表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/22

三条雫

 三条は重力に押さえつけられた男をチラリと見て、その目をすぐに良照へと向けた。

 良照は振りかざす力に似合わない涙を、ポロポロと流していた。


 あまりの出来事に三条は混乱していたが、エージェントには標準装備として、混乱や錯乱時、強制的に冷静にさせるナチュラルコードが書き込まれている。ゆえに三条は即座に冷静になり、そして心の内に、新たな感情を芽生えさせた。

 それから、良照をなるべく刺激しないよう、いつもとは違う声色で話しかけた。いつもと同じ声色だと、混乱させ拒絶される可能性があると感じたからだ。


「葉山君……、あなた……」

 動揺を装った声と間。

「三条先輩……」

 三条の予想通り、良照は冷静さを残しながら自分を見た。場のイニシアチブを良照に取らせ、喋らせることによって、情報を仕入れる算段だった。

 特に今の状況では、良照の考えを知ることが、絶対の条件である、三条はそう考えていた。


 良照はズズッと、鼻水をすすり、袖で涙を拭く。

「すみません」良照は謝った。「これから、この人と先輩の今回の記憶を消します」

 超重力によって動けない男と、膝をつき肩で息をする三条に向かって、良照は一歩進んだ。


「理由を聞かせてくれるかしら」三条は己のナイフに一瞬視線を落とすも、拾うことなくそう聞いた。

「この虚数コードは、絶対に秘密にしなきゃならないんです」

「どうして? 公表すれば、多分あなたは何でも思い通りにできるくらい、たくさんのものを手に入れられるわ」

「……でも、争いが起こります。多分。父さんはそう言っていました、これは危険だと」


「葉山良昌が? そう、それはきっとその通りね。そしてそれを手に入れたところが勝つわ。まあ、その後、それが奪取されるかなにかして双方が持てば分からないけど。だから、記憶を消すの?」

 良照に問いかける口調は、決して挑発的なものではなく、少し苦しさを滲ませるもの。

 怪我とあいまって、それらに演技は何一つ感じられなかった。

「はい。……すみません。でも、今回のことだけです、消すのは」

 良照は一瞬表情に罪悪の感情を浮かべるも、そう言って、良照は男の近くにしゃがんだ。


「ぐ、ぐおおおおお、や、やめ……ろ……」

 男は必死に立ち上がろうと体に力を込めた。しかし体は1mm足りとも起き上がらない。持っている銃もナイフの向きすらも、変えることができなかった。


「すみません」

 良照は、男に触れた。

 触れている良照には、何一つ重力はかかっていない。


「ハック――」良照は呟く。

 今良照は、男のナチュラルコードを編集している。

 加奈に対してはPCとケーブルを用いて行ったが、実際には触れるだけでも可能だった。ただPCだと、画面上に表示されるため、見やすく、キーボードで打ち込まない限り変更されないのに対して、こちらは頭の中の情報領域にしか表示されないため、見難く、キーボードなどの入力媒体がないため、ふとした拍子に変更してしまい気づかないという危険性があった。

 よって加奈には使わない。

 だが、緊急事態の今は別だった。


 そしてもちろん、良照はこちらでも失敗はしない。


「あ……、が……、あ……」

 男は白目を向いて気絶した。

 それは記憶を書き換えられたからではなく、良照が他のコード部分の数値を変更して昏倒させたからだった。

 あと数時間は絶対に目覚めない。


 良照は立ち上がると、三条を見た。

「私達にとって、記憶は命よりも重要なもの。殺されてれば何かあったのか分かるけど、記憶が消されて生きていたら、敵の接近に気付けないから。だから、プロテクトは何重にもなっているはずだけど……、消せるのね」

「はい。ナチュラルコードのプロテクトは、虚数コード側から経由すれば、無意味になりますから、問題ないです」

 三条は、良照が何を言っているのか、技術者でないため分からなかったが、それが間違っていないことは分かった。事実、男は完全に気を失っているのだから。そして、自らの策略が上手くいっていることも分かった。


