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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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90、オカマはどこへ?

90、オカマはどこへ?

 カラーン


 ヤマダ先生はガクッと膝をつき、持っていたさすまたを床に落とした。


 「……行っちゃいましたね」

 「ああ……」

 「どうします?」

 「とにかく、状況を把握しよう」


 ヨドバシ先生とヤマダ先生は、ゆっくりと立ち上がりズボンのホコリを掃いながら歩き始めた。

臨場感の中に隠れているリーちゃん達は、先生と距離をとりながらソローリと移動する。

 五重丸はリーちゃん達の足音をごまかすためセミの鳴き声のBGMを鳴らした。


 「ヨドバシめ、さっさと帰ったらいいのに」

 「シーッ、サンヨー、先生に聞こえちゃうよ」

 「早く退散した方がよさそうだね、レイちゃん、ジャブ君、もう一度バビエオでレジャズになって家に帰ろう」

 「そやな、長居は無用や」


 レイちゃんはバタンキューで小さくなったすずちゃんを床にそっと置き、その上からジャブ君と一緒にトリセツを重ね、再びレジャズになった。

 リーちゃん達を乗せ、家に帰ろうとしたその時、五重丸がストップをかけた。


 「ちょっと待って、さっきサンヨー君が切り落としたオカマの腕はどこに行ったんだ?」

 「さあ? オレ達の近くに落ちてきてバラバラのガラクタになったけど、その後どうなったかは知らないや」

 「風で飛ばされてどっか行ってしもたんとちゃうか? ここ元々ゴミだらけやったし、先生も気が付かへんって」

 「気にし過ぎか……あ、先生がこっちに来るよ。レジャズちゃんもう少し高度を上げよう」


 ヨドバシ先生とヤマダ先生が、キョロキョロと辺りを見回しながら近づいてきたので、レジャズは先生達にぶつからないよう少し高度を上げた。

 先生達は凍り付いたドアの前に立ち止まり、首を傾げ何か言っている。


 「ドアだけが凍り付いているな。なんでだろう」

 「宇宙船が時空を超える時、周囲の温度が異常に下がって凍結するようなシーン、映画で見たことありますよ」

 「なるほど、ここだけ出っ張っているから凍ってしまったのか。それにほら、あの辺の床も少しヒビ割れてる、フェンスだってひしゃげてるし。きっと離着陸の衝撃と奴らの言ってた『キケンナモノ』との戦いで破損したんだ」


 魔神オカマが放った中途半端な攻撃や、時間稼ぎのためにトコちゃんが凍らした出入口。屋上の不可解な破損原因は、プロデューサー五重丸脚本「ガセネタ緊急速報」でイイ感じに挿げ替えられた。

 ヨドバシ先生は額の汗をぬぐい大きなため息をついて、ヤマダ先生に言った。


 「とにかくだ、今見たことはしばらく俺たちだけの秘密にしておこう」

 「え? 校長や警察に報告しないんですか?」

 「そんなことして、地デジカ宇宙人が地球をカチ割りに来たらどうすんだよ! 本当かどうかは分からんが、彼らは地球を守ってくれたんだぞ、地球の平和のため絶対本当のことを言うなよ」

 「はあ……じゃ、これからどうすんですか」

 「氷はほっといても溶けるし、このままでいいだろ。折れた鍵はペンチで引っこ抜いて非常口のカバーは生徒がイタズラして壊したことにしておこう」


 地球を守ることにかこつけて、自分の壊した物のことをうやむやにしようとしている。ヨドバシ先生って意外とせこい。


 「……はあ、でも鍵は? 折れちゃった鍵どうするんっすか」

 「とりあえず三井の家に、通信簿待って行かなくちゃいけないから、その帰りにホームセンターで合鍵作ってくるわ」


 「やばっヨドバシ、オレん家来るの? ウプッ」


 ヨドバシ先生が自分の家に来ると言ったのを聞いて、サンヨーは思わず声を出してしまった。東芝は慌てて、後ろからサンヨーの口をふさいだ。


 「あれっ? 今、近くで子供の声がしたような……三井の声に似た声が聞こえたぞ」

 「空耳じゃないっすか? 誰もいないし。たぶん、三井君のこと心配してるからですよ。さ、早く引き上げましょ」


 そう言ってヤマダ先生は、さっさと梯子を下りて行った。ヨドバシ先生も辺りを見回し、いまいち納得しないような顔でその後に続いた。

 レジャズも屋上から校庭の方へ逃れるように移動した。


 「バッカねぇ、あんた見つかる所だったわよ」

 「だって先生、オレん家来るって言うんだもん。早く帰らないとヤバいよ」

 「大丈夫や、すずちゃんがバタンキューになってても、レジャズ号の速さは変わらへんで……余裕で先回りできるし、今のうちに通信簿の言い訳でも考えときやー」


 などと言いながら、レジャズは家路を急いだ。

 地上に降り、戦闘スーツを解除した5人は元の小学生に戻った。サンヨーは向かいの自宅に駆け込み、ソニーはダイさんをポケットに入れ走り去った。東芝はトコちゃんと何か話をしながら歩いて帰っていった。そしてリーちゃん姉妹はいつもどおり……


 「ただいまぁ、お腹空いたー」


 階段をドドドーッと駆け上がり、ミーちゃんはリビングに、リーちゃんはそのまま一気に3階の子供部屋まで駆け上がって行った。

 そしてショルダーバッグからすずちゃんを取り出し、手のひらに乗せてちょっと撫でてからすずちゃん本体にそっと押し込んだ。


 「すずちゃんお疲れ様、早くよくなってね」

 「リー、どうしたのー? スイカ切ったから降りてらっしゃーい」

 「あ、はーい」


 階段の下からお母さんの呼ぶ声がした。すずちゃんの前でペタンコ座りしていたリーちゃんは立ち上がり、すずちゃんに手を振りながら降りていった。

 リビングのテーブルを見ると、ミーちゃんが先にスイカを食べ始めていた。リーちゃんも横に座りスイカに手を伸ばした。


 「あ、お姉ちゃんもう二つも食べてる」

 「シャリシャリ、あーウマ、すずちゃんはどう? 戻してあげた?」

 「うん、シャコシャコ、大丈夫、明日になれば目を覚ますと思うよ。ペッペッ」

 「でさあ、シャリシャリ、あいつダイさんに吸い込まれて消えちゃったけど、どうなったんだろ? ペッ」

 「さあ? どこに行ったんだろね、あ、種飲んじゃった」

 「シャリシャリ、あ、臨時ニュースだって。何だろ」


 スイカを食べながらバラエティー番組を見ていたら、画面が突然ニュース映像に切り替わった。


 「番組の途中ですが、臨時ニュースです。先ほどエジプト、ギザのピラミッド群が何者かに爆撃され、ピラミッドの先端部分が一部崩壊しました。人的被害はない模様ですが……」


 「あらヤダ。怖いわねぇ、テロかしらね」


 ソファに座っていたお母さんがそう言った。リーちゃん姉妹も、たいして興味はないがスイカを食べながらニュースを見ていた。

 画面はスタジオから現地の映像に切り替わり、爆撃された瞬間の映像が映し出された。


 「ブーーーッ」


 二人はびっくらこいて、スイカを吹き出した。


 「お姉ちゃん、あ、あれ」

 「なんで、アイツあんなところに……」


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