56、ロケハンでスキャンダル
56、ロケハンでスキャンダル
リーちゃんと家電達、そしてサンヨーはレイズちゃんに乗り、田んぼの真ん中にあるという神社に向かった。
魔神オカマを警戒し、高度約5メートルの低空飛行、そして臨場感パブリックモードで姿を消し、完璧なステルス移動でゆっくりと目的地を目指す。
「ほら、あそこ。森みたいになってるだろ」
「ああ、あれのことか。いつも近く通ってるけど気にしたこともなかったよ」
確かに、サンヨーの言うとおり田んぼの真ん中に、こんもりとした森……とまではいかないが木が生い茂った一角がある。
周りにはちゃんとした道路はなく、あぜ道を伝っていくしか近寄れない場所だ。
ミーちゃんは眉をひそめ言った。
「あそこ、オバケが出るっていう噂よ、だからみんな近寄らないんだって」
「あたしはへっちゃらよ。レイちゃん達で慣れてるから」
「ヤダー、わたし達オバケじゃないもーん。わたしもオバケきらいだしー」
森の上に到着したレイズちゃんは木々の間に小さな空き地を見つけ、そこに降りることにした。地上に降りてみると空き地は、上空から見た時より広く感じた。生い茂った枝で地面が隠れて見えなかったせいだろう。
「ほら、あっちに道があるだろ、いつもあそこから入るんだ。それで、これが神社さ」
サンヨーの現地説明会が始まった。道と言っても雑草を踏みしめて出来た獣道みたいなもので外から見るとどこから入っていいのか全然分からない。あぜ道沿いに流れる細い用水路に渡された橋代わりの板っ切れが目印になっているくらいだ。そして神社はと言うと……。
「なるほど、これがサンヨー君の言う『神社』だね。ぼくがググレヤで検索しても見つからないわけだ」
サンヨーが指さすそこには、祠のようなものが祀られていた。その中には原型をとどめないお地蔵様だったような石に赤いよだれかけが掛けられ、祠の前には湯吞と高さ10センチくらいの鳥居が置いてある。サンヨーはこの鳥居を見て神社だと思ったようだ。
「これって神社だろ? 違うの?」
「これは、神社じゃなくって、多分誰かのお墓だと思うよ。昔々この辺りを治めていた一族の長とかのね。鳥居とか湯吞は近所の人が置いたんだろう」
「やーね、お墓だって。あんたお墓に忍び込んで何やってんのよ」
「何って、普通に探検したり虫取ったり、秋になったらドングリもいっぱい落ちてるんだぜ」
こういう場所は冒険好きの男子にとっては格好のプレイスポットだ。たとえそこがお墓だろうが何だろうが。
「じゃ、ぼくは周りを調査してくるよ。今度は絶壁の時みたいな失敗は許されないからね」
五重丸プロデューサーはそう言い残し、一人どこかに歩いて行った。「絶壁サスペンス」の時、立ち位置の失敗で早々にネタバレしてしまうという大チョンボを繰り返さないため今回は慎重だ。
「クンクン、フガッ、ベフベフ」
「なんや、ベフちゃんもどっか行くんかいな」
ベフちゃんは大き目の木の方へトコトコ歩いて行き、おもむろに片足を上げた。
「シー、ベフッ」
「あーっ!ベフちゃんダメよ、お墓にオシッコしちゃ。バチが当たるわよ」
「ベフベフベ、ベフベフフフ」
「オシッコだけどオシッコじゃない、マーキングやって言ってるで」
そう、ベフちゃんは行ったところ、あちこちでオシッコをする。別にトイレが近いわけじゃなく、魔法「マーキングベフ」のマークポイントを多く作るためだ。
「オレだってここでオシッコしたことあるよ。ちょうど今、レイちゃんが立ってるとこかな? バチなんか当たらなかったと思うけど」
そう言ってサンヨーはレイちゃんの足元を指さした。それを聞いてレイちゃんは慌てて飛びのいた。
「わわっ! きったねぇー! もうボク達キッチン家電は清潔一番やのに、かんにんしてくれよ」
「ハハハッ大げさだな、したのは去年のことだし、雨とかでもう流れてるよ」
サンヨーはレイちゃんのうろたえる姿を見て笑った。
「あ、五重丸が帰ってきたよ、さっさと帰りましょうよ。どっちにしろ、ここ気持ち悪いしさ……ん? ねえねえ、向こうから誰か来るよ」
と、その時、獣道の方から誰か人が来る気配がした。
「よぉサンヨー、ここにいたのか。お前ん家行ったけどいないと思ったら」
「あれ? 松下さんも、それとお姉さんも? ここで何してるの」
やってきたのは、虫かごと網を持った東芝とソニーだった。サンヨーを誘って3人で虫取りに行こうと思っていたらしいが、サンヨーが居なかったので二人で「神社」に来たらしい。
「お前ら付き合ってんのかー? こんなトコでデートして、ヒューヒュー!」
「お姉さんもいるし、デートじゃないと思うよ」
「そっかー……あ、じゃ分かった結婚式だ、神社で結婚式だイエーイ」
東芝とソニーは、タマシールを使っていないので家電達の姿は見えない。目の前に見えているのはリーちゃん姉妹とサンヨーだけだ。虫取り少年2人は急遽突撃レポーターに変身し、3人の方に駆け寄ってきた。
「バカ言うなお前ら、違う違うって!」
「もーだから早く帰ろーって言ったのに、レイちゃん何とかしてよ」
「そんなこと言ったって……どうしよう五重丸、こいつらも仲間にする?」
仲間にするには二人にタマシールを使わせて、魔神オカマの説明をして……そんなヒマある訳がない。
「仲間は多い方がいいかもしれないけど、とにかく今は何とか追っ払ったほうがいいね」
「ど、どうやって? 姿を消す? 雪だるまでごまかす? あと、えーっと」
追っ払う方法が浮かばず、頭を抱えるレイちゃんと五重丸の後方から自信満々の声がした。
「パンパカパーン♪ やっとオレたちの出番やな。おう、ベフ行くでぇ」
「べフッ!」
そう言って前に出てきたのはジャブ君とベフちゃんだった。一人と一匹はおもむろにトリセツを取り出し、重ね合わせて呪文を唱えた。
「バ、ビ、エ、オーッ」「ベ、べ、べ、フーッ」
トリセツは光の玉になって、ジャブ君とベフちゃんを吸い込み一人の家電達に姿を変えた。バビエオ成功だ。
「べ、ベフちゃんすごーい、いつからバビエオ出来るようになったの?」
「ヘヘッ散歩中にオレが色々教えたんや、すごいやろ」
「ウンウン、すごいねえ、ベフちゃんお利口だね」
「オレも褒めてぇや、大変やったんやからな」
新製品「ベジャブー君」の登場に拍手喝采のリーちゃん達、一方その姿が見えない東芝とソニーは何が起こっているのかさっぱりだ。
「君たち、何を言ってるんだい? ベフちゃんとかバビ何とかって?」
「ごまかそうとしてるだけだろ、ねえねえ、もうチューしたの?」
虫かごをカメラに見立てて、シャッターを切るパパラッチソニーと、レポーター東芝。とうとうリーちゃん達の目の前までやって来た。うっとうしそうにリーちゃんは呟いた。
「さっさと片付けて、えーっと……」
「ベジャブーやでー、ほなサクッと行こかー……ベフベー」




