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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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83、あんた何色?

83、あんた何色?

 リサイクルショップの自動ドアを通り抜けたレジャズは、ド派手な黄色い縦看板の先端あたりまでスーッと高度を上げた。


 「わーっ高い高い」

 「シーッ、ソニー、大声出しちゃダメよ。姿は見えなくできるけど声は聞こえちゃうんだから」

 「男子2名、今さら高いトコ怖いよ~なんて言うなよ……そんなこと言ってたら空飛ぶ練習なんてでけへんで……ほんま、ホンマー」


 レジャズは間もなくリーちゃん家上空に到着し、ゆっくりと高度を下げていくと、家と家の隙間に入ろうとしているサンヨーの姿が見えた。

 それを見つけたソニーは、思わず身をのり出し叫んだ。


 「おーい、サンヨー、元気かー?」


 声に気付いたサンヨーが空を見上げると、空中にソニーの顔が見えた、と思ったら一瞬にしてシュッと消えた。


 「ぶっ!」


 サンヨーはびっくりして、のけぞった。


 「バカッ! 臨場感の外に顔出しちゃダメじゃない『空飛ぶ生首事件』になっちゃうよ」

 「あー、わりぃわりぃ」


 内輪もめのヒソヒソ声が、上空からゆっくりと降りてくる、サンヨーはポカンとした顔で、声の聞こえる方向を目で追っていると、ヒソヒソ声がサンヨーの目の前(あた)りで止まった。

 見えないけど、臨場感パブリックモードで姿を隠したレイズちゃんが到着したんだな、とサンヨーは思った。でも……


 「さっきの顔、ソニーに似てたけど、気のせいか?」


 サンヨーは首を(かし)げながら、臨場感の内側に顔を突っ込んだ。

 と、同時にリーちゃんも、レジャズから降りようとしたもんだから、サンヨーの顔を足でグニュッと踏みつけてしまった。


 「イテッ!」

 「あヤダ、エッチ! パンツ見たでしょ」

 「違うって、見てねぇし。なんだよもう人の顔踏んどいて。それにソニー、あっ東芝も、あいつらなんで乗ってるんだ?」


 サンヨーは顔を片手で(ぬぐ)いながら、レジャズちゃんがいるであろう方向を指さし、リーちゃんに訊ねた。リーちゃんが答えようとしたら、その前に空中からソニーの声が聞こえた。


 「おーいこっちこっち、ヒエール様から大体のことは、聞いたぜ。オレ達も手伝うことになったんだ」

 「そうだよ、松下さんにタマシールをもらって使ったから、家電達も見えるし、レジャズちゃんに乗れるようになったんだ」

 「タマシールを使った、ってことは新しい家電達が増えたってことか。どんな家電が……え? 何これ」


 リーちゃんは、東芝やソニーと喋っているサンヨーの手を引っ張り、もらった小さな袋を手のひらにのせた。


 「あんたに渡してってヒエール様に頼まれたのよ」

 「ヒエール様が? 何が入ってるんだろ……うわっ、ダサ」


 サンヨーは袋から出したバッジを見た瞬間にそう言った。作りは七宝焼(しっぽうや)きのようで高級感があるのに、デザインはやはり東芝以外にはウケが悪いようだ。


 「あ、お前も付けてる。お(そろ)いなのか?」

 「違うよ、お姉ちゃんとかみんなも持ってるんだから。まだどんなのか知らないけど、戦闘スーツが入ってるみたいよ」

 「これに? まあヒエール様がくれるものって不思議な物ばっかりだけどな」

 「それを今から試しに学校に行くのよ、ほら、早く乗って乗って」

 「おぉ、わかった」


 二人はレジャズに乗り、みんなで学校へと向かった。目的地の校舎の屋上は、普段誰も来ることはない。運動会などの行事があるとき、先生が垂れ幕を吊るすために上がってくるくらいで、リーちゃん達ももちろん来るのは初めての場所だ。

 防水シートが貼られたコンクリートも薄汚れ、あちこちに雑草も生え、あまりきれいとは言えない。


 「屋上に来るの初めてだけど汚いねえ、下からは見えないから分からなかったけど」

 「先生も用務員さんもほったらかし、誰も上がってこないってことやな。安心して空飛ぶ練習ができるわ」

 「でも、万が一ってこともあるからね。念のため臨場感のエリアを屋上全体に拡げておこう」


 五重丸はそう言って手を広げ、臨場感パブリックモードの範囲を約10メートル四方に拡大した。


 「じゃ、始めましょ。みんな体操体系に開いてぇー」

 「なにそれ、運動会の練習みたい」


 ミーちゃんはそう言いながらも、少し離れてリーちゃんの方を見た。他のみんなも距離を取り、5人は輪になって並んだ。

 するとリーちゃんは右手を(おが)むように顔の前に構え、左手を横にピーンと伸ばした。そして伸ばした左手を敬礼するように戻し、カチューシャにつけたバッジに人差し指を当てて叫んだ。


 「ヒエヒエチェーンジ!」

 「あれ? ポーズとか呪文みたいなの、いるのか?」


 必要ない。バッジに触れ祈るだけでよいのだ。リーちゃんが勝手に”盛った”だけである。とにかくバッジに触り、祈ることで効果が発動し、リーちゃんの体は白い光に包まれ、やがて光が止むと全身ピンクの戦闘スーツをまとったリーちゃんが現れた。

 頭部はゴーグル付きのヘルメット、その上にカミテレコンのカチューシャが張り付いていて、腰にはミニスカート、ベルトにはホルスターに入ったパチンコとヘブレージボックス、コンポーダンボール等を収めたボックスが取り付けられている。そして背中には天使の羽を織り込まれたマントが風になびいている。


 「わっリー、ド派手っ。色や装備はイメージで変化するってヒエール様言ってたけど」

 「いいじゃん! 女子なんだから。お姉ちゃんマネしちゃだめよ、ピンクはあたしよ」

 「分かってるって、わたしはあんた達みたいにお子チャマじゃないんだから」


 ミーちゃんはそう言いながらバッジを握りしめて祈った。男子3人もそれに続いて変身をはじめた。それぞれが白い光に包まれ、やがて光が止むと4人の戦士が現れた。

ミーちゃんは、キラキラしたバイオレットに黒の縁取(ふちど)りが付いたスーツ。ミニスカートの中から、なぜか悪魔みたいなシッポが生えている。ヘルメットやマントは、リーちゃんのそれとほぼ同じで腰にはボウガン型のパチンコが装備されている。

 そして、男子3人は……


 全員赤!


 やはりヒーローと言えば赤なのか。3人はお互いのスーツを見てうろたえた。


 「なんでみんな赤なんだよ。赤はオレ、サンシャインレッドって決まってんだよ!」

 「いつ決まったんだよサンヨー、知らねーし。それに東芝だって赤ってイメージじゃないじゃん、緑とか茶色にしろよ」

 「ボ、ボクは何色でもいいけど、茶色はちょっと……英語で茶色って何て言うの?」

 「知らねーよ、チャイーロでいいじゃん」

 「もー! ホントあんた達めんどくさいんだから、ジャンケンか何かで決めなさいよ」


 イラついたリーちゃんは、色でもめている男子3人の方に向かおうと、地面を軽く蹴った。

 するとリーちゃんの体がフワッと浮かんだ。


 「わゎゎ、と、飛んだあ」


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