76、突撃レポーター再び
76、突撃レポーター再び
早歩きで突撃レポーターを振り切ったミーちゃん。振り向いてみると捕まったリーちゃんが身振り手振りで二人に何か話している。
(リーが適当にごまかしてくれたらいいけど……そうそう、ヒエール様に連絡しなきゃね)
ミーちゃんはヒエール様に、東芝とソニーに魔神オカマの存在を知られてしまったことを話し、どうしたらいいか相談をした。
「もう手っ取り早くまた、ジャブ君の『スッキリシミ取り』で忘れさす?」
「いや、記憶を消す魔法は、同じ者に短期間に続けて使うと、その者の記憶が全て消えてしまう可能性がある。使うのは危険じゃヴェ」
「じゃ、どうしたらいいの」
「ヤツは廃棄家電を神の御霊の神力『タンクリヤクシブワ』で融合し、それをダークパワーで操っておる。実態のまま活動しているという事は、誰にでも見えると言うことじゃヴェ」
※タンクリヤクシブワ
家電達がトリセツを重ね合わせることによって発動する融合合体バビエオと似ているが、こちらは神技、神にしかできない融合合体である。タマシールやトリセツのような特別な神具は必要ない。ベースとなる家電と似ている「キヲク」を持つ家電の方がベースの家電のパワーをより増幅させることが出来る。
そう、たとえ今、東芝とソニーの記憶を消したとしても、次に魔神オカマが街に現れ、暴れたとしたら街中の人がその姿を目撃し大騒ぎになる。
警察、いや自衛隊、いやいやヘタすりゃ世界中の軍隊が動き出すかも。
そうなってしまったら、ちまちま記憶を消しても、ぜーんぜん追いつかない。
どうしようもないのだ。
「そこでじゃ……」
「うんうん……」
ヒエール様とミーちゃんが、あれこれ話していると、立ち止まって「囲み取材」状態だったリーちゃんとレポーター2名が勢いよく駆け寄ってきた。
「お姉ちゃーん」
3人とも何か困ったようなむつかしい顔をしてお互いを見ている。それはなぜか? ミーちゃんは大体見当はついているが、一応聞いてみた。
「どうしたの? 2人ともリーからちゃんと説明聞いた?」
東芝はリーちゃんの方をチラチラ見ながら、言いにくそうに答えた。
「うん……でも、神様に電気釜を連れてくるよう頼まれて、レイちゃんにシールを貼ってオカマを捕まえようとしたら爆発したって……何のことかさっぱり分からないんだけど」
「だってぇ……」
(はぁ、やっぱり……)
ミーちゃんは、一つため息をついて真顔で東芝とソニーに近づき、小声で囁いた。
「いい? 東芝君が昨日の夜見た怪物は、あなた達がこの前秘密基地とやらで見た電気釜なのよ」
「えっ?」
「それが色々あって、あんな姿になってしまったの。もっと詳しく知りたくない? 知りたいでしょ? 家に帰ったらランドセル置いてすぐリサイクルショップに来て」
「リサイクルショップ? どうしてリサイクルショップなの?」
「怪物の事に詳しい人(人じゃないけどね)がいるのよ、その人に会えば信じられない事も信じられるようになるから」
東芝とソニーは顔を見合わせて、少し考えた。ソニーは肘で東芝を小突いて言った。
「どうする? 東芝、行くのか?」
「ボクはいくよ。気になるし」
「じゃ、オレも行くよ」
「決まりね、それじゃ店の入り口で待ってるから」
東芝とソニーはうなずき、それぞれの家に帰っていった。リーちゃんは二人に手を振りながらミーちゃんに訊ねた。
「お姉ちゃん、あの二人リサイクルショップに呼んでどうするの?」
「ヒエール様達に会わせて、今までのことをちゃんと説明してもらうのよ」
「ふーん」
「ほら、わたしらも急がなきゃ」
リーちゃん姉妹は小走りに家路を急いだ。
程なくして家に到着。ソーラーの工事もほぼほぼ終わったようだ。工事用の足場の解体が始まっていた。子供部屋のベランダ付近でもお兄さんが忙しそうに作業をしている。
お兄さんに軽く手を振って挨拶しリーちゃん姉妹は、お出かけの準備を始めた。
「リー、タマシール持った? それと電気釜さんも出さないと」
昨夜、神社から脱出する時、抜け殻になったSR-18とサンヨーの戦闘スーツは子供部屋のクローゼットに袋に入れて隠してあった。ミーちゃんはそれを出そうとクローゼットを開けた。
「うんしょっと……ふぅ、結構重いわね、あの時は必死だったから何ともなかったけど」
ミーちゃんが袋を引きずり出して袋の口を開けたその時、サンヨーの戦闘スーツがホワッと光り、変形を始めた。
「やー、グニャグニャして光ってるー、キモーイ」
「リー! ヤバいわ! 早くベランダの網戸開けてっ!」
ミーちゃんは咄嗟にそう叫んだ。それを聞いてリーちゃんはダッシュで網戸を開けた。と、次の瞬間、戦闘スーツは帽子の形に戻り勢いよく部屋を飛びだしていった。
「わわっ! なんだなんだ? お、お嬢ちゃん今、部屋から黒い物がすごいスピードで飛んで行ったみたいだけど」
窓の外で足場を解体していたお兄さんは、勢いよく飛びだした帽子を見てびっくりし、足場から落ちそうになった。
「へ? い、いやー……気のせい、じゃない? あ、きっと燕よ、燕が屋根から飛んで行ったのよ」
リーちゃんは適当にごまかし、ニコッと笑って網戸を閉めた。そして、ミーちゃんの方を向きゴリラのような変顔をした。
「びっくりしたねぇ、急にどうしたんだろ? ウホウホ」
「きっとサンヨー君がカミテレコンを呼んだんだよ」
「凄いね、こんなに離れてても戻ってくんだ」
「感心してる場合じゃないわ、わたしたちも出かけるわよ」
リーちゃん姉妹は家電達を呼び出し、子供部屋を出た。
その頃、救急病院に入院中のサンヨーは……
グワッシャーーン!
「あわわわ」
病室の網入り窓ガラスをド派手にブチ破り野球帽が、サンヨーのベッドの上にファサッと着地した。
おやすみタイマーのせいで気分最悪だったが、いまの出来事で正気に戻って、そしてヘコんだ。
「どうしよう……また怒られる、かな?」




