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RPG

作者: SMILE

 この世界には魔王がいる。魔王の名はドドール。奴はこの勇者アシュールが絶対に倒してやる。僕がこの世界の平和を取り戻す。


 正直なところ、奴がどんな悪事をしたのか僕はよく知らない。しかし、この世界の状況。世界のいたるところで戦争が起き、貧困にあえぐ人びと。それに動物たちの生態系もおかしくなっている。奴の力がはたらいているのは間違いないだろう。


 アシュールは決意を胸に旅に出た。


 アシュールは、もともとある村の村長の息子だった。昔から正義感の強い子供で十歳の時すでに魔王を倒すことを決めていた。村長である父親はそんな息子のことを頼もしく思い、息子を勇者にすべく、剣術を習わせた。アシュールはみるみる腕をあげ、十五歳の若さにもかかわらず、大きな町の道場にも彼に敵う者はいなくなった。このことで、当初は反対していた彼の母や、「単なる親馬鹿」と冷やかしていた村人達も「もしかしたら……」と思わずにはいられなかった。


 そして、十六歳の誕生日の朝。アシュールは父と母に別れを告げ、旅に出たのだ。


 ドドールの居場所は分かっていた。あまりにも有名だった。そこは二十数年前までは世界の中心となる町だったがドドールが滅ぼし、住み着いたので、今では廃墟となっている、アシュールは父と母からそう聞いていた。


 アシュールの村はドドールの居城からは遠く離れていた。馬と船を乗り継ぎ、到着に一ヶ月を費やした。


 着いてみると、その町は聞いていたほど廃墟になってはいなかった。確かに老朽化は進んでいたが、ここに住めと言われれば、住めないほどでもない。アシュールは警戒しながら町を進み、目的の場所にたどり着いた。大きな城だった。


 アシュールは城門の前に立っていた。この城にドドールがいる。それを思うと武者震いがした。するとどこからともなく、しわ枯れた声がした……。


「この城には門番も護衛もおらぬ。早う、我のもとへ上がってまいれ。」


 罠かもしれない。アシュールはすぐにそう思った。アシュールは辺りを見回すと、注意深くゆっくりと門を開け、体を滑り込ませ、周りに気を払いながら城に忍び込んだ。


 しんと静まり返った城内はあまりにも不気味だった。まだ昼だというのに薄暗く、かび臭い廊下を歩いていると、全身を鎧に包んだ騎士が現れた! ……と思ったが飾りの甲冑だった。どうやら罠のある様子もない。アシュールは警戒しつつ進み、ついにドドールのもとにたどり着いた。


 ドドールはおもむろに立ち上がって言った。


「やっとやってきたか、ようこそ我が城へ。」


 ドドールは、ぼろぼろの服をまとった老人だった。しかし、老人というには動きが素早い。ボサボサの髪と伸びっぱなしの髭が彼を年齢以上に老けて見せているのであろうか。魔王というよりも世の中に見捨てられた老人と言ったほうがしっくりとくる風貌だ。


「久しぶりの客人だ。何も無いが、話でもしないか。」


「なんだと!?」


 あまりにものんきなドドールの言葉にアシュールは怒り、飛びかかった。


「なにをいまさら!覚悟しろ魔王!!」


 ギィン!とアシュールの刃をドトールは自分の錆びた剣で受け止めた。


「そうだったな…、我は魔王。しかし、お前は何だ?勇者か?」


 ギィン!ドドールの剣で押し返されたアシュールは叫ぶ。


「そうとも、僕は正義の勇者!邪悪なお前を倒すためのな!」


「愚か者め…邪悪だの正義だの、立場の違いでしかないのだ。そんなものは…」


 魔王の名に違わずドドールは強かった。アシュールはかつてないほどの苦戦を強いられた。


 ギィン、ギィン、ギィン、二人の剣を交える音だけが城の中に響く。すでに二人とも傷だらけになっていた。


 ドドールは何かを思い出すようにつぶやいた。


「思えば、長くここに居たものだ。自ら死ぬこともできず、こんなところに。」


「だから、僕が倒してやる!とどめだっ!魔王!」


 わずかな隙を突いてアシュールの剣がドドールの胸を貫いた。

血だらけのアシュールは倒れこみながら、息も絶え絶えに言った。


「ど、どうだ!魔王!」


「ああ、まいったよ…。強いんだな…、君は。」


 そして、ドドールは最期につぶやいた。


「思えば私は、私を倒してくれるものを待っていたのかも知れない。こんな世界になど…興味はなかった。」


 こうして魔王は倒された。世界には平和が訪れたと世界の人びとは喜んだ。


「アシュール万歳!」


「アシュールは英雄だ!」


 世界中から贈られてきたお礼の品々をアシュールは貰い、立派な城を建てた。




 そうして、アシュールが魔王を倒してから数年が経った。が、人びとの暮らしは楽にならなかった。なぜなら、世界は変わったが人びとは変わらなかったからだ。


 人びとは口々に言った。


「どうして俺たちの暮らしは楽にならないんだ。」


「魔王は死んだはずなのに。」


「アシュールはいい暮らしをしているのに、俺たちはどうだ。」


「きっとアシュールの奴が悪事をはたらいているに違いない。」


 人びとは自分たちのことは棚にあげてアシュールに不満をぶつけた。

こうして、新しい魔王が誕生した。




 そしてさらに十年が経った。



 この世界には魔王がいる。魔王の名はアシュール。奴はこの勇者ノダリスが必ず倒してみせる。俺が世界を救うんだ。ノダリスは大きく息を吸い込んで、道を歩き出した。

                                    


人間、自分で考えて動かなければ何も変わらないな。とふと思ったときに書きました。

一言でもご意見頂けたら、幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] いえ、反対意見を申し上げます。魔王を倒せば、必ず変わるはずです。この思想はおかしい。物語の形として、ありですが、まだ練られていないようです。
[一言]  文章の始まりには空白を一つ空けることをオススメします。ケータイ小説などでよく使う、一行文(。が付く度に空行を幾つか入れる文)などを目指すならば別ですが。  そして「!」と「?」の後ろにも、…
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