表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
6/154

6、お昼ご飯

6、お昼ご飯

 チャーハン。

 松下家休日の定番昼食。手っ取り早く出来てみんなが好きなので毎週大体これだ。

 味付けや具は冷蔵庫の中にあるもので多少変わるので同じものは2度と出来ない。今日は味付けにケチャップを使ったので、ややチキンライスよりのチャーハン、でもチキンは入っていない。ハムやらチクワその他いろいろ……


 「いっただきまーす」


 いつものように家族全員でお笑い系クイズ番組を見ながら、定番の炒飯を食べる。いつもと変わらない休みの日の昼食。テレビがやたらとデカくなった事、リーちゃんにしか見えないちっちゃい冷蔵庫が後ろで体育座りしている事以外は。


 「データ放送って便利だよな、番組表もこれ押したらいつでも見られるし、dボタンで天気予報見たりちょっとしたゲームなんかもできるし……」


 「むしゃむしゃ、ガツガツ」


 「それにほら、データ放送見ている時って番組の画面が小さくなるし……」


 お父さんはリモコンをカチャカチャ触りながら、自分がクソでかいテレビを選んだことが間違ってなかったこと、と言うより寸法も考えずにテキトーに買ってしまったことを何とか結果オーライに持ち込もうと、大画面テレビのメリットをアピールした。


 「やっぱりこれ位大きい方がいいんだよ、これからのテレビは……」


 「むしゃむしゃ、むっ、ブホッ お、お茶、お茶」


 「……ハァ」


 お父さんは人の話も聞かず、もの凄いスピードで炒飯を()っ込み、むせる我が娘を見て呆れたような顔で呟いた。


 「……凄い食べっぷりだねえ、そんなにお腹空いてたのかい?」


 「ホント、なんかやっとこさエサにありついた野良犬みたいよ?もうちょっとお行儀よくしなきゃ、女の子なんだからさぁ」


 お母さんも呆れ顔でミーちゃんに注意した。


 「アハハッ、腹減ペコだったんだよ~ワンワン」


 リーちゃんを注意するお姉ちゃんが犬のマネをしてすかさず突っ込む。みんなお父さんの話なんか、全然聞いていない。


 「モグモグ、おくぁあさん、ぐぉはん食べ終わったら、あすぉびに行っていい?モグモグ友達と遊ぶ約束してるし、ブッ」


 特にリーちゃんは一刻も早く炒飯を平らげ、適当な用事をでっち上げて、ヴェーのおじさんを探しに行くことしか考えてない。


 「リー、食べながら話するのはやめなさいって、もうホントにお行儀悪いんだから……遊びに行ってもいいけど、おやつの時間くらいには帰ってくるのよ。ホレ、ちょっとこっちに来て」


 まだ炒飯をモグモグしながら椅子から立ち上がり、出かけようとする我が娘を呼び寄せ、口の周りに付いたケチャップやらをウエットティッシュでふき取り、おかっぱ頭を手串でちゃちゃっと整えながら、変なところにご飯粒なんかがついてないか確認し、ポンッと肩を軽くたたいてうなずいた。


 「よしっ、こんなもんね。じゃあいってらっしゃい、車に気を付けるのよ。あ、それと今日は暑いから水筒も……」


 そう言いながらお母さんは、水筒にお茶を入れるためキッチンの方に行こうとしたが、リーちゃんはお母さんのTシャツを引っ張り呼び止めた。


 「あー、いい、いいよ、今日は飲み物は大丈夫……みたいだから」


 呼び止められたお母さんは「へ?」みたいな顔をして振り向いた。


 「あら、そう?じゃあ、いいけど日なたでばっかり遊ばないでちゃんと休憩するのよ。それで、おやつの時間くらいには帰って来なさいよ、さっきも言ったけど」



 「はーい、りょーかいでーす! 行ってきまーす」


 普段ならドドーッと、お母さんに怒られるほどの勢いで階段をかけ降りたいところだが、今日はレイちゃんがいるので手をつないでのそーっと、歩いて部屋を出ようとしていると……


 「リー、何でリレーでバトンもらう時みたいなポーズしながら歩いているの? あんたさっきから何か変よ?」


 妹が変な行動をするのは今日に限っての事ではない。大抵は笑いをとるためのボケ的なものだけど小声で何かブツブツ言いながら、不自然なポーズでのそーっと出かけようとしているのは実に怪しい。

 一方、リーちゃんはレイちゃんと手をつないでいるだけなので別に変なかっこうをしているつもりは無かったが、レイちゃんが見えない他の人からはそんな風に見えるらしい。これはマズイ。


 「え? あぁこれはね、昨日体育の時間にリレーの練習したから、ちょっとマイブームなの。はい、リーリー、リーリーっと。じゃあね」


 適当にごまかしてリーちゃんはレイちゃんの手をギュッと握りしめてリーリー言いながら階段を降りて行った。ミーちゃんは疑惑の目で階段下をのぞき込んでいたが、お母さんに「食事中にウロウロないで! さっさと食べなさい」と注意され、不満そうな顔をしてリビングの方に戻っていった。


 「ホント、お姉ちゃんは……どうでもいいことはよく気が付くんだからやんなっちゃう。ほらレイちゃん行くよ、大丈夫? 一人で歩ける?」


 「うん、階段はちょっと怖かったけどだいぶん慣れてきたからもう大丈夫。でも外に出るのは初めてだしドキドキするなあ」


 リーちゃんはせかせかとクロックス風のサンダルを履き、玄関のドアを開けた。

 レイちゃんもしっかり歩けているようだし、変な目で見られないよう外では手をつながずに並んで歩く事にした。

 リサイクルショップまで子供の足でも大体15分位、お母さんとよく買い物に行くスーパーの近くで道順もよく知っているので小1のリーちゃんでも一人で行ける、たぶん。

 リサイクルショップの「リサちゃん」ヴェーのおじさん、まだいるかなぁ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