 腕の出血を自分でチラリと見ることで、怪我をしていることをさりげなく良照にアピールし、三条は言う。

「私達の記憶を消して、あなたはまたいつもの平穏に戻るの?」

「……」

「いつも通りに学校に行って、加奈ちゃんと仲良くして、ここであったことを全て忘れて?」

 良照は歩みを止めた。その言葉によって、血と加奈が、良照の中で混ざり合う。


 平穏が遠ざかってしまったようで、良照は不安にかられた。しかし、いくつか逡巡を見せた後、それでもハッキリと言った。

「……この虚数コードは、僕が父さんに見せたんです。父さんは、これはあっちゃいけないものだと言っていました。でも、父さんはあの時追い詰められていたから、きっと発表してしまったんだと思います。それは、僕のせいだ。父さんが死んだのも。だから、どこかへ送信された虚数コードを回収して、そして父さんを見つけた犯人を……」

 良照は目を瞑り、開けると、再び歩き出した。

 それが、良照の本心だと、三条は知った。


「そう」

 三条は心の中で微笑んだ。


「1人で?」三条は言う。その声は、先ほどまでと違う雰囲気を帯びていた。

「……はい」

「できると思う? その虚数コードの中には、人探しに使えるものはあっても、過去を覗き見るなんてものはないと思うけど。新たに作るのかしら」


「虚数コードはもう作りません。約束したんです。でも、探します」

「どうやって? あなたは世界中の暗部について何か知っているの? 知る伝手を持っているの? エージェントでもずっと分からなかったことを、あなた個人で調べて辿り付けるの?」

「……それは……」


「あなたはきっと、何の情報も集められない。反対に、エージェントはあなたの情報を集められる。急に積極的に行動を始め、父親の痕跡を追うようになった。なら確実にその切欠がある、その切欠は? 誰もが思うでしょうね、あなたに虚数コードが送られた、と」

「僕に送られることはあり得ません。調べたら送られてないことも分かります」


「大事なのは事実じゃなく、それをエージェントがどう思うか、それだけよ。送られているかもしれない、疑わしきは入念に調べる。あなたは本当に持っているのだから、詳しく調べられたなら、きっとどこかでボロを出す。その時また記憶を消して対処したとしても、それだと結局切欠は分からないまま。エージェントの理念上、また調べるわ」

 三条は続けて言う。

「そうして、何も出てこないことが続けば、疑わしき点は? もちろん、記憶が消されている可能性でしょうね。検証すれば、どこかに曖昧なほころびが見つかる。エージェントは確実に、あなたの知り合いの誰かを人質にとるわ。最有力候補は、もちろんあの子ね」

「――っ」


「それか、あなた自身を直接拉致するか。あの虚数コードを使えるなら、捕まえることは無理だけど、でも隠すことも無理よ。必ず全てが知られる。そうなれば、やっぱりあなたの知り合いは人質にとられるでしょうね。100人いれば、100人全員。エージェントにとって、命は成果よりも随分軽いわ」

 良照は歩みを止めて、押し黙った。


「それでも、やるの?」

 それを見て、三条は最後にそう付け加えた。


 良照は優しい。こんな状況になっても、2人を殺そうなどという考えは、微塵も浮かんでこない。それで解決するのだとしても、そんな選択肢は良照になく、どんな状況になったとしても、良照の優しさは失われない。

 だからこそ、良照はその答えを口に出せないでいた。しかし――。


(やらなきゃ、僕が。この虚数コードを)

 心の中では決まっていた。


「3F3電磁管制」

 良照は虚数コードを使用した。それは先ほど紐を解くために使った虚数コード、全ての電気製品をコントロールするもの。

 本来は、避難誘導やロックされてしまった扉を開けることなどに使うのだが、今この時においては、三条や男が持っている電子製品を破壊する用途で使われた。


 パチリと電気が駆け抜けたのを感じた三条は、胸ポケットから電子機器を取り出した。それには、再生ボタンがついている。録音機器だった。三条は再生ボタンを押したが、音は流れない。

