58、キャンペーン、デジデジッ
58、キャンペーン、デジデジッ
「地デジカに不法投棄の家電を探さすんかいな」
「そうだよ。地デジカは人気者だから、昼間は人が集まってきて大変だからね。夜中にコッソリ探してもらおうと思ってるんだ」
五重丸以外、全員、
「ムリだろ」
と思った。
魔法で呼び出した妖精のようなものだと言っても、目立ってなんぼのゆるキャラだよ。コッソリ家電集めなんてできる訳がない。
「五重丸、いくら夜中やゆうてもコンビニもやってるし車も走ってるやろ? 絶対誰かに見つかるって」
「でも『地デジカは頼んだことを(なるべく)聞いてくれる』ってトリセツに……」
「それそれ、その(なるべく)ってトコがめっちゃ怪しいんやけど」
「うーん……」
みんなのダメ出しにあい五重丸はしばらく考え、そして何か吹っ切れたような顔で、両手の親指と人差し指でL字を作り呪文を唱えた。
「いでよ、地デジカ!」
「えーーーーーっ」
「わわわ、五重丸!夜でも目立つのに昼間は余計アカンで」
「そうよー町中大騒ぎになっちゃうよー、ヤダー」
「キャイーンキャイーン」
何の説明もなく、いきなり地デジカを呼び出した五重丸。どこからか突撃ラッパのような音が聞こえ、リーちゃん達は慌てて獣道の方へ移動した。
神社の横辺りに、前回と同じく雲の輪っかが現れ、中から地デジカがカポカポ走り出してきた。
「ここ、そんなに広くないし、いっぱい出てきたらあたし達押し出されちゃうよ」
「1,2,3……11,12、じゅう、あれ?」
ミーちゃんが地デジカの数を心配そうに数えていると、これ以上ムリ、と思ったその時13匹目の地デジカが、雲の輪っかから一瞬顔を出したがまた中に引っ込んで顔だけ出して様子を伺っている。
「地デジカは、何十匹、何万匹いるのかボクも知らないけど、呼びだされた場所に出られるだけしか出てこないんだよ。地デジ化キャンペーンのゆるキャラだからね、催し物会場をぶち壊すほどの数は出てこないんだ」
そうか、この前リサイクルショップで五重丸が悪ノリで呼び出した時も、出てきたのは50匹位、ちょうど展示コーナーに収まるくらいの数だった。五重丸が数を指定しない限り適切な数しか出てこないらしい。
けっこう場の空気が読めるんだ。
「で、どうすんねん。さっきから言ってるけど昼間に不法投棄の家電集めなんかしたら、人間でも怪しまれるで」
「大丈夫、今からやるのは家電集めじゃないから、ほら、地デジカ達も命令を待ってるから」
家電集めじゃなかったら何を命令する気? みんなの頭上に? マークが揺れる中、五重丸は地デジカ達の前に出て、命令を出した。
「地デジ化キャンペーン全国縦断キャラバン、本日この町で開催してくれ。頼んだよ」
「オッケーィ! デジデジッ、イェーイ!」
地デジカ達は本来の使命である「地デジ化キャンペーン」を命令され気勢をあげた。レオタードの脇から鉢巻き、ティッシュ付きチラシ、キャンペーンの「のぼり旗」3点セットを取り出しハイテンションで町中へ出動していった。
「あんなデッカイのぼり旗まで……あいつらのレオタードは4次元ポケットかいな」
「じゃ、行くよ、第2班いでよ地デジカ!」
「第2班って、おいおい何匹出すつもりやねん」
「んー、5班、60匹位いれば十分かな? レイちゃんはどう思う? ……あっ第2班、地デジ化キャンペーン全国……」
「そ、そんな、相談されても分からんわ」
五重丸は、せかせかと各班に同じ命令を出し、キャラバン隊を送り出していった。最後の5班が走り去っていくのを見送り、五重丸は雲の輪っかを閉じて振り返り、一息ついて言った。
「ふーっ、これで大丈夫だろう」
「何? そのやり切った感。説明してくれよ、なんで今、キャンペーンやねん」
「そうか、ごめんごめん、じゃ説明しよう。キャンペーンをするのは町の人たちを地デジカに慣らすためさ」
「慣らす?」
五重丸の考えた作戦は「地デジ化キャンペーン全国縦断キャラバン」という勝手に作ったキャンペーンで町に地デジカを大量投入。あちこちで撮影会や握手会などの催し物を開催し、地デジカとイヤというほど触れ合ってもらう。そして今日は地デジカキャラバン隊がこの町で宿泊していると思い込ませ、夜中出くわしても騒ぎにならないようにする、という作戦だ。
「なるほど、昼間60匹の地デジカに絡まれたら、見飽きてしもて、夜中に出会っても『まだおったんかい』てなもんでスルーするわな」
「ねえねえ、でも、仕事終わって、くつろいでいる時も着ぐるみのままっておかしくない?」
ミーちゃんが、ごもっともな疑問を五重丸に投げかけた。
「あ、そうか。アハハ、気が付かなかったよ。地デジカはアレが素顔だもんね、でも、もうやってしまったからどうしようもないし。夜の家電集めの時、地デジカを変装させるとするか」
……ああ五重丸よ、しっかり者か、うっかり者かわからないけど、速攻で解決策を出してくる所、やはり頼りにしていいのか、な?
「とりあえず、そろそろ家に帰ろうか。リーちゃん達もそろそろオヤツの時間だし帰らないと」
五重丸は自分の画面に時計を表示させた。
「帰るのはいいけど、地デジカどうすんねん。キャンペーンが終わったら、ここに帰ってくるんちゃうの?」
「撮影会とかのイベントが終わって、手持ちのチラシを配り終わったら各自、現地解散ってことになってるんだ」
「なんじゃそれ、ティッシュ配りのバイトみたいやな。ほな帰ろか」




