63、夢の中へ
63、夢の中へ
ゴワーーー
「お姉ちゃん、今何時?」
「え? 聞こえない、何って?」
早く寝るために、見たいテレビも我慢してお風呂に入ったリーちゃん姉妹。
普段はお母さんにドライヤーをかけてもらっているが、今日はミーちゃんが慣れない手つきでリーちゃんの髪の毛を乾かしている。
「あーっ! もう、ボサボサじゃん、ヘタクソ」
「ぜいたく言わないの、お母さん忙しいって言うから乾かしてやってんのに」
「ぶー」
あとは、歯を磨いてすずちゃんにおやすみタイマーをかけてもらうだけ、見たかったテレビは五重丸が録画してくれているし。
そうそう、迷っていた着ていく服も決まった。
リーちゃんはピンク色のクマさん柄Tシャツにハイビスカスのミニキュロットと赤色のスパッツ。
そしてミーちゃんは、黒のLOVEなんちゃらって書いたオフショルダーシャツに、ダークグレーチェック柄の超ミニフリフリスカートに黒のレギンス。
「あんた、それ夜に目立ちすぎじゃない?」
「お姉ちゃんこそ、そんな真っ黒けだとどこにいるかわかんないよ」
と、まあお互いに「かぶらないよう」選んでいるとこうなってしまった。
………時刻は午後9時過ぎ………
「サンヨー君どうしてるかな、やっぱり寝ない気かしら」
「たぶんね、すずちゃんに寝かしてもらうからいいけど、お風呂は入っておいてもらわないとね、クサイから。ちょっと聞いてみようか」
リーちゃんはカミテレコンでサンヨーに連絡をした。
「もしもし、なんか用?」
たまたま子供部屋にいたサンヨーはすぐに帽子をかぶり返事をした。
「あんた、準備は出来てるの? お風呂はいった? 歯磨いた?」
「な、何だよ母ちゃんみたいに……オレはいつも晩御飯の前の風呂入るから、夜はずっとパジャマだよ」
「ご飯の前にお風呂入るの? なんで?」
「お母さんが汗臭いっていうから」
(やっぱり)
「それに、オレ準備なんか何もないし、寝ないから出発前に着替えるくらいかな」
「あんた、何着ていくの?」
「体操服」
「え?」
女子チームは着ていく服で、あんなにもめてたのに体操服とは……ま、動きやすいし、そういう意味ではサンヨーのチョイスが正解かもしれない。
「まあいいわ、お風呂に入ったんなら。じゃあまた後でね」
「え? それだけ? なんでそんなこ……」
プチ
リーちゃんはさっさと通話を切り納得したかのように笑い、ミーちゃんに報告した。
「お姉ちゃん、あいつもうお風呂入ってパジャマだって」
「あらそう、寝ないって言ってた割にパジャマ? ……ふーん、いつもそうなんだ。じゃ、もう先に寝かしちゃう?」
「そうね、あたし達の後でいいかと思ってたけど、魔法で寝させられちゃうって、どんな感じか見てみたいし……そうしようか、ぐふふっ」
サンヨーを魔法の実験台に……と、リーちゃん姉妹は、悪代官と越後谷の悪だくみシーンのような顔で低く笑い、すずちゃんと五重丸を呼び出した。
「どうしたんだい? 出発にはまだちょっと早いけど」
「五重丸、あのね……」
何で呼ばれたか分からない五重丸にミーちゃんが説明をした。それを聞いて五重丸のプロデューサー魂に火が付き、素早く脚本を組み立てだした。
「じゃ、まずターゲット(サンヨー)に気付かれないように、すずちゃんが侵入しなければいけないから、立ち位置を決めなくちゃ。こっちからもよく見えるように窓際がいいね」
「え……そう?」
「うん、だからリーちゃんがカーテンを開けて窓際に立つよう言ってくれるかな、そして『今夜がんばろうねー』って手を振ってほしいんだ」
「えー? 何でそんなこと」
「どうせなら笑顔からのいきなり寝落ちの方が、面白いだろ」
「……面白くなくてもいいんだけど」
とにかく作戦決定。すずちゃんはサンヨーの家に向かい、リーちゃんはカミテレコンをかけた。
2階にいたサンヨーは子供部屋でビチビチ音がするのを聞いてめんどくさそうに子供部屋に向かった。
「何だよ、今度は」
「あーごめんごめん、ちょっとさぁ子供部屋のカーテン開けてこっち見てくれる?」
「? カーテン? ちょっと待って」
サンヨーはカーテンを開けリーちゃんの家の方を見ると、窓際にパジャマを着たリーちゃん姉妹がこっちを見ているのが見えた。
「今晩がんばろうねー」
カミテレコン越しに声が聞こえ、笑顔で手を振っているのが見えた。ちょっとドキッとしたサンヨーも半笑いで照れながら手を振った。
そして、その背後からすずちゃんがそーっと近づき……「おやすみタイマー」を3時間にセットして呪文を唱えた。
「眠れ良い子よ~♪」
呪文を聞いて驚き、振り返ろうとした瞬間、サンヨーは白目をむいてその場にドサッと倒れ込んだ。
「うわ、一瞬で寝るんだね。ちゃんとベッドに入っておかないと変なとこで寝ちゃうんだ。気を付けないと」
サンヨー家では、物音に気付いたお母さんが子供部屋に来て窓際で変な恰好で寝ているサンヨーを見つけ、おしりをペシペシ叩いている。起きないのでサンヨーの口元に耳を近づけ息をしているか確認し、
「もう、しょうがないわね」
そう言って、サンヨーをそっと抱き上げベッドに運んで行った。
そしてカーテンが閉められ、部屋の明かりが消えた。
こういう事がよくあるのか、扱いが雑で助かった。驚いて病院にでも連れて行かれようものなら今夜の作戦が台無しになる所だった。
「サンヨー君の表情、実によかったね、録画しておけばよかったな。じゃあボクは本体に戻るよ」
五重丸はそう言ってリビングに戻って行った。
「あたしたちもそろそろ歯磨いて寝なくちゃね。じゃあすずちゃんお願いね」
リーちゃん姉妹は、帰ってきたすずちゃんにそう言って歯磨きをしに1階へ降りていった。
「わかったー、次はリーちゃん達を夢の中へごあんなーい、ねー」




