プロローグ ショタとメイド
草原を全力で疾走する赤い髪の小柄な少年がいた。その少年の瞳は左右で色が違い右目が黒で左目が銀色の所謂オッドアイと言われる瞳をしていた。
「はぁ、はぁ」
見晴らしの良い丘の上まで、背後を振り返りながら走ってきた僕は足を止めて膝に手を当てて息を整える。
「はぁ、はぁ・・・・・はぁー、ようやく逃げ切れたー」
何度か周りを見渡しても姿が見えなかったので、僕はどかっと腰を落として地面に座り込む。
気持ちのいい風が火照った身体を冷やしてくれる。
ふぅー、毎日毎日スキンシップが激しいんだから。僕だって男なんだよ?適度に逃げないと理性が保たないというかって、適度ってなんだよ!?まるで僕が喜んでるみたいじゃないか!
・・・・・落ち着け僕。大丈夫大丈夫。別に誰かに聞かれた訳じゃかいから問題なし。
そうやって胸に手を当てて深呼吸していた時でした。
「マスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
突如、そんな叫びが上空からしたのと、背中に柔らかい二つの感触を感じた僕は色んな意味で叫びをあげました。
「フフフッ、捕まえましたよマスター!」
「ら、ラピス!?」
びっくりしながら背後を見ると桃色の髪をしたメイド服の少女が凄く嬉しそうな顔をして僕をぎゅーってしていました。
「ちょ!?ら、ラピス!?当たってる!?柔らかいのが当たってるよ!?」
「フフフ、当てているんですよ?」
慌てふためく僕の反応に心底楽しそうな笑顔を浮かべて更に体を密着させてくる。形の良い膨らみが僕の背中で変化する。
「っ!!!?」
「ほらほら♪気持ちいいですか?」
言葉も出ない僕の耳元で囁くラピスに僕は何も言えずに口をあわあわと開く。
「うーん、今日はこのくらいにしますか」
「……はぁはぁ」
ひとしきり僕で遊んで満足したのか、名残惜しそうに手を離すラピスだった。
「まったく、マスターの逃亡のせいで今日の授業が台無しじゃないですか」
「誰のせいだよ!?誰の!?」
やれやれと呆れるラピスに僕は全力でツッコミを入れる。
「はて?誰の?」
自分の後ろをくるりと振り返り誰もいないことに不思議そうな顔をするラピス。
「後ろには誰もいないよ!?ラピスに決まってるだろ!?」
「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「何が「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」だよ!?」
何でそんなに驚いているんだよ!?
「まさか水着がよくなかったのですか!?マスターの年齢を考えて刺激を抑えようとしたのでが・・・・・なるほど。まったくマスターは素直じゃありませんね。ラピスの裸が見たいならいつだっていいんですよ?」
驚愕した後、ポンと手を叩き、ラピスは恥ずかしそうな表情を浮かべながらもスカートをスルスルとたくし上げて黒色のガーターベルトに包まれた美脚が露わになる。
「っ!?ち、違うよ!?ち、違うから、ちゃんと直してよ!?」
思わず現れた美脚に視線を奪われた僕は、慌てて視線を逸らし真っ赤な顔のまま叫んだ。
「フフフ、マスターはやっぱり素直じゃないですね♪」
「う、うるさいな!も、もう風呂場に突撃とかしないでよ!」
「しかしマスター。マスターは可愛いので、不届きな雌猫………ゴホンいえクズが誘惑してくるかもしれませんから女の子に対する耐性をつけた方がいいかと」
「なんで悪い風に言い直したの!?表現が怖いよ!?」
「マスターを攻略していいのはラピスだけですからね!」
「なんで威張ったの!?ねぇ、なんで!?」
ドヤ顔を決めるラピスに僕はツッコミを入れる。
「ふむ?なんで、ですか」
顎に手をやり、意味深にクスリと笑うラピスの雰囲気が変わりました。
「ら、ラピス?うあっ!?」
雰囲気が変わったラピスが表情を消し、つかつかと歩み寄ってきていきなり僕を押し倒す。
「フフフ、本当に分からないんですか?」
「ら、ら、ラピス!?か、顔が近いよ……」
「いけないマスターですね。本当は分かっているんでしょ?ラピスがマスターをどうしたいかなんて」
「………っ」
僕はそんな妖艶は雰囲気を醸し出すラピスの言葉に背筋がゾクっとした。また、その言葉を話し、顔に近づく柔らかそうな唇に視線が釘付けになる。
「マスターはラピスのモノですからね。なら、ラピスのモノだって証を体に刻んであげます」
「ん……ら…ぴす……」
いよいよ吐息が感じる距離まで顔が近づく。
僕はその後、予想し目を閉じる。
チュッ
「………え?」
少年は柔らかい感触を感じた鼻を手で押さえる。
「フフフ、どうしたんですかマスター?本当は違う場所が良かったですか?」
「なっ!?」
顔が真っ赤になって絶句する少年をそのままに本当に楽しそうに笑いにながら体を起こし踵を返すラピス。
「本当はもっと色々したいですが我慢します。マスターが本当にラピスを求めてくれる日までラピスは待ち続けますよ。なにせラピスには寿命がないですからね!」
だから、とラピスは続けて宣言する。
「ラピスの魅力でマスターを骨抜きにしてメロメロにしますので、マスターは待っていて下さい!」
「…………これだから、ラピスは卑怯なんだよ」
極上の笑顔で振り返りの攻略発言に僕は諦めたかのように溜息を吐く。
「さぁ、帰りましょうマスター」
「………うん」
ラピスが差し伸ばした手を僕が掴む寸前、僕等の頭上に巨大な魔方陣が出現する。




