68、絶体絶命!
68、絶体絶命!
一瞬。
ほんの一瞬のことだった。
雪だるまの腹を貫き発射されたミサイルのような水蒸気の塊は、神社の入り口付近で偉そうなポーズで立っている、レジャズの冷凍室辺りに命中した。
そのまま後ろに倒れ込むレジャズ。
そして目の前にあった大きな雪だるまは、ボッと蒸発し、きのこ雲のような湯気となり夜空に消えていった。
霧が晴れるように湯気が消え去ると、そこには全く無傷の魔神オカマが立っていた。
「フン、くだらん罠を仕掛けるようなヤツは攻撃もショボいギャ。もっと遊んでくれると思ったのに」
「ウゥーバフバフッ」
「シーッ、ダメよベフちゃん、行っちゃダメ」
倒れたレジャズちゃんを心配して、駆け寄ろうとするベフをリーちゃんは後ろ足をつかみ、ガっと抱き寄せた。
「何だ、犬もいるのかギャ。あいつに止めを刺したら遊んでやるから待っとけギャ」
ベフの気配に気付き、魔神オカマは大きな木の方をチラッと振り返り、吐き捨てるように言った。
「あぁ……レイちゃん達、死んじゃったのかな……」
「体に穴が開いちゃったよね、死んでないとしてもかなりのダメージだよ」
ベフを抱きしめて、リーちゃん姉妹はへたり込み、動けなくなってしまった。
その横で、何とか戦闘スーツを装着し終わったサンヨーは二人に囁いた。
「レイちゃんがやられちゃったんなら、オレ達もう何もできないよ。ベフの魔法で家に帰ろう」
「はあ?」
帰る? 何その選択肢! サンヨーの何とも薄情な言葉にリーちゃんはブチ切れサンヨーの胸ぐらをつかんだ。
「何よあんた、大けがしてるレイちゃん達を見捨てて逃げて帰るって言うの? 何のために戦闘スーツ着てんのよ、ほんとヘタレなんだから!」
「そんなこと言ったってあんなバケモノ、子供とテレビと炊飯器じゃ勝ち目ないよ」
そんなことリーちゃんも分かっている。
五重丸は何となく戦い向きじゃない感じだし、ベフちゃんも勢いはあるがパワー不足だ。サンヨーの言う通り勝ち目はない。
「うう……」何も言い返せず涙ぐむリーちゃんにサンヨーは話を続けた。
「お前タマシール、まだ3枚持ってるんだろ? レイちゃん達がやられちゃっても、家に帰ってもう一度それを張り付ければ復活出来るんじゃないか? ここで全滅したら完全ゲームオーバーだぜ」
なるほど、残りのタマシールを使えば、やられてしまったレイちゃん達を復活できるかもしれない。ゲーム大好き男子小学生の思いつきそうな裏ワザ攻略法である。
2枚のタマシールを一つの家電に貼る付けると、大爆発をしてしまうリスクはあるが、タイミングに気を付ければいい考えかも知れない。
リーちゃんは涙をぬぐいちょっと考えた。そしてパチンコをサンヨーに見せながら言った。
「やっぱダメ、そんなの、レイちゃんはレイちゃんだけだもん、あたしがアイツにこれをぶちかましてやるわ」
リーちゃんはそう言って、ショルダーバッグからコンポーダンボールを一つ取り出し、パチンコを構えた。
魔神オカマを引っ張り出す前に、SR-18もろとも封印してしまおうということらしい。
封印した後はヒエール様に何とかしてくれるはずだ。
「わかった、私もやるわ」
ミーちゃんもボウガン型パチンコにコンポーダンボールをセットし構えた。
「2個撃ったらどっちか当たるよね」
「絶対上手くいくわ、せーのっ」
掛け声とともに発射された2個のコンポーダンボールは、魔神オカマに向かって一直線に飛んで行った。
「やった! 2個とも当たりそうよ」
コンコーン!
「いてっ何だギャ?」
コンポーダンボールは見事、魔神オカマに命中した、しかしコンポーダンボールは当たっただけで跳ね返り、ころころと地面にむなしく転がった。
「え? 何で? ちゃんと当たったのに」
残念ながらコンポーダンボールは家電達の魂を捕獲する神具。本体ごと活動している魔神オカマに使っても効果がないのだ。非常にまずい。
「おとなしく待っておれと言ったのに、待ちきれんのか? じゃ、先に始末してやるギャ」
魔神オカマは、振り返り、地面に転がったコンポーダンボールを踏みつけ、パチンコを持って呆然としているリーちゃん達を睨み付けた。フタの隙間から湯気が漏れ、カタカタ音を立てている。
ドーーーーン!
アツアツ水蒸気の塊が、リーちゃん達めがけて飛んでくる!
ベフはマーキングベフを使おうと、シッポコードを伸ばし始めたが間に合いそうにない。
リーちゃん達は逃れるように身を竦め、目をギュッと閉じた。
バァーーン!
リーちゃん達に向かってきた水蒸気の塊が命中する直前、何者かがサッと飛びだし、自ら盾になりそれを防いだ。
「た、助かったの? あたし達、あっあんたは……」
「痛ってぇー、でも何ともないや、スゲー、このスーツ本物だぁ!」
盾になってリーちゃん姉妹を助けたのは、サンヨーだった。少々ダメージはあったが、レジャズの体を貫くほどの威力のある攻撃を、何とはじき返したのだ。
「サンヨー……あんた……」
「ヘヘッ(オレってヒーロー? かっこいい?)」
「スーツ、後ろ前だよ」
「え?」




