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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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34、初対決

34、初対決

 「邪悪な物」の正体を確かめるため融合合体し、飛び立ったレイズは町の上空で恐ろしい声を聞いた。声の主の姿は見えずしかもその声は耳からではなく心の中に響き渡った。

 こ、これは……


 「神眼コンタクト?」


 子供部屋で実況生中継を見ていたリーちゃん姉妹と家電達は、レイズの言葉を聞いて驚いた。


 「神眼コンタクトって、神様にしか出来ないんじゃないの? それも目の届く範囲でしか使えないはずよね」

 「そうそう、それなのにどうして空の上で? ねえ、レイちゃん相手は誰? ヒエール様?」


 リーちゃん姉妹に聞かれ、レイズはもう一度辺りを見回してみた。


 「ちがうよ、ヒエール様の声じゃないし、空の上にはボクら以外誰もいないんや……誰なんやろ、ヒエール様心当たりある?」


 心当たり、と言われてもヒエール様達は、実況生中継も見ていないし、その声も聞いていないので、正直言ってさっぱり見当がつかない。


 「うーむ、カミテレコン越しに状況を聞いているだけでは、よく分からんのじゃが、その邪悪な気は確かにレイ太とすずのすぐ近くに感じるヴェ。気をつけて周りを見てくれヴェ」

 「気ぃつけてって、そんな事言ってもなあ……いったい誰よ、どこにいるのさぁ」


 キョロキョロしながら田んぼの上空を旋回していると、突然すずちゃんが悲鳴を上げた。


 「キャツ」


 悲鳴と同時に、レイズの体が横に吹っ飛ばされるように動いた。直後、今までレイズのいた位置に、水蒸気の塊のような熱風が体を(かす)めるように通過していった。

 すずちゃんの反射神経の良さで、直撃はギリギリ避けられたようだ。


 「熱っ! な、何だよ今の!……わかんなーい、上よ、上からすごいスピードでこっちに飛んできたのー……すずちゃんありがとう、助かったわ……うん、危なかったわねー」


 レイズは上空を見上げた。すると、大きな入道雲の中から、小さな黒い物体がスーッと降りてきて、レイズの目の前で止まった。


 「フン、よく避けたギャ、なかなかやるギャ」


 レイズは素早く間合いを取り、黒い物体をキッと睨みつけた。


 「い、今ボクにアレをぶつけようとしたのはお前か? ひょっとしてお前が邪悪な者か?……えー? この子が邪悪? 思ってたより可愛いー、でも目つき悪ーい、キモーい」


 目の前に現れた黒い物体、そう、それはサンヨーにタマシールを張り付けられ「魔神オカマ」となったSR-18だ。その様子は子供部屋で見ているリーちゃん達の目にも飛び込んできた。


 「あっほらほら何か出た来たよ。これが邪悪ってやつ?」

 「リーちゃんよ何かあったのかヴェ?」

 「うん、手と足が生えた黒いバケツみたいなのが、雲の中から出てきたの」

 「黒いバケツとな? うーむ一体何者だヴェ」

 「ちょっと待って、何か言ってるわ、五重丸もうちょっとボリューム上げて」


 リーちゃんのリクエストに応え、五重丸はボリュームを上げた、そして気を利かしてズームイン、画面に魔神オカマが大アップで映し出された。しかしその恐ろしい形相に一同ドン引き。


 「ご、五重丸、ボリュームだけでいいから、アップはやめて」

 「オッケー、じゃちょっと引きまーす。あとこれ、スクープみたいだから録画しとくね」


 五重丸は常に冷静沈着である。余計なことも気の利いたことも勝手にやってくれるので、そこそこ助かるのだ。

 そして場面は再び田んぼの上空。レイズと魔神オカマのにらみ合いが続いている。


 「初対面でいきなり失礼な奴だギャ。お前こそ何者だギャ、見た所冷蔵庫のようだがなぜに飛べるギャ?」

 「そ、それは私が合体しているからよっ。空を飛ぶーんで浮かんでいるのよ」


 すずちゃんの答えを聞いた魔神オカマは、少し驚いたようで眉をぴくっとさせた。


 「ほほう、合体とな? お前は冷蔵庫と換気扇が合体しているというのかギャ?」


 ガクッ、換気扇と間違われたすずちゃんは、一瞬力が抜け高度を落としたが、すぐオカマの前まで戻し、文句を言った。


 「だ、誰が換気扇よっ失礼しちゃう! 扇風機よ、扇風機のすずですよーだ、イーだ!」

 「フン、威勢(いせい)だけはいいようだギャ。扇風機付冷蔵庫か、なるほど、二つの魂を宿しているところはオレと同じだが、仕組みが違うようだギャ」


 オカマの言葉を聞いたレイちゃんは驚いた。今目の前にいるコイツも家電達なのか? 僕たちの仲間? にしてはこの悪意むき出しの態度はなんやねん?

 すずちゃんがオカマと言い合いをしている間、レイちゃんがそんなことを考えていると、


 「フン、魂を宿している家電を家電達と呼んでいるのか?」

 「え?」

 「フン、お前の心の中はすべてお見通しギャ。オレも魂を宿しているが同じようで同じでないギャ。まあ、仲間にしてほしいってのならしてやってもいいギャ」

 

 魔神オカマはニヤッと笑った。レイズは心を読まれないよう、余計な事を考えるのをやめた。


 「神眼コンタクトでボクらが考えてることは筒抜けって事か……と言うことはお前もヒエール様達と同じ、家電の神様なのか?」


 レイズの問いかけに魔神オカマはまた険しい顔に戻り、フタの隙間から湯気が吹きだしてきた。


 「ヒエール⁉ 貴様はあいつの仲間かギャ! そうなると話は別だギャ、覚悟するがよい」


 魔神オカマは、両手のひらをレイズの方に見せるように向けた、目が赤く輝き出し、フタから漏れ出す湯気も激しくなってきた。


 「ヒエール様、黒いのが何か怒ってるみたいよ。レイズちゃんに攻撃しようとしてるみたい」


 子供部屋のリーちゃんは心配そうに画面を見つめ、ヒエール様に連絡をした。


 「なんと、攻撃とは穏やかではないヴェ。リーちゃんよ、危なくなったらすぐレイ太とすずを戻してやってくれヴェ」

 「りょーかい、分かったわ、準備しとくね」


 リーちゃんはそう言って、カミテレコンのリボンを外し、画面を見守った。

 

 「何かすごく怒ってるみたいよ、こわーい……また、さっきの熱いヤツを撃って来るみたいやな、すずちゃんこっちも一発かますで……わかったー初コンボね」


 レイズはさらに間合いをとり、エラそうな顔をして腰に手を当てた。


 「ギャギャッ、お前、神に歯向かう気か? 後悔するギャ」

 「そんなん、やってみんと分からへんで……へんでぇ、イーだ!」


 「ゴハンガ、タケマシタ、スチームエクスプロージョン!」


 魔神オカマの手のひらから放たれた熱い水蒸気弾は渦を巻き、レイズの方に向かってくる。それを見てレイズのお腹にある羽根が勢い良く回り始めた。


 「クラッシュアイスブリザードッ」


 レイズのお腹から無数の氷の粒が竜巻のように発射された。その竜巻はオカマの水蒸気と衝突し、押し戻すように突き進んでいく。


 「ギャギャッ!」


 ドーーン!


 雷のような爆音が辺りに響き渡った。


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