85、レッドとピンク
85、レッドとピンク
上空数十メートルに浮かんでいる全身ピンク色の戦士、リーちゃんの背後から聞き覚えのあるイヤな声が聞こえた。
「この前の赤いチビ……サンシャインレッドとか言ってたな、お前アイツの仲間かギャ?」
リーちゃんが恐る恐る振り向くと、そこには魔神オカマが!
両腕を後ろ手に組み、不敵な笑みを浮かべ、足をブランとさせて宙に浮かんでいる。
この前のように巨大な実物大ではなく、中学生くらいの身長しかないが、その恐ろしさは変わらない。
「キャーッ!」
リーちゃんは悲鳴を上げ逃げようとしたが、パニクって思ったように飛べず、空中であたふたともがいている。
校舎の屋上から見ていたサンヨー達も悲鳴を聞き、その異変に気が付いた。
「お、おい!あいつの近くに出てきたアレ、魔神オカマじゃないのか?」
「え? あれがあの時の炊飯器? 人間みたいに見えるけど」
「ボクが家から見た時も、あんな感じだったけどもっと大きかったよ」
「ガルルルルゥ~」
「間違いない! ちっこいけどありゃ魔神オカマや、リーちゃんが危ない! すずちゃん、ジャブ急いでバビエオや!」
やばい、やばいぞ! レイちゃん達は急いでトリセツを出し、重ね合わせバビエオを唱えた。
しかし、融合合体が起こらない。
「なんでや! こんな時に」
「あ、悪ぃトリセツ裏向けやった」
「もージャブ君、何してんのー」
「おやおや? よく見えないけど下の方が騒がしいギャ、仲間がいるのか? 丁度いい、見せしめにお前を始末してやるギャ」
オカマの体が鈍いオレンジ色に輝き出し、リーちゃんに向けられた手のひらに光の玉が大きくなってゆく。
逃げようとするリーちゃんだが、上手く飛べずフワフワと、その場でもがくのが精いっぱいだ。
「バビエオッ」
レイちゃん達はようやく融合合体しレジャズとなり、校舎から飛び立った。
「もっと近づかんとリーちゃんに当たってしまうで……待て待てー! 撃ち方やめーぃ」
レジャズは速度を上げながらクラッシュアイスブリザードの構えをしたが、リーちゃんに誤爆してしまうかもしれないので撃つことが出来ない。魔神オカマは臨場感の境界線を越え、姿を見せたレジャズをチラッと見ていやらしい顔で笑った。
「あ、どんくさい冷蔵庫が現れたギャ。へへっ、タイムアーウト! 今、このピンクを黒焦げにしてやるギャ」
「いやぁぁー!」
「間に合わへん……やめろー! ……やめてーキャー!」
ビューーーン!
悲愴な顔で必死で飛ぶレジャズの背後を、赤いものが超高速で追い抜いて行った。
そしてそれは魔神オカマの腕を吹っ飛ばし、リーちゃんの少し上で急停止した。
「ギャギャーッ! 誰だギャッ、よくもオレの腕を……」
吹っ飛ばされた腕は回転しながら落下し、校舎の屋上に叩きつけられ、グシャッという音を立てて潰れた。
「わっ気持ち悪う」
30センチほど浮いていたソニーと東芝は地面に降り、ビクビク蠢く腕から逃げるように離れた。しばらくすると屋上の床に落ちた魔神オカマの腕は、ぐたっと動かなくなりグスグスと崩れて元の家電のガラクタに戻った。
一方、空中にいたリーちゃん、魔神オカマ、そして遅れてきたレジャズは一瞬何が起こったのか理解できず、キョロキョロと辺りを見回した。
「香織っ! 大丈夫かっ!」
声のした方、リーちゃん達のさらに5メートルほど上を見ると、そこには太陽の光を浴び、輝く剣を横一文字にかまえた赤い戦士がいた。
「あんたは、サンヨ……サンシャインレッド?」
「フーッ、ギリ間に合ったな、にしてもこの刀めっちゃ切れるな。これ子供が持ってていいヤツなの?」
「ようやった、サン……シャインレッド。あとはボク等に任せてリーちゃんを連れて戻りいや」
「お、おう」
レジャズに促されサンシャインレッドはリーちゃんの横に行き、手を引っ張って屋上へと向かった。
「こらこら、お前ら勝手に逃げるんじゃねーギャ!」
「おっと、お前の相手はレジャズ様じゃあ……大怪我してるからって言って容赦せーへんで……練習の邪魔するからそんな目に遭うのよー、イーだ」
「は? 大怪我? 笑わすなギャ。こんなものいくらでも生えてくるギャ」
魔神オカマは、平然とした顔で、肘から先が無くなった腕をレジャズに向け突き出した。すると腕の切り口から新しい腕がビュルッと生えてきた。
「やーキモーイ、手が生えてきたよー……こいつ再生できるんか……廃家電の塊やからな、欠けた部分は体内でいくらでも作れるんや、やっかいやな」
「これで手加減無用だギャ。ん? なんならこの前みたいに手を抜いてやろうかギャ?」
レジャズと魔神オカマのにらみ合いが続くなか、降下中のリーちゃんはサンヨーに言った。
「あんた、どさくさにまぎれて『香織』って呼んだわね、多分2回くらい呼んだわ」
「あ、必死だったんでつい、わりいな松下」
「苗字で呼ぶのもダメ」
「へ? じゃ、どう呼べばいいんだよ、あ、ピンクって呼んでほしいの?」
「違うよ……『リー』でいい」
「リーちゃん、って?」
「呼び捨てでいいや、リーって呼んで」
「……」
二人はそれから黙ったまま、臨場感の境界を越え、見えなくなってしまった。
「けっ、消えやがったギャ。まあいいギャ、ちょっとしぼんでるけど、さっき溜めてたやつをドーン!」
魔神オカマはそう言って、熱々水蒸気の塊を屋上めがけて発射した!
「わわっ、なにすんねん!」




