95、飛行訓練も3日目、そろそろ……
95、飛行訓練も3日目、そろそろ……
いつもなら全員レジャズに乗っていくのだが、今日はレジャズを中心にリーちゃん達5人が周りをぐるりと囲み、自分たちで飛んでみることにした。
レジャズの速度に合わせ、そして五重丸の臨場感エリアからはみ出さないように、編隊飛行で飛ぶのは結構難しい。
「よっしゃー! この辺でいいやろ、ぼちぼち行こか」
一旦みんなを乗せ、100メートルほど上昇したレジャズは声をかけ、みんなは一斉に舞い上がった。
「そうそう、ボクを中心に桜の花びらみたいに並んで、東芝もうちょっとこっちによってサンヨーは少し下がって、そうそう、この状態をキープして行くでー。遅れんようについてきいやー」
リーちゃん達が空を飛ぶ練習を始めて3日目に突入。日にち的にも、もうそろそろ現れてもよさそうなものだが、魔神オカマは一向にその姿を見せない。
時折その気配を感じることもあるのだが、確認してみるとなぜかそれは不法投棄の家電やガラクタばかり。ヒエール様も気を探っているが、小さくなって気を消しているのかその居所は全くつかめていない状態だ。
その間みんなの飛びっぷりもメキメキ上達し、学校の屋上では浮くのがやっとこさだったのが、そこそこ思い通りに飛べるようになってきた。
そしていよいよ今日は編隊を組んでの初フライト。みんなは少し緊張しながら鉄塔のある山の方へ飛んで行った。
「ヤッホー、楽勝楽勝、もうこのままヒーローデビューしちゃう?」
「ダメよ、サンヨー、調子に乗っちゃ。ろくなことしないんだから」
一方テレビのニュースでは破壊されたピラミッドの様子、復旧に関する動きが毎日のように報道されている。
砲弾でもミサイルでもないヒト型の物体。ピラミッドに激突したものが、一体なになのか、衝突時の映像を見て各方面の専門家があれこれ意見を交わし、現場に残された破片、残骸なども回収し分析されたが、どこにでもある家電製品の物ばかりで武器兵器のような物は見つかっていない。
じゃ、これを撃った、あるいは操縦していたのは一体誰? 真っ先に疑われたのはテロ組織であるが、どこも早々に今回の攻撃には関与していない、という声明を発表している。
いくら専門家を集めて、話し合ってもピラミッドを破壊したのは家電達の魔法で吹っ飛ばされた廃家電の化け物……という正解にはたどり着けないであろう。
山に到着したソニーとサンヨーは、鉄塔の周りをグルグルらせん状に飛びながら、ニュースで外国のおっさんが頭を抱えている話をして笑った。
「バッカだな、みんな。オレが本当のこと教えてやろうか?」
「あ、それいいかもね。そしたらジェット機とかでやっつけてくれるかも」
「ダメよ! あんた達、魔神オカマのことはあたし達と神様だけの秘密なんだからね。もしばらしたら……みんな、わかってるわよね」
「わ、分かってるってジョ、ジョークだよジョーク、なあ東芝」
「う、うん」
東芝は他の二人よりマシだが、ただでさえ口の軽いサンヨーとソニー。戦闘スーツと武器をもらい、空も自由に飛べるようになって一段と調子コイて、いつ秘密をばらしてしまうか分からないので、リーちゃん姉妹は男子3人が軽率な行動をとらないようクギを刺しておいた。
どんなクギかというと、ヒエール様からの天罰。
以前サンヨーを校舎の裏に呼び出し、SR-18にタマシールを貼りつけたことを白状させたときに、リーちゃんが口から出まかせに言った、身の毛がよだつような恐ろしいバチ。
……耳がとんがって、鼻からオナラが出るようになるのよ……
「それだけじゃすまないわよ、ピラミッドまでぶっ壊したんだから、目からウンコが出るようにもしてもらわないと」
男子3人を睨み付け、ミーちゃんはバチの内容を盛った。目からウンコはただの目クソだが、クソをウンコに言い換えただけでかなりインパクトがある。サンヨーは必死で言い訳をした。
「あのさ、ピラミッドを壊したのは魔神オカマでオレじゃないんだけど。なんでオレが目からウンコまで足されなきゃならないんだよ」
「何言ってんのよ、あんたがタマシールを貼ったから、こんなめんどくさい事になったんだからね、あんたがやったのと同じようなもんよ」
ごもっともです。何も言い返せないサンヨーにリーちゃんはさらに話を盛った。
「もしバレたら世界中のお巡りさんに怒られて、死刑になるわよ。そうよ死刑だわ、バチどころじゃすまないわよ、きっと」
「ちぇっ、死刑なんかならねーよーだ」
サンヨーは吐き捨てるようにそう言って、鉄塔のてっぺんまで一気に上昇していった。その後を東芝とソニーが心配そうについて行く。
「ねえサンヨー、魔神オカマって本当に戻って来るのかな」
「知るかよそんなの、東芝ビビってんじゃねーよ」
そう言ってサンヨーはアイスブレードを抜き、かっこよく構えて見せた。
「オレはこの前これでアイツの腕を吹っ飛ばしてやったんだからな、次もギッタギタにしてやるぜ」
「そうだぜ、悪者がいなきゃ、敵がいなきゃ正義の味方になれねーじゃん」
「僕は別に正義の味方になれなくてもいいけど。それに戦うのはレイちゃん達、家電達なんだろ?」
「もー今さら何言ってんだよ、戻ってこなきゃやっつけられないし、やっつけないとプレステももらえないじゃん。戦うってもちょっとひっぱたくだけでいいんじゃないの?」
ソニーは調子のいいことを言いながらディスクシールドを取り出し、木に向かって投げた。ディスクシールドは虹色に輝きながら空中をすべるように飛び、木の枝を切断してソニーの手元に戻ってきた。
「お、やるじゃんオレも練習しよっと」
そう言ってサンヨーはアイスブレードを両手で持ち正面に構え、念を込めた。すると剣はビンビン振動して青白く光り、冷気を溜めはじめた。
なんとなく乗り気でない東芝も、腰のランドリースピアを手に取りグッと握りしめた。すると筒の両方の穴から槍が伸び始め、柄の方が横にいたサンヨーの側頭部を直撃。
ゴス
「わっ! 痛ってぇー東芝、何すんだよ」
「あ、ごめん、これ両方から伸びるんだった。大丈夫?」
「危ないなぁもー、槍の方だったら刺さってたぞ」
戦闘スーツを着てるので、多分刺さらないと思うけど。
男子3人のショートコントを見て、リーちゃん姉妹は呆れたような顔で地上に降りていった。
「あいつら、ヒエール様に言いつけて本当にバチを当ててもらおうかしら」
「ほっときなさいよ、ああしてじゃれ合ってても練習にはなるんだから、お茶飲んで休憩しましょ」
雪ウサギの近くに着地したリーちゃん姉妹は、それぞれの水筒を取りお茶を飲もうと蓋を開けていると、山道の方からベフちゃんが勢いよく走って来るのが見えた。
「あ、ベフちゃんだ。また不法投棄の家電を見て騒いでるのかしら」
ベフちゃんの後ろにはジャブ君が……今日は拾った板切れに乗って水上スキーでもしてるかのように引きずられてきた。
「ヘーイそこの彼女たち、一緒にかき氷でも食べへん? なんちって」
ベフちゃんは必死だが、ジャブ君は余裕だ。
何かあったの?




