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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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64さあ、出発だ

64、さあ、出発だ

 (美香ちゃーん)      (香織ちゃーん)

     (みかちゃん、かおりちゃん)            (みかー、かおりー)

  {みかおり}     {みか……かおり……りんご、ごりら、らっぱ……}

    {よぅ、しりとリー}     {ぷぷぷのプー}     {ぷーーー}


 「違うもん! しりとりじゃないもん」 

 {パンツ、つけもの、くっさー}

 (汝は、自分の、名前が、嫌いなのか、ヴェ?)

 「だって、変なあだ名付けられるし……」

 (一度付けた名前は変えられないヴェ)

 「紗谷(しゃたに)ちゃん……シャープちゃんみたいなキラキラネームがよかったなぁ」

 (では我が特別に名前を変えてやるヴェ)

 「え?本当に?」

 (我は神、出来ない事はないヴェ。では今から汝はボケナスタ-ババマミーレじゃヴェ)

 「ヤダーそんな名前、あっ返してよぉあたしの名前……」

 {やーいやーいババマミーレ}

 {くっさー}

 (ではこの「香織」という名はもういらないから燃やしてしまうヴェ)


 ボッ……メラメラ


「やめてー! 燃やさないでぇぇ、あちあち、熱いよー」


 ガバッ


 「ハアハア」


 「おはよーリーちゃん、寝苦しかったー?ごめんねー」

 「リー大丈夫? 気分はどう? うなされてたみたいだけど」


 先に目を覚ましたミーちゃんは、首の後ろを押さえながら、顔汗ブリブリで起き上がったリーちゃんに声をかけた。


 「うーん……怖い夢見てたみたいで、ヒエール様も出てきて最後は名前を燃やされて、すごい熱かった」

 「名前を燃やされた? 夢みたいな話ね」

 「だから夢の話だよ、夢の。お姉ちゃんは?」

 「寝違えたのかな、ちょっと首が痛い」


 時計を見ると0時30分過ぎ。すずちゃんの魔法、おやすみタイマーはきっちり作動し、姉妹を寝苦しく目覚めさせた。

 寝起きは最悪……とまではいかないが二人ともいつもより寝起きが悪い。でも3時間しか寝ていない割には、体の疲れは十分に取れているし、徐々に気分も良くなってきた。


 ナツメ球の薄暗い灯りの中、姉妹は物音を立てないよう静かに着替えを始めた。


 こんな夜中にお出かけするのはもちろん初めてだ。

 親にナイショでこっそり家を抜け出す悪い子になったみたい……そんな気分で先に着替え終わったリーちゃんは窓際に行って、カーテンをそっと開け外の様子を伺った。

 この辺りはもともと静かな住宅街、深夜だとさらに静かで、音といえば大通りを走る車の音や、もっと遠くを走っている電車の音が微かに聞こえるくらいである。


 「アイツもちゃんと起きてるかな」


 リーちゃんはカーテンの隙間(すきま)からサンヨーの家の窓を見た。

 先にタイマーをかけられたサンヨーはその分、先に目を覚ましたが、なにやらしょんぼりした顔でベッドに腰を掛けている。

 寝起きが悪くってふてくされているのかしら? そう思ったリーちゃんはカミテレコンで聞いてみた。


 「もしもーし、おはよー、気分はどう?」

 「……最悪だ」

 「どうしたの? 怖い夢でもみたの」

 「……おねしょした……」

 「うわ、最悪。お姉ちゃんどうしよう、あいつおねしょしたって」


 それを聞いたミーちゃんは(あき)れ顔で()き捨てるように言った。


 「もう、タオルか何かで体拭いてさっさと体操服に着替えなさいよ」

 「もしもし、お姉ちゃんがさっさと体操服に着替えなさいって。おねしょは作戦が終わってからジャブ君に何とかしてもらいましょ」

 「ほんと? ジャブって、おねしょ何とかできるのか?」

 「知らないけど洗濯機なんだから、なんとかなるんじゃない」

 「……そうかな? そうだよな! 洗濯機だもんな」


 おねしょを何とかごまかす事が出来そう? なのでサンヨーも少し元気が出てきた。

 湿ったパジャマをゴソゴソと脱ぎにくそうに脱いで、丸めてベッドにポイっと捨て置いた。

そしてリーちゃんが見ているのも気にせず、パンツも脱ぎ始めたので、リーちゃんは迷惑(めいわく)そうな顔でシュッとカーテンを閉めた。


 「もう、エッチなんだから、あのバカ」

 「リー、こっちもそろそろ家電達を呼び出して準備しなきゃ」

 「そうね」


 リーちゃんはカミテレコンで家電達を次々と家電達呼び出した。


 「リーちゃんおはよう、いよいよやな」

 「おはよう、スケジュール通りだね、5分後には出発できそうだね」

 「おー? リーちゃんもミーちゃんもよそ行きの恰好(かっこう)して、気合入ってんなぁ」

 「アオアオアオーン、ベフッ」


 レイちゃん以下、家電達も元気いっぱいだ。ベフは満月を見て遠吠えをした。


 「じゃあ、予定通りレイちゃん、ジャブ君、すずちゃんは融合合体して新製品『空飛ぶ冷凍機能付き全自動洗濯機』になってくれ。そしてボクとベフ、リーちゃん達を乗せてサンヨー君を迎えに行くんだ」

 「レイちゃん、サンヨーの奴おねしょしたんだけど」

 「えー! かんにんしてぇな、キッチン家電は清潔が一番やのに……」

 「寝ションベンかいな、もう、しゃーないヤツやな、サンヨーは乗り込む前にオレがサクッと洗ったるから、それでエエやろ?」

 「う、うん」

 「へえ、人間でも洗濯出来るんだ」


 リーちゃんの口から出まかせかと思いきや、ジャブ君は何でも洗濯できるようだ。さすが魔法の洗濯機。


 「じゃ、時間もないし融合合体、行くでぇ。せーのっバビエオ!」


 トリセツは光を放ちながら一つの玉になり三人を吸い込んだ。そして光の玉は一気に膨張(ぼうちょう)し、中から一人の家電達が現れた。


 「テッテレーッ空飛ぶ冷蔵洗濯機レジャズやでー……よろしゅうたのんまっさ……キャーでっかいー」


 現れた新製品はレイズの時より一回り大きく、関西系コテコテ感も一段とパワーアップした。


 「おおおぉ、トリプルバビエオはハンパないな、すごいパワーを感じるわ。これやったら魔神やろうが暇人やろうが負ける気せーへんなぁ……おいおい暇人に負けてどーすんねん……すんねんキャッホーイ」

 「……強そうだけど、めんどくさそうね」


 若干の不安がよぎる中、レジャズはベランダの外側にふわりと浮かんだ。五重丸が先に乗り込み臨場感パブリックモードでレジャズの姿を消す。続いてリーちゃん姉妹、最後にベフがぴょんと飛び乗った。

 

 「魔神オカマ捕獲作戦御一行様、間もなく発車しまーす。えー、次はサンヨー家、サンヨー家」


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