59、変装リハーサル
59、変装リハーサル
色々あったが、神社でのロケハンも無事終了。
キャラバン隊を見送り、リーちゃん達は、家へと向かった。
「あっ、見てみて、あたしの家の屋根」
リーちゃんが指さした方を見ると、屋根の上で工事のお兄さんが二人、汗だくで作業をしている。ソーラーパネルを取り付ける基礎工事をしているようだ。
「わーすごく暑そうね」
「シーッ話しちゃダメ、聞こえるわよ」
お兄さん達を横目に見ながらレイズちゃんは、ゆっくりと垂直降下。見つからないようにコソーリ、家の隙間に降りた。
「ただいまー」
「お帰りー、手洗って、オヤツのドーナッツがあるから……」
「わーい」
ドドドドドドドドド
「こらーっ階段をドスドス……」
と、いつもの御帰宅ルーティンをこなし、階段を駆けあがっていった。ジャブ君はそれを洗面所のドアから顔をのぞかせ、敬礼のようなポーズで右手を上げ見送った。
「じゃあオレは本体に戻って、屁こいて寝るわ、ほなっ」
レイちゃん達キッチン、リビング組もそれぞれの本体に戻り、すずちゃんも3階へ上がっていった。
お母さんにバレないよう小さく手を振ってみんなを見送り、ふとテーブルの上を見ると、オヤツのドーナツとチラシが一枚置いてあった。
「あ、地デジ化のチラシだ」
「ああそれ、ついさっき家の前を地デジカが通ってね、くれたのよ。スーパーの前でキャンペーンやるから見に来てねって。もうちょっとしたら買い物行くから、オヤツ食べたら一緒に見に行く?」
氷の入ったオレンジジュースをテーブルにカランと置きながらお母さんが聞いた。
「地デジカ? うーん別にいいけど」
「あら、そう? ふーん地デジカには興味なしか」
興味ないっつーか、神社で60匹の地デジカを見たところだし、今さらわざわざ見に行く気にはならない……
あ、そうか、これが五重丸のネライなんだ。あちこちに地デジカを出没させ、町中の人と絡ませそのレア度を犬猫並みに下げる。そうすれば夜中に地デジカに出くわしても大騒ぎにはならない……かな?
「それにしても最近の着ぐるみってよくできてるわね、まるで本当の動物みたいだったわ」
「ぶっ」
リーちゃん姉妹はオレンジジュースを吹き出しそうになった。
ハハ……そりゃそうだわ、なんせ本物だもん。動物じゃないけどね。
本体に戻った五重丸もそれを聞いてクスクス笑った。
「じゃ、ちょっと買物に行ってくるから、食べ終わったらお皿とコップ、流しに置いといてね」
「わかったー、いってらっしゃーい」
支度をしてお母さんはスーパーに買い物へ、ドアがバタンと閉まり、ママチャリの走る音が遠ざかっていく。五重丸はそれを確認し、話し始めた。
「今夜地デジカに不法投棄の家電を集めさせるから、リーちゃんボクとすずちゃんを出しておいてほしいんだ。夜中だからボク達だけでやっておくよ」
「わかった、でも見たかったなぁ、変装した地デジカ」
「あ、そうか。そうだね……じゃあ今からリハーサルをしよう。リーちゃん達の意見も聞きたいからね。いでよ地デジカ、一匹だけ」
五重丸は、呪文を唱え、地デジカを一匹呼び出した。リーちゃんの「見てみたい」という要望と、変装の完成度を確認するためだ。呼び出された地デジカは命令を待っている。
「今夜、君たちに不法投棄の家電を集めてもらうんだけど、地デジカだとバレるとマズいのでちょっと変装してほしいんだけど。今からそのリハをやるからね」
「オーケーィデジデジッ!」
「リーちゃん、地デジカとばれないようにするにはどんな変装すればいいかな?」
「うーん……そうねえ」
リーちゃんとミーちゃんは地デジカをマジマジ見て考えた。地デジカはちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「まず、ツノね」
「そうそう、人間にはツノ無いから。あと、顔が思いっきりシカだし何とかしないと」
スポッ
それを聞いて地デジカはツノを引っこ抜いてレオタードの脇にしまった。そしてマスクとサングラスを取り出し、装着してポーズをきめた。
「うわ、すごい、抜けるんだ! 痛くないのかな? 色々出てくるねレオタードの中から……でも夜に家電集めするんでしょ? サングラスは怪しくない?」
「ウーン、デジデジッ」
「さすがミーちゃんだね、ボクは気付かなかったよ」
ミーちゃんのダメ出しにあい、地デジカはサングラスを外し、代わりにキャップをかぶってみた。
「オーケーィ? デジデジッ」
「完璧だね、どこから見ても面長の人間にしかみえないね」
「あー、だめだめ。レオタードに思いっきり『地デジカ』って書いてあるじゃん」
次はリーちゃんがレオタードにクレームを付けた。地デジカはしぶしぶ服を取り出し、青い芋ジャージに着替えた。
「オーケーィデジデジ……」
「なんか、悲しそうね」
「私服に着替えて地デジカ感がほぼゼロになったからね。でもこれで、どこから見ても深夜ウォーキングしている面長のお兄さんにしか見えないだろ?」
「え、私服? 持ってるんだ……ダサいけど」
「シーッ、リー可哀そうじゃないダサいだなんて。ちょっと怪しいけど、夜だしこれ位でもバレないんじゃない?」
「デジ……」
「気の毒やな、キャンペーンを命令された地デジカとは別の人、いやシカみたいや」
カウンター越しに見ていたレイちゃんも、地デジカに同情した。
「よし、変装はこれでいいよね、じゃ地デジカ君、今夜呼び出した時、この恰好で出てくるようみんなに命令してくれ、ご苦労さん」
「デじぇじぇっ!?」
嫌な役割を命令された一匹の地デジカは、シカなのに猫背でトボトボと雲の輪っかに消えていった。
「向こうにいる地デジカ達、あの地デジカの言う事聞いてちゃんと変装して出てきてくれるかしら」
「大丈夫だよ、命令は(そこそこ)聞いてくれるんだし。命令の命令だって聞いてくれるよ」
とりあえず、リハーサルは無事終了。本番までに地デジカのやる気が上がってくれればいいのだが……
一方、魔神オカマは雲の中から町を見下ろし、町の様子が少しいつもと違うのに気が付いた。
「なんだギャ? 今日はやけに地デジカがのさばっているギャ。なるほど、キャンペーンか。結構なことギャ、買い替えが増えればまた不法投棄も増えるギャ、ケケッ」
魔神オカマは不敵な笑みを浮かべた。




