37、オバケだぁ
37、オバケだぁ
「おかおかっ母ちゃーん! 大変だあ! オバオバッお化けがいっぱい香織ん家に、あのあの……」
ドスドスドスドス、ピョーン
「こらーっ!途中からジャンプするんじゃねーっ!」
子供部屋でレイちゃん達を見て驚いたサンヨーは、叫びながら階段を駆け下り、のこり3段目の所から勢いよくジャンプした。
その直後、お父さんに「ジャンプするんじゃねー!」と言われたが、ジャンプした後なのでどうすることもできない。そのままドン! と着地した。
「まったくもう……しまいに床がぬけるぞ、で、何をキャーキャー騒いでるんだ?」
サンヨーは、お父さんの小言をそっちのけで今、3階であった信じられない出来事をまくしたてるように話し始めた。
「オ、オバケだよ、オーバーケ。香織ん家にオバケがいるんだよ。オレ見たもん、四角い白いヤツが香織とお姉ちゃんの後ろから怖い顔でこっちを見てたんだよ」
お父さんはサンヨーの恐怖体験談を聞いて短いため息をつき、食い気味に返答した。
「はいはい、そうだね、夏はオバケのシーズンだよね。怖いねぇ恐ろしいですねぇ、オシッコちびりそうですねぇ。でもねぇ、オバケなんている訳ないんだよ。ご近所をお化け屋敷呼ばわりしちゃダメだぞ」
「ちぇ、なんだよそれ、ちゃんと聞いてよ、ホントだってば」
ま、子供が「オバケが出たぞー」って騒いでも、大抵こんな感じであしらわれてしまうのは仕方ないだろう。
適当にあしらわれたサンヨーは、納得できずお父さんの手を引っ張り、必死でベランダの方へ連れていこうとする。
「あー痛い痛い、手が抜けちゃうよ」
お父さんは大げさに悲鳴を上げる。それでもサンヨーはお構いなしに手を引っ張るが、オッサンを引きずって動かせるパワーはあるわけないし、腕も抜けはしない。
親子が不毛の争いをしている横をお母さんがスーッと歩いて行き、一応窓から松下家のリビングを覗いて見た。
サンヨー家もリーちゃん家も同じハウスメーカーのカステラ住宅。間取りもほぼ同じだ。
「どれどれ……あらほんと、オバケがあるわ。すごいねー」
「ほーら見ろ、やっぱりいるじゃないか」
サンヨーはそう言って、お父さんの手を離しお母さんの方へ駆け寄った。
「だろだろっ? オバケだよねアレ。さっきも秘密基地でアレとそっくりな……あっ」
サンヨーは勢いで、うっかり秘密基地での出来事をしゃべりかけた、が、自分が直接やったのではないにしろ、結果的に他人様の農具小屋の屋根に大穴を開けてしまった事が、お母さんにバレたら100%しかられる。それはマズイと、とっさに手で口を押さえた。
「窓枠からはみ出してるじゃない。随分大きな液晶テレビ買ったんだね、ハハッありゃオバケだわ。何インチなのかしら、明日聞いてみよーっと」
サンヨーのお母さんが言った「オバケ」はリーちゃん家のリビングにある窓からはみ出すほど大きい液晶テレビのことらしい。
リーちゃん家では、
”外から見えたらかっこ悪いからカーテンを全開にしない”
という暫定処置を決めていたが、さっきのゲリラ豪雨で洗濯物を取り込んだ時、お母さんがうっかりカーテンを全開にしたまま放置していたのだ。
そしてお母さんはサンヨーの方をチラッと見て言った。
「で、秘密基地がどうしたって? また何かやらかしたの?」
「へ? ううん何でもない、何でもない。秘密基地は……ヒミツだよー」
サンヨーはそう言い残し、大騒ぎして降りてきたわりには逃げるように3階の子供部屋に戻っていった。
「変な子ねえ、一人で騒いで逃げるように戻って行っちゃった」
「もうすぐ夏休みだからな、そわそわしてるんじゃないか?」
「そうなのかしら……あ、そうそう、明日天気が良かったらアサガオ持って帰れって言っとかなきゃ、色々もって帰るもの多いみたいだし」
「はぁー」
子供部屋に戻ったサンヨーは、ため息をついてもう一度リーちゃん家の方を見てみた。オバケ(レイちゃん達)はもういない。
体力を回復するため全員本体に戻ったからだ。部屋にはリーちゃん姉妹しかいないようだ。
「やっぱり気のせいだったのかな? まあいいや、あした香織に聞いてみよっと」
サンヨーはブツブツひとりごとを言いながら、明日の時間割を見て教科書をランドセルにつめ直した。
一方、映像データを取り込んだ地デジカはカステラ住宅の屋根の上を快調に走り抜け、見事なジャンプで電柱へシタッと飛び移り、電線上も綱渡りするように駆け抜けていった。
難なくリサイクルショップの屋根の上に到着した地デジカは、地上の様子を伺い、客が途切れた瞬間を見て地上に飛び降りた。
片膝をついたクラウチングスタートのようなポーズで着地し、そのまま自動ドアにダッシュ、店内に入った。
「あっ地デジカだ!」
何人かの客が地デジカを見つけ、駆け寄ってきた。展示コーナーにいるヒエール様達はそれを心配そうに見ている。
「ありゃりゃ、客に囲まれてしまったヴェ。どうするヴェ」
「臨場感パーソナルモードで姿を消すダォ?」
「急に地デジカが消えたらみんなびっくりするボー、ここは地デジカに任しておくボー」
神様たちが心配そうに見守る中、地デジカは集まった客に深々と頭を下げ、レオタードのような衣装の脇からステッカーやらポケットティッシュを取り出し、回転しながら辺りにまき散らした。
「キャンペーン、デジデジッ」
客がそれを拾おうと下を向いた瞬間、地デジカは大ジャンプ!そのままブラウン様に飛び込み、映像データを渡しそのまま消えていった。
「おお!さすが地デジカじゃヴェ、あっぱれパレパレじゃヴェ」
「映像データ、シカと受け取ったォ。シカだけに……ご苦労様ダォ」
地デジカは出された命令を(なるべく)聞いてくれる。今回のミッションも完璧にこなしてくれた。