「やるのね」

 それを手放し床に落とすと、三条は言った。


「はい。でも、さっき三条先輩が言ってたようなことは、絶対にさせません、絶対に見つからないようにやります。絶対に、絶対に――」

 良照は言い切り、三条の傍に立ち、その肩に手を触れた。


「1つお願いがあるの。昏倒させるなら、その男より先に目が覚めるようにしてくれる? 傍で無防備に寝てたら、乱暴される可能性もあるでしょう?」

「……分かりました。……、ハック」

 三条のナチュラルコードの編集が始まった。


「――う、くぅ――、んああ」

 三条は、そんな風に悩ましげな声を少しだけ上げ、すぐにその場に倒れた。


 好きな人がそう言って倒れたというのに、良照は少しも浮かれはしない。

「……父さん……」

 声は、涙声だった。今日だけで色々あり過ぎた、良照の心は限界を越え、ボロボロになってしまっていた。


 ふらふらと、そんな言葉が最も似合う足取りで、倉庫を出て行く良照。倉庫から出た目の前には海があり、横を見れば工場が立ち並んでいた。

 海の近くの工業地帯と言えば、良照の頭には1つしか候補がなく、家からそう離れていない場所だと気づいた。事実その通りで、自宅までは、歩いて30分と少しの距離だった。

 しかし、良照の足取りは重く、夕陽の出ていた空は、自宅に辿り着いた頃には、星空に変わっていた。


 玄関の前に立つと、自動で鍵が外れ、扉が開いた。中へ入ると扉は自動で閉まり、施錠される。

 良照は靴を脱ぎ、リビングに入った。


「おっそいっ」

 そこには、加奈がいた。ソファーに座っていたが、立ち上がり、良照を睨みつけた。


 2人掛けのダイニングテーブルに、料理は2人分並んでいた。今日のメインメニューは厚切りのトンカツ。しかしそれは、すっかり冷めてしまっていた。

「何時だと思ってんだよっ。ずっと待ってたのに、メールくらいしろよっ」

 加奈は怒りをあらわにしながら良照に向かってずんずん歩き、そう言った。


 加奈は怒っていた。

 しかし、長い付き合いの良照には、それが苛立ちから発せられた怒りでないことは、すぐに分かった。「心配したんだからなっ」

 心配の裏返しだと、すぐに分かった。


 その瞬間、良照は現実に戻ってきたような気がした。

「……加奈」

 ポツリとそうもらすと、良照はボロボロと涙を流し、文字通りになき崩れた。


「ううう、ああああ、あああああ」

 床に膝をつき、手をつき、良照ははばからず泣いた。


「――ちょ、ちょっ、良照? おい良照?」

 加奈はすぐに良照の傍に駆け寄った。加奈も加奈で、長い付き合いの良照に、何かあったことはすぐに分かった。

 それが何なのかは分からなかったが、ただ事でないことだけは、よく。


 加奈は良照の隣にしゃがむと、その背中を撫でた。スポーツ少女だからか、その力は非常に強い。

「大丈夫、大丈夫だからな」

 だが、声はとても優しい。


 加奈の中で、良照が泣くイメージはほとんどない。小さい頃こそ、道端でこけたり、虫を近づけたり、一人はぐれただけで、よくわんわん泣いていたが、ある時を境にピタリと泣かなくなった。

 それを頼もしくなったとか、強くなったとか、そんなことだと加奈は思っていなかったが、それでも良照が泣くことは、ここ数年全くもってなかった。


 父親が死んで以降、良照が泣いているところを、加奈は見たことがなかった。


 だから加奈は、良照の父親が亡くなった時のことを思い出した。

 あんなに明るく元気だった良照は、両親のどちらも失ってしまったことで、随分塞ぎこんでしまった。

(外に連れだすの、スゲー大変だったっけ。……でも、あれから本当に、ずっと泣いてなかったよなあ、泣き虫良照だったのに)


