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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
55/154

55、冷やし中華、のち作戦会議

55、冷やし中華、のち作戦会議

 ニュルニュルニュルニュルニュル……


 「あっお姉ちゃんマヨネーズかけすぎ~。お母さん見てよソフトクリームみたいになってるよ」

 「大げさねえ、これくらいかけないと美味(おい)しくないのよ」

 「もういいでしょ、あたしにもかけさせてよ!」


 ブビッ ベチャ


 「あーっもう! 急に引っ張るから飛び散っちゃったじゃない、もー!」

 「あんた達、マヨネーズでケンカしない、仲良く使いなさいって!」


 「にぎやかやな」

 「ケンカしてるみたいだけど楽しそー、わたしも食べたーい、でも扇風機だしー」


 腹ペコ姉妹のマヨネーズ争奪戦(そうだつせん)が繰り広げられる松下家のリビング。その戦いの声は3階の子供部屋まで(ひび)き渡っていた。

 

 「リーちゃん達が戻ってくるまで、ぼく達だけで話を進めておこう。こうしているうちにも魔神オカマは、様子を(うかが)いながら暴れるタイミングを探っているだろうし」

 「そやな、それにヤツのパワーは、かなり上がっている。この前なんかホンマ、エグかったからな」


 初めて魔神オカマと一戦(いっせん)(まじ)えた時、レイちゃんとすずちゃんのバビエオ「レイズ」でほぼ互角に戦えていた。しかし、この前出会った時は入道雲を吹っ飛ばすほどにパワーアップしていた。


 「現在確認できている魔神オカマの攻撃は、アツアツの水蒸気と、あのオレンジ色の火輪のような熱波。どちらも高熱で相手にダメージを与えるものだ。これに対抗できるのは……」

 「ボクの低温冷凍攻撃とすずちゃんの風力ギガ、突風攻撃やな」

 「そんで、オレの水攻撃もあるしな。まだお披露目してへんけど、結構やるでぇ、知らんけど。オレら3体の家電がバビエオすれば……」

 「そうだ、こっちには氷、水、風の魔法が使える家電達がそろっている。しかも3人がバビエオすれば、その威力も増幅(ぞうふく)される。魔神オカマの高熱攻撃に十分対抗できるだろう。悪くても少しの間、動きを止めることくらいはできるはずだ」

 「わたしと男子二人でバビエオー? やーんそれって『ドリカム編成』ってやつー?」

 「え?」


 レイちゃんは振り返って、すずちゃんに視線を向けた。


 「ド、ドリカム編成って、すずちゃんいくつなん?」

 「ヤダー女子に年齢聞くなんてサイテー。もう、ジロジロ見ないでー、エッチ」

 「うわ、またエッチ呼ばわり……なんでボクばっかり」


 ……すずちゃんが(から)んでくると、真剣な話し合いも一瞬にして脱線してしまう。

 逆に、質問したレイちゃんは何歳なん? 改めて考えてみたが分からなかった。こりゃ聞いた方が悪いか。

 レイちゃんとすずちゃんの、何となく気まずい感じの空気を読んで、五重丸は作戦会議の本筋に話を戻そうとした。


 「じゃ、じゃあ年齢の話はひとまず置いといて、本題に戻すけど、魔神オカマの能力で厄介なのが、電気釜なのに飛ぶ、というか宙に浮いていることができることなんだ。あと……」


 ドドドドドドドドドーッ


 「みんな、おまたせー、ゲフッ何か決まったー?」


 昼食を食べ終わったリーちゃん姉妹が子供部屋に戻ってきた。本筋に戻りかけた話は再び脱線、というか停止。五重丸はみんなで話し合ったことを、簡単に伝えた。


 「そうね、みんなで力を合わせれば何とかなりそうね」

 

 五重丸の話を聞いてリーちゃんはニコッと笑った。歯に海苔(のり)が張り付いていて少々マヌケではあるが、とてもいい笑顔だ。


 「うん、魔神オカマの動きを止める所まではね」

 「え、どういうこと?」

 「問題はその後、サンヨー君が魔神オカマを引っ張り出し、リーちゃんが上手くコンポーダンボールを投げつけ、封印できるかどうか、なんだ」

 「それにヤツはいつどこから現れるか分からへんし、もしこの前みたいに空の上で出くわして戦うことになったらメチャ危ないからな」


 リーちゃんはこの前、空から真っ逆さまに墜落した時の事を思い出し、(けわ)しい顔をして首を(すく)めた。


 「ああ……アレは怖かったねえ、死ぬかと思ったよ」

 「だから次はそんなことにならないよう、作戦を考えたんだ」

 「作戦? ねえ、それってどんなの?」

 「今は秘密。ネタバレしたら面白くないだろ?」


 危ない目に会わないのなら、別に面白くなくてもいいんだけど……とリーちゃんは思った。

 でもまあ、体を張った芸人並みのリアクションを求める企画は立てないと思うし、ここは五重丸プロデューサーに任せておけば大丈夫だろう。


 「あとはロケ地、じゃなくって魔神オカマをおびき出す場所なんだけど、人気のない広い場所、リーちゃん、どこかおススメはないかな」

 「うーん……お姉ちゃん、どこがいいかな」

 「こういうことは三井君の方がが(くわ)しいんじゃない?」

 「あっそうか、あいつ秘密基地とか色々持ってるしね。ちょっと聞いてみようか」


 持ってるというが、秘密基地(農具小屋)はサンヨーの所有物件ではない。でもこういう事は町中を走り回り、用水路の奥まで知り尽くしている男子、サンヨーの方が知ってそうだ。

 リーちゃんはカミテレコンのリボンを外し、サンヨーに電話をした。


 ビチビチビチビチ♪ビチビチビチビチ♪


 ゲームのタイトルをノートに書き出しているサンヨーの後ろで、カミテレコンが鳴り響いた。着信音が気にならないサンヨーのカミテレコンは、デフォルトの臭そうな音のままだ。


 「あれ? なんだろ、おーいカミテレコン!」


 サンヨーが振り向いてそう言うと、ベッドの上に放り投げてあったカミテレコンはシュッとサンヨーの手元に飛んできた。サンヨーは野球のマークを外し見てみるとリーちゃんのボタンが点滅していた。


 「もしもーし香織、何か用?」

 「あー! またそうやって呼び捨てにする! あのね、何回言ったら……」

 「リー、そんな事どうでもいいから、早く聞きなよ」

 「んーもう……分かったよ、ね、ちょっと聞きたいんだけど、この近くで人があまりこなくって広い場所ってどこかある?」

 「えーっと……」


 聞かれたサンヨーは、少し考え答えた。


 「絶壁は? あそこは人少ないし、目立たないし」

 「あそこは人通りは少ないけど、すぐ横の校舎に児童がたくさん居るから、何かあった時あぶないからダメだな」


 サンヨーの提案は五重丸プロデューサーに速攻で却下された。


 「じゃあ……神社はどうかな、田んぼの真ん中でブロッコリーみたいな森になってる」

 「田んぼの真ん中で木に囲まれている……うん、よさそうだね。じゃ善は急げだ、今からロケハンに行こう。サンヨー君も来れるかな」


 五重丸Pは決断と行動が早い。早速現地の確認に行くことにした。


 「ねー、ろけはんって何?」


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