72、コンポーダンボールの中のオカマ
72、コンポーダンボールの中のオカマ
リーちゃん達が取り囲む中、魔神オカマを封印したコンポーダンボールはカタカタと動いている。みんなで万歳三唱!したいところだが……
今は真夜中。静かに完全勝利をかみしめた。
レジャズも、ホッとした様子で指をパチンと鳴らした、冷凍庫の魔法は解除され、氷のオリが上から徐々に昇華していった。
しかしその中で一人、イマイチ納得のいかないのは五重丸。多少の手違いはあったがほぼ計画通り終了したのに、何かが気にいらない様子だ。
「なんかこう、セリフがわざとらしいんだな、わざと捕まったみたいな……」
「何言ってんのよ五重丸、捕まえたんだからいいじゃない。オカマってきっと、もともとこんなしゃべり方なんだよ」
「そうだぜ、さっさとヒエール様に渡してDSもらおうよ」
「何が気に入らんのか知らんけど、やり直しなんかせえへんで、バタンキューになってまうわ」
「う、うんそうだねジャブ君、ぼくの思い過ごし、かな?」
五重丸は後半の出来栄えに不満があるようだ。それに対しジャブは結果オーライ、さっさと帰って休みたそうだ。
サンヨーは相変わらず、ご褒美のDSのことで頭の中がいっぱいだ。
そんな中リーちゃんは、いたずらっぽく微笑み、地面に転がっていたコンポーダンボールを拾い上げて、両手でコロコロ転がして見せた。
「あんたよく触るね、そんなコロコロして出てきたりしないの?」
「お姉ちゃん全然大丈夫だよ、ほらっ」
「わっバカ!こっちに投げるなってもう、さっさとヒエール様に連絡しなさいよ」
いきなりコンポーダンボールを投げ渡され、ミーちゃんは迷惑そうに飛び退いた。コンポーダンボールは誰にもキャッチされずに地面に落ちた。
「ははっ、そうね、じゃオーチャイジュー」
リーちゃんはパチンコにしていたカミテレコンをカチューシャに戻し、頭につけようとしたとき、地面でカタカタ動いていたコンポーダンボールがピタッと止まり、中から弱々しい声が漏れてきた。
「ヒエール……さま? た、たす……」
「コラ!大人しくするギャ」
「ふぎゃっ」
コンポーダンボールの中から二人の声がする? リーちゃんはしゃがんで不思議そうに首を傾げた。
「あれ? 魔神オカマの他に誰か入ってるのかしら?」
「ん? 誰かって……ハッ! まさか」
五重丸はそれを聞いてハッとし、落ちているSR-18の本体に駆け寄り調べてみた。
「空っぽだ……」
「空っぽってどういう事? 五重丸」
「SR-18の中に残っているはずの神の御霊もいなくなっている。顔も手足も無いし、これはもうただの電気釜だよ」
「じゃ、SR-18はどこに行ったんや、死んでもうたんか?……いやー、夜中に怖い話やめてー」
「いや、今一瞬、コンポーダンボールの中から、魔神オカマじゃない別の声が聞こえただろ? と言うことは……」
五重丸達が話し合う中、封印されている魔神オカマが話しに割って入ってきた。
「ギャギャッ、どうやらバレてしまったようだギャ。そうだよ、お前らの探している神の御霊とやらは、その赤いガキに引きずり出された時、一緒に連れてきたギャ」
「ガ、ガキじゃない、オレはサンヨ……サンシャインレッドだ!」
「やっぱりそうか、お前わざと負けたんだな? 下手くそな演技しやがって」
五重丸の心配は的中した。魔神オカマは、リーちゃん達が自分を捕まえに来たことを知り、わざと負けたふりをしていたのだ。
「そうだギャ、魔神オカマとしてその電気釜から抜け出すため、わざと負けてやったのだギャ、ま、その後こんなものに閉じ込められるとは思ってなかったけどな」
「アハハッ、『魔神オカマとして』ってもとから魔神オカマじゃん。それにすぐ箱に閉じ込められてたら全然意味ねーじゃん」
コン!
サンヨーはそう言ってコンポーダンボールを蹴っ飛ばした。リーちゃんは慌てて転がってゆくコンポーダンボールを追いかけ拾い上げた。
「何すんのよもう、せっかく捕まえたのに出ちゃったらどうするのよ!」
リーちゃんはコンポーダンボールについた土を掃いながらサンヨーをキッと睨み付けた。そして、へこんだりしていないかな? と見ていると中から魔神オカマが話しかけてきた。
「大丈夫、この箱は蹴ったくらいじゃビクともしないギャ、居心地もまあまあだギャ」
「そうそう、オレも入ったことあるけど居心地は悪くなかったな」
コンポーダンボールに封印し安心したせいか、ジャブは魔神オカマと普通に話し始めた。
「そうか、お前も入ったことあるギャか、お前も何か悪い事をしたギャか?」
「ちゃうちゃう、コンポーダンボールの練習台になって1回だけな」
「じゃあ、この中がどんな感じだか分かるギャ?」
「うーん居心地は悪くなかったな。カプセルホテルみたいな感じっちゅうか」
「そうそう、一人ならな、じゃあ二人でこの中に入れられたら……どうギャ?」
「二人で? 二人はちょっときっついかな」
「だろ? 狭いんだよ……二人だとな……」
ゴブッ!
リーちゃんの手の中でコンポーダンボールは突然変な音を立てた。そして中がオレンジ色に光り出し、心臓が脈を打つようにじわじわと膨らんでくる。
「ありゃりゃ? どうしたの?」
「危ないぞ、バカッ! 捨てろっ!」
サンヨーは、キョトンとしているリーちゃんの手からコンポーダンボールを奪い取り、突き飛ばした。と、次の瞬間。
ボーーーン!
コンポーダンボールは爆発し、その勢いでサンヨーは吹っ飛ばされ、大きな木に激突し小さなうめき声をあげながらその場に倒れ込んだ。
「わー! 何で? 何で爆発したの? サンヨー、サンヨー大丈夫よね? スーツ着てるしパーシャルだって効いてるし、ね?」
サンヨーが盾になり、なんとか無傷だったリーちゃんは、レジャズにそう言った。
「ご、ゴメン……さっき冷凍庫の魔法を解いたとき、パーシャルも解いてしもてたわ……」
「えーーっ? じゃ、サンヨーは大丈夫、じゃないの?」
「ギャッギャッギャッ」
みんなが慌てふためく中、空の上から魔神オカマがゆっくりと地上に降りてきた。
「さ、第2ラウンドスタートだギャ」




