46、サンヨーを連れリサイクルショップへ
46、サンヨーを連れリサイクルショップへ
玄関でバッタリ出くわしたリーちゃん達とお母さん。
嫁入り前の娘が親の留守中に男を……と、お年頃の男女ならば、ちょっとした騒ぎになるのだが……
「ちょっと宿題をね、やってたの。もう終わったから遊びに行ってくるわね」
「あらまあ、夏休み前なのにまだ宿題が出るの? 大変ねえ、近頃の小学生は」
と、まあ適当にごまかし、外に出てみると雨はもう上がっていた。太陽が顔を出し濡れたアスファルトを乾かしてゆく。ムワッとした暑さの中、リーちゃんはサンヨーに手招きをして家と家の隙間に誘い込んだ。
リーちゃん達の住むこの辺りは3階建ての細長いカステラ住宅、お隣さんとの隙間は30センチほど。子供なら何とか入れるくらいの隙間だ。
「なんだよ、何でこんなところに入るんだよ。うわ、蒸し暑いぃ」
「ちょっと待って、もう来ると思うんだけど……あっ来た来た、こっちこっちよ」
リーちゃんは空に向かって手を振った。見上げるとバビエオで合体したレイズが、他の家電達を乗せ、スーッと目の前に降りてきた。
「おまたーせっ、レイズの空飛ぶーんジャンボデッキやで。さあ、乗った、乗った」
「その前に見えなくしなくちゃね。臨場感パブリックモード!」
五重丸が呪文を唱えると、レイちゃん達はブロックノイズのようにチカチカしながら消えていった。
「わっ! 消えちゃったよ、どこに行ったんだ?」
「五重丸の魔法で見えなくなっただけよ。大丈夫だから、あたしについて来て」
リーちゃんが家の隙間から出ていくと、その体はまるでカーテンの後ろに隠れるように消えていった。
「サンヨー君、怖がらなくても大丈夫だよ。これもさっきの崖のシーンと同じでボクの造った幻のようなもんだから」
ビビるサンヨーに五重丸が声をかけた。リーちゃんも臨場感の内側から顔と右手だけをのぞかせ、おいでおいでをした。生首が宙に浮いているようでとても気持ちが悪い。
サンヨーが恐る恐る手を伸ばすと、「もう、さっさと乗りなさいよ」と、リーちゃんに手を掴まれレイズの背中の上に無理やり乗せられた。
「やだもう、あんたの手、汗でべっとべとじゃない。あーやだ」
「よっしゃ、みんな乗ったな。ほな、しっかりつかまっときや~レイズジャンボデッキ、テークオフ! ……空を飛ぶーん!」
レイズの掛け声とともにみんなを乗せたジャンボデッキは、一気に3階の屋根あたりまで上昇した。
「わーっ! 浮いた、飛んだ、すっげー!」
「シーッ、あんまり大きな声出さないでくれる? あたしたち姿は見えないけど声は聞こえちゃうんだから」
「あっ、そうか」
レイズジャンボデッキはさらに高度を上げ、ビルやマンションにもぶつからないくらいまで上昇し、リサイクルショップへと向かった。
「わー、すごいすごい、お前らホントすごいな」
「サンヨー、りんじょーかんの外に顔出しちゃダメよ、下にいる人に見えちゃうから」
リーちゃんの家を出発して1分そこそこ、一行はリサイクルショップに到着した。展示コーナーの裏にコッソリ回り込み、レイズジャンボデッキは静かに着陸し、リーちゃん達乗客は周りに人がいないのを確認して床に降り、展示コーナーの正面に向かった。そして、神眼コンタクトでヒエール様に言った。
「ヒエール様、サンヨーを連れてきたわ。電気釜さんにタマシールを貼って邪悪にした犯人よ、こいつにも神様の姿を見せてやって」
リーちゃんにはいつも通りのヒエール様が見えているが、サンヨーの目には古ぼけた冷蔵庫をじっと見つめているようにしか見えない。
神様の姿は誰でも見えるという訳ではない。神様が心を開いた者のみがその姿を見ることができるのだ。
ヒエール様も神眼コンタクトで答えた。
「そうか、隣にいる男の子がサンヨー君かヴェ。承知したヴェ、我も色々聞きたいことがあるでのう、ブラウン殿、ペタンコ殿も姿を見せるヴェ」
ヒエール様はそう言って少し威厳のありそうな顔をした。サンヨーと会うのは初めてなので、とにかく第一印象は大切だ。ブラウン様とペタンコ様もよそ行きの顔をで準備をした。
リーちゃんはサンヨーに目配せをし二ッと笑った。なんだろ? と思っていると、目の前の冷蔵庫にボワンと顔が浮かび上がり、手もニョキっと生えてきた。
レイちゃん達に散々ビビらされたサンヨーはさほど驚きはしなかったが、店に来た時いつも前を通っていたこの冷蔵庫が神様だとは思いもしなかった。
「オホン、汝がサンヨー君か、よく来たのう。我は冷蔵庫の神リフリージェヒエールじゃヴェ」
「そして我がテレビの神、モノクロームブラウンカーンダォ、よろしくダォ」
「最後に我が洗濯機の神、アフターワッシュペタンコだボー、我ら三種の神器、サンヨー君を歓迎するボー」
「あ……お、オレは三井洋、サンヨーはあだ名だ……です」
「サンヨー、神様とは声に出さなくても心の中で思うだけで話すことができるから。真剣コンパクトっていうやつよ」
神眼コンタクトだっつーのに……とヒエール様達はツッコミたかったが、間違えて覚えていても、特に問題はないのでやめておいた。
そしてサンヨーは一番気になっていることをヒエール様に聞いてみた。
「あの、ヒエール様……バチは許してくれるの?」
「ホ? バチ? なんのことじゃヴェ」
「へ?」
耳がとんがって鼻からオナラが……
なーんて言うバチはリーちゃんの作り話だ。リーちゃんは慌ててその事をヒエール様に神眼コンタクトで伝えた。
神眼コンタクトは神様と人とのコミュニケーションをとるための神技なので隣にいるサンヨーには聞こえない。この状況ではとても都合がよい。ヒエール様は軽くうなずいて話し始めた。
「お、おぉそうじゃったヴェ、バチはリーちゃんに免じて許すことにしたヴェ。安心せい」
「そうダォ? 本当ならば目からウンコが出るようにもしてやりたいところであったがォ? その代り我らに協力するダォ」
目からウンコは……ただの目糞じゃないの? まあいいか、とりあえずサンヨーはホッとして協力することを約束した。
「では、サンヨー君、まずSR-18とケンカした時のことを思い出してほしいヴェ。言葉にする必要はない、見たこと感じたことをありったけ思い出してほしいヴェ。そうすれば神眼コンタクトにより我らに伝わるヴェ」
「わかった、やってみる」
サンヨーは目を閉じ、SR-18のことを一生懸命に思い出した。それを三人の神様達はうなずきながら受け止めていた。
「……なるほど、そういうことであったかヴェ。サンヨー君、汝はとっても思いやりのあるいい子だヴェ。バチを当てるような悪い事などなにもしていないヴェよ」
ヒエール様の言葉を聞いてリーちゃんは納得できない顔で反論した。
「なんで? 電気釜さんを邪悪にしたのに? それだけじゃないわよ、イタズラばっかりするし、悪口言うし、バカだし。いいとこなんてひとつもないわよ、どーして?」
「ホホッ今から説明するヴェよ」
家電達もザワザワする中、ヒエール様は話し始めた。




