇいいでしょ?おねえさま?」



 私なら、こんな事言われたら怒るし、一緒に遊ぼうだなんて全く思わない。

 きっとこれで私たちはずっと仲良しにならないで済む。


 少し胸がズキンと痛む。


 なのにお義姉さまは、

「そうね。こんな物で良ければ、どうぞオリヴィア。」


 と、あっさりそれをくれたのだ。

 沢山のフリルがついた小さなドレスを纏う()()は、私の元へ渡った途端何故だか少し不気味に思えた。


 もう用は済んだとでも言うように部屋から出て行くお義姉さまの後ろ姿を横目で見ながら、私の腕の中にあるこれについて考える。


 どうしよう、これ(お人形)を見たら、お母様はどんな顔をするだろう。

 ひどく歪んだ顔をするお母様がありありと眼に浮かぶ。


 まずい、お母様が、悲しんでしまう。


 お母様はただでさえ『悪魔の子の義母で不幸』なんだから、私がもうこれ以上悲しませるわけにはいかないんだ。


 どうしよう、どうしよう。

 これを、どうにかしないと。


 きょろきょろと周りを見渡すと、暖炉でパチパチと燃える炎が目に入った。

 普段は近づいてはいけないと言われている暖炉だが、さっき義姉は去ったからこの部屋には私以外誰もいない。


 しめた、今だ。


 私は人形を炎の中に放り込み、近くにあった火かき棒でさらに奥へと追いやる。


 端から黒く焼け焦げて行く人形を尻目に、その部屋から走って逃げた。



 その後は、自室のベッドに飛び込んで、声を殺して泣いた。

 しつこいほど喉の奥からこみ上げてくる 今まで感じた事の無いような苦く複雑な感情を何度も何度も飲み込むのに必死で、それが何の涙かなんて考える隙も無かった。


 部屋にいた侍女がオロオロしていたので、おばけがいるかもしれないと思ったら怖くなった、と嘘をついた。

 それを聞いた侍女は、にっこり微笑むと私の背中を優しく撫でてあやしてくれた。


 怖い怖い1日の中で、それだけが心の拠り所だった。




 次の日の明け方、人形がちゃんと燃え尽きたかが心配になり、例の暖炉の部屋に来た。


 ドアを開けて覗いてみる。


 暖炉の火は消えていて、その前には妙に小さな人影がひとつ。

 そしてまだ暗い空を映す窓からは細い蔦が何本も部屋に向かって伸びていて…


「オリヴィア?」

 その人影がゆっくりとこちらを向く。

 しまった。お義姉さまだ。何故こんな時間に?


 逃げようと思ったが、怖くて足がうまく動かない。



「オリヴィア、もしかして私があげたお人形って、これかしら?」


 お義姉さまが、真っ黒な塊を運ぶ蔦と一緒にどんどんこちらに近付いてくる。



「駄目じゃない、暖炉に近付いたら。火傷しちゃったらどうするの。

 大丈夫?怪我はなかった?」


 蔦が絡まる黒い何かは、燃え残った人形だった。


「素材が素材だから上手く燃え切らなかったのね。

 これは蔦に海にでも捨ててきて貰うわ。お父様に見つかったら面倒だもの。


 オリヴィア、これと同じ人形を用意しましょうか?」


 その言葉を聞き終わる前に、私はその場から走った。


 どうしてお義姉さまは私が何をしても怒らないの?

 私に優しくするの?

 怖い、怖い、怖い、怖い。



 私の目にはお義姉さまのそれらの行動は今まで見てきた何よりも、気味が悪く、恐ろしく写った。


 お義姉さまは異常だ。


 恐怖でまともに動かない頭の中で、お母様の声がこだまする。

『あの女、きっとオリヴィアの事見下してるわ。』


 そうか、お義姉さまは私の事を見下しているのね。


『勝った気になっているのよ』

 そうよ、きっとそうだわ。


 きっとお義姉さまは、(敗者)の事なんてどうでもいいの。


 だから、私に対して負の感情を向けない。


 お義姉さまは異常でも特別でもなんでもない。

 ただ、私を見下しているだけ。


 悔しい、悔しい、悔しい。








 それから何日経っただろうか。

 今日も、お母様が私に囁く(呪いをかける)


「ねぇ私の可愛いオリヴィア。あの子は神の子なんかじゃ無いわ。悪魔の子なのよ。

 この世界では、お母様以外を信じては駄目よ。」

少しの間、更新おやすみします。

次回は気長にお待ちください。

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