45、サンヨーと打ち合わせ
45、サンヨーと打ち合わせ
「ただいま~」
「おかえ……洋! 何? あんた雨降ってんのにアサガオ持って帰ってきたの? 持って帰ってこいとは言ったけど明日でもよかったのにもーう、びしょ濡れじゃない……? ないわね。なんで?」
雨の中、傘もささずにアサガオをかかえて帰ってきたバカ息子をボロクソに怒ろうとしたが、サンヨーの服はほとんど濡れていない。お母さんの怒りは疑問へと変わっていった。
「え? あぁ、学校出た時はそんなに降ってなかったし、いけると思って」
「ふーん、この辺は結構降ってたんだけどね。今も……降ってるし。それにしてもあんた濡れてなさすぎじゃない?」
濡れていないのはレイちゃんの魔法「パーシャル」のシールド効果で雨がかからなかったから。その内側はエアコンの効いた室内のように快適だったので濡れるどころか汗ひとつかいていない。
ま、正直に言っても信じてもらえないし、もし言ったら雪ダルマが……サンヨーは適当にごまかすように言った。
「あ、そうそう、途中から松下さんの傘に入れてもらったし、だから濡れなかったんだよ」
「なーるほど、そう言うことか。だったら最初からそう言えばいいのにもー、照れちゃってコノヤロ、コノヤロ」
そう言ってお母さんはサンヨーの頭から帽子をヒョイと取り、ニヤニヤしながら頭をくしゃくしゃと撫でまわした。
「やめろよ、そんなのじゃないって」
サンヨーはお母さんの手をうっとおしそうに払いのけ、3階の子供部屋に勢いよく駆け上がっていった。
「ほんとっもー、面倒くさいんだから……」
サンヨーはランドセルを机の上にドサッと放り投げ、タンスから新しめの靴下をチョイスして履き替え、すぐ1階へ降りていった。
玄関まで行くと玄関に座ってアサガオをいじっていたお母さんが出かけようとするサンヨーに声をかけた。
「洋、あんた雨降ってんのにどこ行くのさ、あ、ちゃんと靴下も履き替えてるし」
「ちょっとかお……松下さん家に行ってくる。すぐ帰ってくるから」
その言葉を聞いてお母さんはグフッと笑い、靴を履こうとしているサンヨーの肩あたりをパスッと叩いた。
「あんた今香織って言いかけたでしょ。やーだもう、下の名前で呼んじゃってヒューヒュー」
「だから違うってもう、行ってきまーす」
「あ、洋ちょい待ち、これ持って行きなさい」
そう言ってお母さんは、お菓子が入ったレジ袋をサンヨーに手渡した。
サンヨーはそれをめんどくさそうに受け取り、出かけていった。出かけたと言っても目的地まで約5秒、向かいのリーちゃん家の玄関に到着した。
ピンポーン♪
インターホンを押すと玄関で待ち構えていたリーちゃんが、ドアを開けてくれた。お母さんは買い物に出かけていてミーちゃんはまだ帰ってきていないので人間はリーちゃんだけだ。キョロキョロしているサンヨーに、リーちゃんは階段の半ばあたりから手招きをした。
「ほら、何してるの。こっちよ」
「え? ああ」
何回か来たことはあるが小学校に上がってからは初めてだ。懐かしそうにサンヨーは階段を上り、子供部屋に入った。すると、部屋のど真ん中にどでかい雪ダルマがデンと鎮座していた。
「わわっまた雪ダルマ? なんで?」
サンヨーは驚いて部屋から飛び出した。階段から部屋をのぞくと、
「アハハッ」
雪だるまの後ろから笑い声がし、レイちゃんとリーちゃんが顔を出した。
「テッテレー♪ウェルカムドッキリやでー、びっくりした?」
「なんだよもう、いらねーし、そんなの」
「あははっごめんごめん、さあ入って」
ボム
レイちゃんは雪だるまを昇華し、隅っこに隠れていた他の家電達もワラワラ集まってきた。
「初めましてー扇風機のすずでーす。よろしくねー」
初対面のすずちゃんがサンヨーに挨拶をした。すずちゃんは午前中、お母さんが部屋を掃除する時、コンセントから抜かれていたので学校に呼び出してもらえなかったのだ。家電達は本体が電源コードに接続されていないと活動できない。レイちゃんら三種の神器やベフちゃんはコードを抜かれる事はほとんどないが、季節家電のすずちゃんはこうやって時々抜かれるので注意が必要だ。
「うわ、扇風機まで……どんだけいるんだ?」
「今んとこ4人と1匹、あと神様が3人と電気釜さんね。あたしが知ってるのはそれだけよ」
「ふーん……信じられないけど信じるしかないな。そんで、打ち合わせって何だよ」
「電気釜さんを連れ戻す打ち合わせよ。あたし、神様に電気釜さんを探して連れ戻して来てって頼まれたのよ。それで、あたしのお手伝いするのにレイちゃん達が生まれたの。家電達のみんなは魔法やバビエオとか出来るようになって、さあみんなで探しましょってときに、あんたが勝手にタマシールを電気釜さんに貼って怖い邪悪にしてしまうもんだから簡単だと思ってたのが、すっごいめんどくさい事になってしまったのよ? 本当ならヒエール様にバチを当ててもらうところだけど、許して仲間にしてあげましょって話の打ち合わせよ」
「おお!」ベラベラと長ゼリフを一気にしゃべり切ったリーちゃんに家電達一同、感心した。五重丸は気を利かして、あのドラマシリーズのBGMを流した。
「すごいねリーちゃん。『渡鬼』みたいな長ゼリフよく言えたね。サンヨー君、リーちゃんの話だいたいわかってくれたかな? 相手が少々手強くなってしまったのでこちらも仲間が多い方がいい。それにひょっとしたら、タマシールを貼った本人の言うことなら聞いてくれるかもしれないし、キミも仲間になってほしいんだ。どっちにしてもぼく達だけでは勝手に決められないから、今からヒエール様に会いに行って許可をもらおう」
五重丸もリーちゃんに負けじと長ゼリフを言いきった。そして、二人から長ゼリフを聞かされたサンヨーはもちろん半分も理解できない。
「え? つまりオレも仲間になってアイツを探すのか? それで、今から神様に会いにいくってか?」
「まあそう言うことだね。辛うじて話のツボだけは理解してくれたようだし、善は急げだ、レイちゃん、すずちゃん、バビエオでみんなを乗せて神様の所へ行こう」
「おいおい、神様ってどこにいるんだよ、もしかして雲の上? 遠くに行くならお母さんに言っとかないと」
「大丈夫、神様のお家は大通りの向こうのリサイクルショップだから。空を飛んで行けばすぐだよ」
「へ? それってリサちゃんのこと? 神様の家が? それで空を飛んで行くってどうやって?」
話のツボだけ理解したつもりのサンヨーであったが、そのツボは……砕け散ってハテナマークの山になった。
「僕たちはここで用意して玄関に降りるから、リーちゃんとサンヨー君は玄関から出て待ってて。靴を履いてないと向こうで困るからね」
「分かったわ五重丸。じゃ、行くわよ」
「お、おい待てよ」
リーちゃんはいつものようにドドドーッと階段をかけおりた。サンヨーもあわてて後を追った。
二人が玄関に着いたその時、玄関のドアが開いた。お母さんが買い物から帰ってきたのだ。二人を見てお母さんは少し驚いた顔でボソッと言った。
「あらやだ、親の留守中に男を連れ込むなんて……」
チャンチャンチャーン♪
3階で用意をしている五重丸が、気を利かしてサスペンス劇場の音楽を流した。




