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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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35、戦い、そしてそのあと

35、戦い、そしてそのあと

 「スチームエクスプロージョン!」

 「クラッシュアイスブリザード!」

 魔神オカマとレイズの攻撃が入道雲の中でぶつかり合った。先制攻撃を仕掛けた魔神オカマが優勢かと思われたが、レイズのパワーがオカマの攻撃を押し戻していった。


 「キャーッ私たちスゴーイ、押してるわよっ……そうやな、このまま最大パワーで一気に片付けるで……分かったーじゃあレイちゃん踏ん張ってー、いくわよ風力ギガッ」


 レイちゃんが「勝手に氷」で作った砕氷が、すずちゃんの繰り出す強風に乗り敵を撃つクラッシュアイスブリザード。

 すずちゃん単体では「風力3」が限界だがバビエオの効果でパワーアップし、「風力ギガ」が出せるようになった。

 台風並みの強風に乗った氷の飛礫(つぶて)は、魔神オカマの水蒸気砲スチームエクスプロージョンのパワーを上回り、その攻撃を徐々に押し戻していく。


 「ギャギャッ、な、なんじゃこのパワーはギ……」


 ドーーン!


 氷の飛礫の直撃を受けた魔神オカマは、高熱を帯びていた体を急激に冷却され、全身を氷で包まれた。動けなくなった魔神オカマはまっすぐ墜落していった。


 「やったねーレイちゃん、やっつけたよー……ああ、何か楽勝やったな、でもアレほんまに神様やったんかいな。とりあえず帰ってヒエール様に報告しよ」

 

 任務完了したレイズは、家に帰ろうと方向転換をし、入道雲から出ようとしたその時、下から強い殺気を感じた。


 「な、なんだ?」


 下に目をやると、魔神オカマの体を覆っている氷に亀裂が入り、ポロポロと剥がれ落ちていくのが見えた。やがて全身の氷が解け、魔人オカマは勢い良く水蒸気を噴射し急上昇してくる。


 「わわわっ、戻ってきたしーやっつけたと思ってたのにー、ヤダー……さっきよりヤバそうな感じやな」


 レイズと同じ高さまで戻ってきた魔神オカマ。警戒しているのか今度は自ら少し間合いを取り、鋭い目でこっちを睨みつけている。


 「ふぅ、どうやら貴様を見くびっていたようだギャ。失礼、失礼。次は手を抜かないギャ」


 そう言った後、魔神オカマはニヤッと笑い、自ら噴き出した水蒸気で体を覆い、雲の中に溶け込むように消えていった。


 「レイちゃんどうしよー見えなくなっちゃったよ……気をつけてすずちゃん、どこから来るか分からへんで」


 「オコゲガ、デキチャッタ」


 「どこ? どこだ?」


「ビッグエクスプロージョン!」


 ドゴーーン!


 強烈な水蒸気の塊が入道雲を貫いていった。その直後、戦いが刺激となったのか入道雲のあちこちで雷が発生し始め、まもなく雨が降り出した。

 雲の中には魔神オカマの姿しか見えない。


 「ん? あいつはどうなったギャ?……気配を感じないギャ。今の攻撃で砕け散ったか。ま、いいか。雨も降ってきたし雷に打たれたら厄介だギャ、退散するとするギャ。それにしてもあんな奴が他にもおるとすれば、おちおちしてられぬギャ。オレももっとパワーアップせねばな」


 雨が激しくなる中、魔神オカマはどこかへ去っていった。


 一方、ビッグエクスプロージョンの直撃を受けたと思われたレイズは、


 「わーっ!あれ?」

 「イヤーッ!んー?」


 魔神オカマがビッグエクスプロージョンを放ったその瞬間、リーちゃんが、カミテレコンで呼び戻してくれたのだ。バビエオは自動的に解除されレイちゃんとすずちゃんはそれぞれの本体に戻っていた。まさに間一髪だった。


 「ひゃーっ大変、大変!」


 ベランダでは、お母さんがゲリラ豪雨の中、洗濯物を必死に取り込んでいる。


 「リーちゃんが呼び戻してくれたんだーよかったー、でも私たちのせいで大雨になっちゃったねーお母さんごめんねー、それにしても危なかったねー」

 「ほんま、死ぬかと思ったわ。あいつ一体なにモンやねん」


 レイちゃんとすずちゃんはリビングのカウンター越しにお互いの無事を確認し合っていると、


 ボン


 リーちゃんのカミテレコンで呼び出され、二人は3階の子供部屋へと飛んだ。突然の呼び出しにキョトンとしている二人を、リーちゃん姉妹と家電達が拍手でお出迎え。レイちゃんとすずちゃんはちょっと恥ずかしそうに笑った。


 「お帰りなさーい、二人とも凄かったねー、ケガしてない?」

 「うん、大丈夫やで。リーちゃん、危ないところ呼び戻してくれてありがとう、助かったわ。でも、もうちょっと早く戻してくれた方がよかったかな」


 リーちゃんは、上目使いで笑いながらも、申し訳なさそうな声で答えた。


 「だってさぁ、邪悪がどんな攻撃してくるか気になったんだもん、レイちゃんとすずちゃんを戻したら見れなくなっちゃうし」

 「そうだね、実況生中継が良い所で終了したらみんなガッカリするだろ?視聴者は神様、大切にしなきゃね」

 「そうなの。だからギリギリになっちゃったの、ごめんねえ」

 「なんやねん『視聴者は神様』って、こっちは死にそうになったのに! それに視聴者って言ってもリーちゃん達とジャブだけやん、ってかジャブ寝てるし」


 呆れ顔でレイちゃんがぼやいていると、カミテレコンから笑い声が聞こえてきた。


 「フォフォフォッ」


 みんなの会話をカミテレコン越しに聞いていたヒエール様は笑いながら話しの中に入ってきた。


 「まあまあ、リーちゃんもレイ太も落ち着くヴェ。攻撃が当たるギリギリのタイミングでお前らが消えたから、多分ヤツはお前らをやっつけたと思い込んでいるヴェ。でなければヤツは、どこまでも追いかけてきたであろうヴェ、結果オーライじゃヴェ」


 なるほど、モノは言いようやな、とレイちゃんは思った。

 けっかおうらいって何? とリーちゃんは思った。


 「それより問題は、邪悪な者じゃヴェ。レイ太とすずよ、リーちゃんは黒いバケツみたいなヤツと言っておったが、間近で見たお前らの目にはどの様に見えたヴェ?」

 「そーねぇ、バケツって言うよりお鍋みたいなー」

 「そう、それにヒエール様の名前を言ったら急に攻撃してきたんやけど」

 「うーむ、我は神故に誰かに恨まれるようなことはないはずじゃヴェ。のう、ブラウン殿よ」


 ヒエール様は、横にいる白黒テレビのブラウン様に意見を聞いてみた。


 「うーむ、ひょっとしてその邪悪なる者はSR-18、という事はないのかォ?ヒエール殿を知っている鍋のような者と言えば電気釜ダォ」

 「我も初めそう思ったのじゃが、色が違うヴェ。我らは白物家電、体の色は白と決まっておるヴェ、それに……」


 ヒエール様は、さみしそうに、でもしっかりした口調でこう続けた。


 「SR-18は、我の頭の上にずっと座っておった可愛いヤツじゃヴェ。邪悪な者であるはずがないヴェ」


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