「大丈夫だぞ、な?」

 加奈はさらに優しい口調で良照に声をかける。

「あたしはどこにも行かないから」

 体をピタリと寄せて、頭をくっつけて。


「……加奈」良照は加奈を見て、そして縋りついた。

「なんだよもう、――とと」


(うわ、力強――)

 そんな良照を、加奈は受け止めようとしたが、幼い頃とは違って良照の力は予想以上に強く、加奈はあっけなく押し倒された。

 普段から加奈は、自分は良照よりも力持ちだと思っており、押し負けることは絶対ないと自負していたため、その結果は少しショックで、そして十分に性差を意識させるものだった。顔は一気に真っ赤になり、変な想像が頭を駆け巡る。


 しかし、肩に顔を埋めるようにして泣き続ける良照を見て、そんな考えは吹き飛んだ。

(つむじんとこ、髪がはねてる。変わんないなあここのクセ)

 加奈はほんの少しだけ笑って、今度は声だけでなく、顔までも優しいものに変えた。本人は良照の姉を自称しているが、その顔は姉のものではない。それを加奈も分かっていたが、それでもやはり優しい顔のまま、そして今度は手の力すらも優しいものに変え、良照の髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら頭を撫でた。

「大丈夫、大丈夫だって。あたしはどこにも行かない。ずっと、ずっと傍にいるから」


 数十分経って、泣き止んだ良照は、顔を真っ赤にしながら、からかってくる加奈と共に冷めた食事をとった。


 加奈は、良照にとって、途方もなく昔からずっと一緒にいる存在だった。

 そのため、自らが監視対象であり、学校の中さえエージェントがいたと知った今となっては、唯一信じられる人でもあった。


 それは正しい。

 加奈はテロ組織やスパイ組織、エージェントに一切関係のない、一般家庭の子供で、虚数コードについては、都市伝説としてしか知らない。

 良照の父がその研究に携わっていたことも、良照が虚数コードを作ったことがあることも、一切知らない。


 もしそれを知ってしまったそしても、加奈にとっては今の生活を変えるようなものでもなんでもない。

 良照が虚数コードを作れて、ともすれば世界を変えられるのだとしても、それからも加奈は、変なナチュラルコードをネットで購入しては、良照にお願いとやってきて、こうやって良照の家でご飯を作って、そんな生活をする。

 何も分からなくなっていた良照にも、それだけは自然と分かった。


 だからこそ、良照は思った。

(加奈は、絶対に巻き込まない。絶対に)

 それは、良照にとって、何よりも重い決意だった。


 ゆえに、加奈は良照が虚数コードを作ったことは知らない。

 それを知っているのは、良照、ただ1人、だった。昨日までは。

 今日で2人増えて3人になり、2人減って1人になり、そして、1人増えて、今は2人になった。


 良照が倉庫を出て数十分後、倉庫の中で、1人が目覚めた。

「……、ここは? ――、この男、指名手配の?」

 三条だった。


 三条は、男よりも早く目が覚めるように、と良照に伝えていた。ゆえに、随分早くに目が覚めた。

 ただし記憶は完全に消されている。

 この倉庫であった出来事、良照が誘拐されたこと、誰かが良照の周辺を嗅ぎ回っていたこと。つまりは今回の事件にまつわる全ての記憶を、三条は失っていた。そのため、現状が分からなかった。


