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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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67、真夜中の戦い

67、真夜中の戦い

 その異様な邪気(じゃき)を感じたか、田んぼのカエルがピタリと鳴き止んだ。

 辺りはシーンと静まり返り、リーちゃん達の緊張感もMAX状態だ。

 何を言っているのか分からないが、あぜ道の方で魔神オカマらしき者の独り言が聞こえてくる。


 「お、おい、本当にアイツ来てんのか」

 「シーッ、動かないで。向こうからこっちは見えないけど、物音を立てたら気付かれてしまうよ。『実況生中継』で見てみよう」


 五重丸は少し離れた所にある7階建てマンションの防犯カメラにリンクし、神社周辺の様子を映し出した。

 そこにはあぜ道を歩く魔神オカマの姿が……


 「なんじゃこりゃ、シカどもがまたスクラップを集めてきたのかと思ったら、氷かギャ?」


 オカマは不機嫌そうな顔で、目の前の氷製廃棄テレビをキッと(にら)みつけた。

 すると、氷はみるみる溶け出し、消えてなくなってしまった。


 ブチ切れて、こっちにぶっ飛んでくるか……? レジャズは身構え攻撃の準備に入る。リーちゃん達は波板をかぶり、実況生中継の映像を食い入るように見つめた。


 「誰だギャ? こんなくだらん事をするのは……おや? 向こうにもスクラップが山積みになってるギャ」


 月明かりを浴び、鈍い光を放ちながら魔神オカマは、意外と落ち着いた様子でゆっくりこちらに近づいて来る。


 「思ってたのとちょっと違うな、あまり怒ってないけど大丈夫かよ」

 「レジャズちゃん、本気で怒り出す前にさっさと魔法でドーンって、やっつけちゃってよ」


 サンヨーとミーちゃんは、じりじりとこちらに迫ってくる魔神オカマの映像を指さし、レジャズに訴えた。レジャズは小さくうなずき、五重丸の方をチラッと見ながら立ち上がった。


 「よし、じゃあヤツが臨場感の境界線を越えて、一瞬ひるんだところに攻撃を仕掛けよう。準備しておいてくれ」


 レジャズは両手を腰に当て、偉そうな顔をした。最初の攻撃は「勝手に氷」のようだ。それを見てリーちゃんは大事なことを思い出した。


 「あっそうだ、カミテレコンをパチンコに変身させとかなくっちゃ」

 「そうね、わたしもしておかないと」


 リーちゃん姉妹はカミテレコンを手に持ち、そう言った。それを聞いたサンヨーは……


 「あ、これって変身できるんだったよな。オレも考えていたやつがあるからやってみよ」


 サンヨーもリーちゃん姉妹に続き帽子型カミテレコンを脱ぎ、手に持った。


 ミーちゃんはミミクリーボタンを押して目を閉じ、小声で「パチンコになあれ」と言うと、カミテレコンはぐにゃりと変形をし始めた。そして、ほぼ同時にその横で……


 「ミミクリクリクリ、パチンコになぁーれ!」


 リーちゃんが立ち上がり華麗(かれい)にポーズを決め、大声で叫んだ。


 「あっ、バ……」


 ミーちゃんは慌ててリーちゃんの服のすそを引っ張り尻もちをつかせ、文句を言おうとしたその時、続けてサンヨーも……


 「ミミクリ3年カキ8年戦闘スーツになーれっ!」


 多少間違っているが、元々でっち上げの呪文なので特に問題はない。サンヨーもリーちゃんに負けないくらいの声量で唱えた。


 「ば、バッカじゃない? 二人とも何デカい声出してんのよ! ポーズまで決めて、見つかっちゃうじゃない!」

 「わー! 三人とも何騒いでんねん!……えらいこっちゃ、見つかってもうたんちゃうか……いやーん」

 「カット! カァーーット! 四人とも静かに! あれ? サンヨー君、何持ってんの?」

 「ガルルルルゥベフッ! (五人ともうるせー) 」


 緊張のせいか、うっかり呪文を唱えてしまったリーちゃん。魔神オカマはフッと浮かび上がり勢いよくこちらに向かってくる。

臨場感の境界線を一気に突破し神社の中に入ってきた。

 まずい、非常にまずい。


 「なんじゃこりゃ、幻影(げんえい)かギャ。誰かいるのかギャ? シカか? 出てこいギャ」


 魔神オカマは再び着地し、警戒(けいかい)しながらこっちに近づいてくる。


 「やばっ、バレちゃったよ」

 「あんた達のせいでしょ、でっかい声だしてさ……? サンヨー君、何してんの?」

 「だってよぉ普通、変身したら自動で着替えれるんじゃねえかよ。きっちり畳んで出てくるなんて……えーこれどっちが前?」


 サンヨーは、カミテレコンを変身させた戦闘スーツを必死で着ようとしていた。そのデザインは、関節部分に金色のプロテクターが付いた赤い全身タイツとプロレスのマスクのように被るタイプのお面。つり目のゴーグルもついている。それはまるで……


 量販店で売ってるパーティグッズ並みのクオリティだ。


 「もーサンヨー、ガサガサしないでよ、アイツこっちに来ちゃうよ、レジャズちゃん……あれ? どこ行ったの?」


 グダグダしている間に、とうとう魔神オカマは大きな木の裏まで来てしまった。


 「そこにいるのは分かってるギャ、出てこいギャ」


 魔神オカマはガサガサ動いている波板を引っぺがそうと手を伸ばした。

 と、その時。


 ズーン!!


 突然、魔神オカマの頭上に大きな雪だるまが出現し、落下。

 魔神オカマを押しつぶした。


 「グギャッ」


 「お前の相手はボク、空飛ぶ冷蔵洗濯機レジャズ様やでー……ホレホレどっからでもかかって来んかい……来んかいって言っても雪だるまで(つぶ)れちゃってるもんねー、ザマミロー」


 実物大に戻ったレジャズちゃんは、月明かりを浴びながら神社の入り口付近にスゥっと着地し、魔神オカマを挑発した。


 「どこに行ったのかと思ったら、あんなところに」

 「なんだ、もうやっつけたのかよ。簡単だったな、次はオレの出番?」


 リーちゃん達は立ち上がり、かまくら位ある大きな雪だるまを見上げ、ホントにもうやっつけちゃったの? と思いながら雪だるまに耳を当ててみた。

 

 グツグツ……


 何か、ご飯が炊けるような音が、雪だるまの中から聞こえてくる。


 ドーーーン!


 突然、雪だるまの中から水蒸気の塊が発射され、真正面にいたレジャズを直撃、体が真っ二つに割れ、吹っ飛んでしまった。


 「わぁーっ! レ、レイちゃーん!」


 リーちゃんの悲痛な叫び声が神社に響き渡った。


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