61、ウイッチすずちゃん
61、ウイッチすずちゃん
「昨日さぁ、スーパーで地デジカ見たよ」
「あっ私も見た見た、ってかあちこちにいっぱいいたねえ」
「キャンペーンで日本中を周ってるんだって。私ステッカーもらったよ」
「私はウチワもらってサインもしてくれたよ。いいでしょ、松下さんも何かもらった?」
地デジカキャラバン隊を送り出した側のリーちゃんは当然見に行ったりはしていないので、歯切れの悪い口調で答えた。
「べっ、別に……へぇ、地デジカってサイン出来るんだ」
「当たり前でしょ、中に人間が入ってるんだし」
「……ははっ、そうだよね、何言ってんだろあたし」
登校班の話題は昨日の「地デジ化キャンペーン全国縦断キャラバン」で持ち切りだ。町のいたるところでキャンペーンを行い、町の人たちほぼ全員と触れ合ったようだ。みんな「本物」の地デジカだとは気づいていないようだし大成功だね。
「昼間にキャンペーンやってさ、夜中には町の掃除もしてたらしいよ。えらいねえ地デジカの中の人」
変装の方は……しっかりバレてるし。
地デジカとしての誇りをかなぐり捨てて頑張ったのに……でもまあ、不法投棄家電回収のボランティア活動と見られていたのだから結果オーライか。
「出された命令は(そこそこ)聞いてくれる」
大成功! ではなく今回もそこそこの成功だったようだ。
「1、2、3、4……全員そろったね」
班長さんが全員来たことを確認し、登校班はドーナツ公園を出発した。リーちゃん姉妹は並んで歩き、話の続きをしながら歩いた。
「ところでさ、さっきいいやり方考えたって言ってたけど、どんなやり方なのさ」
「ああ、コンポーダンボールの事ね、きのうベッドに入ってから思いついたの。これを使うのよ」
「あたま?」
「違うよ、これこれ、カミテレコンだよ。今ここでは出来ないから学校が終わってからね」
リーちゃんはそう言って、フフンと笑った。
「そうね、じゃそれは家に帰ってから教えて、はぁ……それにしてもあんたもサンヨー君も余裕だね」
「え? 何が?」
「何がって、今晩の作戦に決まってるでしょ、あんた平気なの? わたしはどんだけ早く布団に入っても寝れる気しないわ。心の準備もできてないのに」
「でも、すずちゃんはわたしに任せといてって言ってたよ」
「それはすずちゃんが起きる時間になったら起こしてくれるってことでしょ、問題はぐっすり寝られるかってことよ、ヘタしたら一睡もできないまま起こされちゃうわよ」
リーちゃん達の年代だと大体8~10時間の睡眠が理想的である。9時半に布団に入っても3時間後には起きなくてはならない。ちゃんと寝られたとしても全然、睡眠不足だ。
サンヨーが言っているみたいにサクーッといけば帰って少しでも寝られるのだが、上手くいく保証はないし……
魔法攻撃や融合合体、それに魂を封印するコンポーダンボール、準備は出来ているが、油断はできない。
あれこれ考えていると寝られるわけがない。
普通は。
「あっ、セミが鳴いてるねえ、今年初めてかも」
「……あんたは寝られそうね、羨ましいわ……」
ジュワジュワジュワ……シャーシャーシャ―シャー……
ジリ……
お昼前、シャーシャー鳴いていたセミが鳴き止むころ、お道具箱をぶら下げたリーちゃん姉妹が学校から帰ってきた。
お昼ご飯の「特製ソース焼きそば目玉焼きのせ」をペロッと平らげ、ドドドドーッと子供部屋へと向かった。
「おかえりー、リーちゃん、ミーちゃん」
「あ、すずちゃんただいまー」
すずちゃんにただいまの挨拶をしたリーちゃんは、早速すずちゃんに質問した。
「ねえ、すずちゃん、朝、あたしが夜中に起きられないって言ったら『私にまかしてー』って言ってたよね、起こしてくれるの?」
「んー、ちょっと違うんだー、3時間しか寝てないと二人とも眠くって起きてくれないでしょー、だから魔法を使うのー」
「魔法?」
「そぉー、魔法『おやすみタイマー』を使うのよー、私の魔法、空を飛ぶだけじゃないんだからー、ウイッチすずちゃんよ、キャー」
※「おやすみタイマー」相手を選び、タイマーをかけると、その相手はタイマーが作動した瞬間眠りに落ち、タイマーが切れるまで眠り続ける。タイマーをかけた時間の長短にかかわらず、ぐっすり寝た効果を得ることができる。
「ふーん、じゃこの魔法を使えば、3時間寝ただけで疲れが取れて、パッチリ目が覚めるのね」
「うーん、疲れは取れるんだけどねー、3時間後タイマーが切れた時はねー、ははっ」
「ははってすずちゃん、何なの? スッキリ目が覚めるんでしょ?」
「ごめんねー違うのー、寝苦しくって目が覚めるのー、扇風機のタイマーだしー」
寝苦しくって目が覚める?
それって夏のあるあるだね、扇風機やエアコンが切れた途端、暑くって目が覚めるアレ。
「何それ、じゃ、疲れは取れてるけど、寝起きは最悪ってことなの?」
「大丈夫ー、最長の3時間タイマーならそんなに寝起きは悪くないよー、タイマー時間を短くする程、寝起きは最悪になっていくのー、疲れは取れるんだけどねー」
「でもさ、すっごい疲れていて、タイマーが切れたのに気づかないで寝過ごしてしまうってことはないの?」
そう聞かれてすずちゃんは自信満々に即答した。
「大丈夫よー、ぜーったい目が覚めるくらい寝苦しいから、まかせといてー」
「……いやな所に自信あるのね。じゃ、タイマーを10分位にしたらどうなるの?」
「そぉねー、疲れは十分取れるけど気分最悪で、丸一日お部屋に引き籠っちゃうかなー」
起きた意味ないよね、それじゃ。
「そぉなのー、だからタイマー最長の3時間がおススメなのー、どーするー?」
「……じゃ、3時間でお願いするわ」
「わかったー、じゃ、9時半までにパジャマに着替えて寝る準備しておいてねー」
これで睡眠の方は一応、解決。さて、次は……ミーちゃんはリーちゃんに訊ねた。
「ところでリー、カミテレコンでコンポーダンボールをどうするのさ」
「あっそうそう、あたしも思いついただけでまだやったことないの。今からやってみるね」
そう言ってリーちゃんはカミテレコンを右手に持ち、頭上に高々と掲げた。
「ミミクリクリクリ……」