「エージェントに連絡――、いえ、この状況は記憶が消された状況よね。なら……」三条はそう言って、胸ポケットを探るが、レコーダーは床に置かれていたことに気づいた。

 しかしレコーダーは1つではない。三条はもう3つほどを服や胸の間から取り出した。


「全部駄目ね。電磁波でやられているのかしら」

 再生ボタンをそれぞれ押してみたが、全く機能しなかった。しかし三条は笑った。その笑いは、苦笑いなどではなく、込み上げてくる笑いを堪えきれないとでもいうものだった。

「戦いの痕跡が至るところに残ったままの隠蔽。プロの仕業じゃないわ、杜撰過ぎる。だから犯人は、プロじゃなくて、でも私と元エージェントナンバー3の男相手に勝てて、記憶まで消せる人間。そんな人間、いるはずがない。いるはずがないんだから……」三条は言う。「あり得ないものを持っている」


 三条は自らの口に手を入れた。三条の小さな口に、手は些か入り辛かったが、しかしその手は奥歯を摘まみ、そのまま抜き取った。

 取り出した奥歯は、よく見れば、作り物であることが分かる。質感などは歯そのものだが、上と下で構造が分かれており、パカっと開くようになっていた。その中には、一枚の円盤と針があった。

 三条は、円盤を手動でクルクル回していく。


『2077年、6月16日、行動を開始します』

 そこからは、三条の言葉が流れた。


 それは、電気的な録音媒体ではなく、レコードと同じく、音の振動によって傷をつけ、それで録音、再生するものだった。

 電磁波では、破壊されない。エージェント達の中では、その存在は周知されてたが、良照が知るはずもない。特に2060年代生まれの良照にとっては、電気を使わない録音媒体など、想像もしないものなのだから。


 三条は、再生箇所を、丁度記憶の欠落が多数見られる、放課後まで進めた。そしてその言葉を目を瞑って聞いた。一言も聞きもらさないように。

 心臓がバクバクとはねているのが自分でも分かった。それほどに興奮していた、しかしそれは仕方のないことだった。


 そうして三条は、歓喜を得た。

 大きく笑って、そして、巻き戻し、もう1度再生した。


『だって、それは……、僕が作ったんだから』


「ああ……」それを聞いた三条は目を瞑って、そんな感動の声をもらした。「神様……」


 三条はそれから素早く行動した。

 まずしたことは、男の銃を奪い、その歯を破壊する行為だった。


 そして、さらに男の懐から薬品を2つ取り出すと、それを男にかけた。瞬間、それはピンク色の鮮やかな炎を発生させた。

 男の服は燃え、体すら燃えていく。

 スプリンクラーが作動するも、炎は一向に収まる気配を見せず、むしろ倉庫全体を飲み込んでいった。


「こちらエージェント329、指名手配犯A-59と交戦。向こうの自殺でけりがついたわ。被害状況は追って報告、ただし期待しないで、電磁的攻撃と視覚聴覚情報の消去を食らったから、データはほとんどないの」

『本部了解。A-59とは大物じゃないか。交戦理由は』

「もちろん虚数コードを狙って、よ。ご丁寧に監視等級Dを誘拐してね。ただ、あちらの勘は大外れ。新たな情報は発見できず、引き続き監視等級Dの監視を続けるわ。それより、酷いじゃない、あっちの新型の虚数コード。超音波のくせにすごい効くじゃない。報告がなかったおかげで1回負けちゃったわ」

『本部了解。陳情として受け入れる。では褒賞に期待を』

「ありがとう」


 三条は倉庫の外を歩きながら、そんな通話を行った。

 そして、通話を切った瞬間、自然と笑みを零した。


「ふふふ、ふふふふ」

 笑い声は徐々に大きくなる。


「あはははは、はははははは」

 煌々と燃え盛る倉庫を背に、嬉しくてたまらないと笑った。


「神様、ああ、神様、ありがとう。あなたの敬虔な信徒として信仰してきて、本当に良かったっ。……、ああでも、もうあなたは必要ないわ。これからの神様は……。葉山君、あなたは本当に最高よ。これで、これで――」


 三条は舞い踊るように、月が照らす道を歩いた。

「これで、こんなくそくだらない世界を、全部――」

感想ありがとうございます。

頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