54、ただ今工事中
54、ただいま工事中
「わぁ何かすごい事になってる、ジャングルジムみたい」
リーちゃんが学校から帰って来ると、自分の家は朝出掛けた時と随分変わっていた。
工事用の足場が玄関先から3階の屋根あたりまで組み上げられ、リーちゃんの言うように、まるでジャングルジムのようだ。
作業服を着た数名のお兄さん達が、家に横づけされたトラックから資材を下ろし、忙しそうに運んでいる。
「あ、お嬢ちゃんおかえりなさい、そこら辺危ないから気をつけてね」
作業服のお兄さんのひとりがリーちゃんに声をかけ、ドアの方まで誘導するようについてきてくれた。
リーちゃんは、ちょっと照れくさそうに笑って挨拶をペコリ。玄関ドアは開いていたのでそのまま入ろうとすると、後ろから聞きなれた声が……
「やあ、リーちゃんおつとめごくろーさーん。オレらもお散歩終了や」
「ベフベフベフ、フガッ」
ベフちゃんをお散歩に連れていっていたジャブ君が帰ってきた。今日はこの前みたいにボロボロになるまで引きずり回されたりはしていないようだ。
リーちゃんはジャブ君たちに目配せで「おかえり」と軽く頷いて笑った。
「ベフベフ、キューン」
「そやそや、周りに人が居るからリーちゃんは今、喋れへんのやな。お前も空気が読めるようになってきたな、よーしよしよし」
ジャブ君は、もはやムツゴロウ先生並みに「ベフ語」を理解しているようだ。ベフちゃんをヒョイと抱き上げ、話をしながら後をついてきた。
リーちゃんはランドセルを背負ったまま手洗いをすませ、階段を上がりながらジャブ君の話を聞いていた。
「散歩に出かける前、お母さんとヤスイ電気の兄ちゃんが話してるのを聞いたんやけど、昨日の夜ヤスイ電気に泥棒がはいったらしいで」
「えっ?そうなの? 何盗まれたんだろうね……あ、お母さんただいまー。あーお腹空いた」
「おかえりー。お姉ちゃんももうすぐ帰ってくるから、お昼はちょっとまっててね」
「わかったー」
ミーちゃんも今日は午後からの授業が無いので、まもなく帰ってくるようだ。手っ取り早く一度にお昼ご飯を済ませたいお母さんは、3人分の冷やし中華をゆで始めた。リーちゃんはランドセルを置きに3階へドドドーっと上がっていった。
「それでヤスイ電気は何を盗まれたって?」
リーちゃんは子供部屋の床にペタンと座り、五重丸とレイちゃんを呼び出した。ジャブ君の話の続きを聞くのはいいがムズイ話になると五重丸がいてくれた方が分かりやすいし、レイちゃんだけ呼び出さないと拗ねられても困るし……
と、言う事で家電達全員集合。
「電気屋の兄ちゃんの話やと、泥棒は店の裏の倉庫に入ったらしいんや」
「そうか、陳列してあるものより開梱前の物の方が運びやすいからな」
「いや、違うんや。その倉庫には買い替えで引き取ってきた古い、なかには壊れてしまった家電ばかりを保管してる倉庫やったんや」
「じゃあ、盗まれたっていうのは……」
「そうや、廃棄処分になる家電ばっかりやったんや。新品には目もくれずにな」
「またか」と全員が思った。ゴミ屋敷の盗難事件、不法投棄家電謎の消滅、そして今回は廃棄処分されるはずだった家電が消えた……
なぜ?
レイちゃん達は複雑な表情でジャブ君の話の続きを聞いた。
「しかも、しっかり鍵がかかってたのにドアをこじ開けられた形跡もなく、朝、倉庫を開けてみたら倉庫の中がほとんどカラになってたんやて」
「わーヤダー、キモーい」
「そうなんやキモーいっていうか、どうやって持ち出したんかもよう分からんし、実質的損害もほとんどない。だから警察にも届けてないらしいで。ただ……」
「ただ?」
「リーちゃん家が五重丸を買った時に引き取られていったブラウン管テレビだけが、ぽつんと残されてたんやて。それを不思議がって店の兄ちゃんがお母さんに話してくれたんや」
……なぜ松下家のテレビだけ置いていったのか?
トラックか何かに載せきれなかっただけちゃう?
いや、それよりどうやって鍵も開けず倉庫の中から運び出したんだろう。
密室殺人みたいなトリック使ってまで盗み出す価値があるとは思えないし……
こんなあり得ないことができるのは……
やっぱり……あいつ、か?
みんなの頭の中にあいつの顔が過った、と、その時。
ドドドドドドッ……ドサッ
「あーお腹空いた」
お腹を空かせた姉が帰ってきた。ランドセルを机にドサッと置き、リーちゃんの隣に座って訊ねた。
「あら、みんな集まって何の話してるの? リーもお腹空いてないの?」
(この腹ペコ怪獣め……)
リーちゃんは呆れながらも、電気屋に泥棒が入った話を説明してくれたが、相変わらずさっぱり分からないので、五重丸に分かりやすく説明してもらった。
「ふーん、倉庫の鍵も壊さずに壊れた家電ばっかり盗んで行ったって? やっぱ、そんな超能力みたいなことできるのは、魔神オカマじゃないの、え? 何のためにって? 知らないわよそんなの。とにかく今は」
「とにかく今は?」
「二人とも~、今期初、冷やし中華できたわよ~おりてらっしゃーい」
「冷やし中華を食べよう、ほら、リー行くわよ。家電達はここで作戦会議でもして待っててね、じゃっ」
「あー待ってぇお姉ちゃん」
ドドドドドドドドーッ
「……仕方ない、お昼ご飯が終わるまで、ぼく達だけで話を進めよう」
「腹が減っては戦はできぬ、やな。しゃーないな人間は」
「ベフ」
次々に起こる不可解な事件。
そして作戦会議の進行を妨げる……
冷やし中華。
その頃、SR-18奪還の重要な役割を与えられているサンヨーは自分の部屋で机に向かい、ノートに何かを書き出していた。
「やっぱ、ポ○モンとマ○オは外せないよなー、これとこれと……あ、これまだ発売されてないや。ま、いいか神様だし何とかするだろ。うわー、これ夏休み中に全部クリアできるかな?」
やれやれ……果たしてSR-18奪還作戦、見事クリア、できるのかな?




