3話 覚悟
「む?しかし、自分勝手な都合でラピス達を召喚しておいて土下座もなしとは失礼ではありませんか」
腕を組みながら言い切るラピス。
「いやいや!?そこまでさせなくてもいいから!早く解除してあげてよ!」
「・・・・・・チッ、マスターの優しさに感謝して魂まで捧げるがいいです」
凄い渋い顔をして露骨に舌打ちをしたラピスが指をパチンと鳴らすと空間を圧迫していた魔法が消失する。
「魂!?いらないいらない!いや本当に何様なんだよラピスは!?・・・・・・あれ?召喚って言いましたか?ってことは、ここは異世界なんですか?」
「はぁはぁ・・・・・・そ、その、通りです勇者様」
ラピスの魔法から復活した女性がよろよろと立ち上がりながら言う。
「この世界は《アヴィルゼン》といいます。そして、この国のシュトラーナ神聖王国です。他にも様々な国がありまして、誠に情けない話ですが国同士の戦争が絶えておらず戦乱の世です。そんな中、ある日一つの国が滅亡しました。その国を滅亡させたのは遥か東の果てに住まうと言われていた魔族の国ダグダラス魔国の魔王イザベラ。その力は凄まじく数日の内にまた一つ国が滅亡しました。残った国々は事態の重さを知り、対魔国同盟を結びましたが、魔族の力は強大で徐々に押されています。このままでは、人類に未来にありません!どうか勇者様!お力を我等にお貸し下さい!」
「えーと・・・・・」
全てを言い切り深々と土下座をして懇願する女性に僕は戸惑い困惑する。
このような話を母さんから聞いたことがある。母さんは召喚ではなかったらしいが、世界滅亡を企む邪神から世界を救ったことがあるって。僕は小さい時から母さんが話してくれたその話が大好きだった。世界の為に戦い平和を築いた母さんが自慢だった。いつか、僕も母さんみたいに世界を救えるような人になりたいって思ったんだ。
ゴクリ。正直、僕はまだまだ弱い。母さんやラピスなんかと違って僕は恐らく才能なんてないんだろう。だけど、困っている人の助けになりたい。その為に、今まで努力を続けてきたんだから。
覚悟を決めて一歩踏み出す。
「わ、わかり「お断りします」っ!?ラピス!?」
僕の言葉に被せてきたのラピスはニッコリ笑うと拒絶の言葉を女性に浴びせる。
「ちょ、ラピス!」
「駄目です」
僕の言葉に取り付く暇もなく却下するラピスは首を振る。
「ラピス!」
なんでなのラピス!だって、ラピスはそんなにも強いのに!いくらだって助けることができるのに!僕と違って!
「マスター。なら、一つお聞きします」
あんなにも、どんな時でも笑っていたラピスがスゥーっと表情を消して僕に質問した。
ーーーーー貴方に命を奪う覚悟はありますか?




