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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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9、神様??

9、神様??

 やっとヴェのおじさんらしき「誰か」を見つけることができたリーちゃんとレイちゃんは、言われた通り店のガレージの方に歩いて行った。

 ガレージの出入り口付近には、入ってすぐ横にトイレと自販機、あと10台ほどのガチャポンと椅子があるくらい。人通りはあるが通り過ぎるだけで立ち止まる人はあまりいない。

 声の主にさっきちょっとだけ怒られた二人は恐る恐るハモるように囁いた、もちろん心の中で。


 「来ーましーたよ~~、ヴェーの誰かさーん」


 無理もない。レイちゃんの出現で慣れているとはいえ、リーちゃんはまだ7歳だ。不思議なことを結構あっさり受け入れてしまう寛容さがあるが、初対面かつ得体の知れない相手となるとやっぱりちょっと怖い。

 レイちゃんにしても外を出歩くのは今日が初めてだし、見るもの聞くもの珍しいやら、怖いやらおもしろいやら。レイちゃん自身も人間から見ればバケモノのようなものであるが、それでも怖いものは怖い。

 そんな二人を見ていた声の主は、緊張と恐怖感を少しでもほぐすため二人に合わすようにやさしく囁いた。

 普段はこんなキャラではないが【特別に】


 「こーっちだヴェー、うしろ後ろ」


 リーちゃんとレイちゃんは声のする方へゆっくりと振り返った。そこにはゲーム機やフィギュアなどが飾られたショーケース、壁には「高価買取!」「WANTED!」などと描いた派手なPOPが貼られ、その前に「お手を触れないでください」の立て札と非売品のレトロな家電製品が数台展示されていた。

 誰もいない……が二人にはすぐわかった。その中の「1台」が明らかにおかしいことが。それにはレイちゃんと同じように目と口があって、ニコニコしながら小さく手招きをしている。リーちゃんはその家電製品に駆け寄り、訊ねてみた。


 「あなたが、ヴェのおじ、じゃなくてあなたがそうなの?あなたって」


 「フフッ驚いたじゃろうヴェ?我こそは……」


 「金庫なんだ。あなたもレイちゃんみたいにしゃべれるのね」


 「そうそう、我こそは金庫の、じゃないヴェッ。落ち着いてよーく見てみるヴェ、我はこの世の電化製品の神、冷蔵庫のリフリージェヒエール様じゃヴェ」

 リーちゃんの言う金庫、みたいに見えるレトロな冷蔵庫は、軽くボケ突っ込みをカマした後、偉そうな顔をしてそう言った。


 「えっ⁉」目の前にいるへんてこりんで金庫みたいな冷蔵庫が神様だと言ったので、リーちゃんはクリクリの目をさらにまんまるにして驚いた。そして隣にいるレイちゃんと顔を見合わせ、ひそひそ話を始めた。


 「レイちゃん、この金庫みたいな冷蔵庫さん自分のこと神様だって言ってるよ、本当かなあ?」


 「さっき、おもちゃコーナーで感じた気配は、確かにこの御方から感じるし、ボクらの探していたヴェのおじさんは多分この御方だよ。でも、神様か何様かはようわからんなぁ」


 「そうそう、あたしも何か感じるけど、よくわかんない。だって本当の神様って白いおひげがモシャモシャ生えてて、頭の上にこーんな輪っかがついているんじゃないの? 怪しくない?」


 「そやなあ、なんか威厳がないというか、オーラが感じられないっていうか」


 「そうそう、で、イゲンって何? オーラって何? 飲み物?」


 「リーちゃん、それはコーラちゃうか? オーラっちゅうのは、えーっと……」


  二人の会話をしばらく聞いていた神様は、我慢しきれず二人の会話の間に割って入ってきた。


 「あーもう、何をごちゃごちゃ言ってるヴェ、我に色々聞くためにここへ来たんじゃろ、ちゃんと説明してやるからちょっとそこに座れヴェ」


 神様が指をさした先には、休憩用のイスが3台あった。少々歩き疲れていた二人はそこに座って話の続きを始めた。


 「えっーと、何から聞いたらいいのかな?聞きたいこと、いっぱいあるんだけど……じゃあ、まずこの冷蔵庫から出ちゃったレイちゃんは、これからどうしたらいいのかしら、それと、あなた自分の事、神様だって言ってたけど本当なの?」


 履いていたサンダルを脱いで、足をプラプラさせながらリーちゃんは神様に訊ねた。神様はさっきまでより少しだけ威厳のある声で質問に答えた。


 「そう、我こそは家電製品の神、冷蔵庫のリフリージェヒエールじゃヴェ。お前に魂を定着させるシール『タマシール』を託したのは我じゃヴェ。それと、お前の連れてきた冷蔵庫じゃが、安心するヴェ、タマシールのパワーで定着した魂が、名前を付けてもらったおかげで、本体と離れて行動できるようになったのじゃヴェ。まぁ慣れないうちは疲れるだろうから半日くらいで本体に戻ったほうがいいヴェ」


 リーちゃんはまだ7才なので、神様の言ったことはほとんど分からなかったが、とりあえずヴェのおじさんは神様で、レイちゃんはこのままで大丈夫らしい、という事くらいは理解出来たようだ。

 ホッとしてうれしそうな顔をしているリーちゃんに神様は訊ねた。


 「ところでリーちゃんよ、我がタマシールを渡したとき、家の冷蔵庫に貼ってみろと言ったヴェ? シールを張って冷蔵庫がしゃべりだしたら、もう一度ここに来るように言ったヴェ? 来たら良い名前を付けられるように色々教えようと思っていたのに、どーしてすぐに来なかったヴェ?」


 「だって、シールをもらった時は、まだ幼稚園だったからムリだったの、園児は一人であの信号のある道を渡っちゃいけないんだよ。だからここに来れなかったのよ」


 「あぁ、ぼーそう族が走ってくるあの大きな道ね。あそこはホンマ怖いわ」


 「でしょ? お母さんと一緒にならよく渡ってるけど、子供だけで渡るの初めてだったんだから」


 二人の話を聞き、神様はいたく感心したようで、優しい顔をしてこう言った。


 「そうかそうか、人間界にそんな(おきて)があったとは我は知らなかったヴェ。で、本日その(おきて)から解放された汝は、勇気をふり絞り危険な道を渡り切って、我のもとに来てくれたのだな?」


 そんな(おきて)のような法律あるわけがない。ちょっとした親と子の「おやくそく」である。


 「まあね、そんなとこかな」


 「さすが我が見込んだだけのことはあるヴェ、おチビちゃんなので少々不安であったが、なかなかどうして勇敢な女の子ではないか、我の目に狂いはなかったヴェ。あっぱれパレパレじゃヴェ」


 大通りの信号を渡っただけなのに、すごく()められたリーちゃんは恥ずかしそうに照れ笑いした。どこか微妙にかみ合ってないが、なぜか会話はスムーズに続いていく。


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