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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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31、クソガキ達とSR-18

31、クソガキ達とSR-18

 昼下がりのドーナツ公園。

 昼ご飯を食べ再び集まったサンヨー達3人は秘密基地へと歩き始めた。

 東芝とソニーは「スゲー物」の正体が、一体何なのかを知りたくてたまらない。二人はサンヨーにそれを白状させようと、くすぐったりカンチョーしたりの拷問を加えながら歩いた。


 「ギャハハハ、やめろよ、やめろってば、言うから言うから、アハッアハッ」


 拷問に耐えきれなくなったサンヨーは観念し、「スゲー物」に関する供述を始めた。


 「なーんだ。そんなの、うちの炊飯器だってしゃべるよ。ウチガマがセットされていません、とか」

 「そうだよ、お風呂とか電話もしゃべるしさ、風呂沸いた~とかメッセージが~とか。しゃべるくらい全然すごくないじゃん」


 サンヨーの言うスゲー物が、しゃべる炊飯器だと聞いて東芝とソニーはバカにするように笑って言った。


 「ち、違うって!そんなふうにしゃべるのじゃなくって、普通にしゃべるんだってば。中にザリガニ入れたら急に暴れて怒られたんだから、あ、それと手と足もあって動くんだぜ」

 「手と足?ふーん、それってロボットじゃないのか?」


 ソニーはサンヨーの前に回り込み、後ろ歩きしながら顔を(のぞ)き込んだ。


 「オレも始めそう思ったんだけど、なんか違うんだよな。ロボットってもっとシュッとしてると言うか、つるっとして……あー何て言うんだろ」

 「未来からやってきた、みたいな?」

 「そうそう、そんな感じ。それでもって空を飛んだり、目からビーム出したりして」

 「う、うん……ビームは出なくていいけど夏休みの宿題、手伝ってくれたらいいいね」


 なんだかんだ言ってじゃれ合って歩いているうちに、狭い農道の先に秘密基地が見えてきた。3人は今までより少し早足で農道を進んだ。


 「あいつ、まだいるかな」


 サンヨーは真っ先に走り出し、草ボーボーの空き地にある秘密基地へ様子を見に行った。波板をそっとめくり中をのぞいてみると、SR-18は昨日と同じ場所に座っていた。


 「あ、いたいた。おーい、元気かー」

 「あら?昨日のクソガキじゃない、また来たの?」


 サンヨーは、まるで友達の家に遊びに来たように小屋の中に入っていった。東芝とソニーがそのあとに続き、しゃべりながら棚から下りてくるSR-18を見て、思わず息をのんだ。


 「わっ、ほ、本当だ……スゲー」

 「おやおや、今日はお連れさんがいるの」

 「すごい、返事したよ、どんな仕掛けになっているんだろ……」


 ドヤ顔でSR-18の横に立っているサンヨーを少し離れたところから見ている二人。メカっぽいものが好きなソニーは興味津々だ。恐る恐る近づいてSR-18を触ってみた。


 「ちょ、ちょっと気安く触るんじゃないわよ、それにあんた、昨日はすぐ帰っちゃったから言ってなかったけど、私の事あまり人に言わないでほしいんだけどね。親御(おやご)さんとか大人の人には言ってない?」


 SR-18に怒られ、ソニーはびっくりして手を引っ込めた。サンヨーはニヤッと笑い、ポケットの中をゴソゴソ探りながら答えた。


 「どーせ母ちゃんとかに言っても信じてくれないもん、お前の事はこいつらにしか言ってないよ。まあまあ、エサ持ってきてやったからそんなに怒るなよ」

 「エサ?」


 サンヨーはポケットからビニール袋に入った一握りのコメを取り出してSR-18に見せた。SR-18は(あき)れた顔で言った。


 「バッカねえ、こんなの私食べないわよ。大体さ、電気釜が米食ってしまったらご飯が炊けないじゃないのさ」

 「あ、そうか、そういやぁそうだな」


 ソニーと東芝は、そのやり取りを聞いて、吹き出すように笑った。


 「プッ、アハハハハ、そりゃそうだ、炊飯器が米食ったらいつまで経ってもご飯が炊けないよ、ハハハ」

 「おい、そんなに笑うなよ。じゃあさお前、何喰うんだよ」


 サンヨーは米を持ったまま地面に座り、頬杖をついてSR-18に聞いた。その後ろから東芝がサンヨーの両肩に手をつっかえて言った。


 「一応電化製品なんだから電気じゃないの?」

 「私、何も食べないのよ。詳しくは言えないけど、電気も必要ないのよ」

 「……ふーん」


 ロボットでもなく動物でもなく、何も食べなくてもお腹はすかない……3人はSR-18が一体何者なのか、さっぱり分からなくなった。

 少し考えてサンヨーは、思いついたように言った。


 「あ、分かった。お前食べたり飲んだりしないから、ケガしたところが治らないんじゃないのか?ちゃんと食べないと元気がでないぞって母ちゃんが言ってたぞ」


 サンヨーはそう言ってSR-18の錆びて穴が開いた所を触ろうとした。SR-18はビクッとして後ずさりした。


 「ちょっと、触らないでよ、塗装がポロポロ取れるんだから」

 「あっ、ごめんごめん。うーん……じゃあどうしよう、穴が開いたままじゃマズイよな……あ、そうだ! これいいんじゃない?」


 サンヨーはポケットの中をゴソゴソ探り、キラキラ光るシールを取り出した。昨日、横断歩道で拾ったシールだ。

 そう、そのシールはリーちゃんがトラックに()かれそうになった時、落としてしまったタマシールである。家電に魂を定着させる能力がある神のシール、なんてことはサンヨーは全く知らない。


 「コレ貼っとけばさ、穴もふさがってポロポロ取れたりしなくなるよ」

 「そうだね、僕んちに白いペンキがあったから今度持ってきて()げてる所に塗ってあげるよ」


 ……あら、この子達どうしょうもないクソガキだと思ってたけど、意外と優しいじゃない?

 そんなおもちゃのシールで治るわけないのは分かっているが、SR-18は傷ついた自分を心配してくれている、その気持ちがうれしかった。


 「ふーん、きれいなシールじゃない、それあんたの宝物じゃないの?」

 「ちがうよ、昨日道で拾ったんだ」

 「なーんだ拾いもんかぁ……フフン」


 SR-18はクスッと笑った。

 あーあ、私何を意地張ってたんだろ、人間ってどうしょうもないヤツばっかりだと思っていたけど、まんざら捨てたものでもないわね、バカだけどこんないい子もいるし……


 「しゃくだけど……帰ろっかな」

 「え? 何? 何か言った?」

 「いや、何でもないわよ。独り言」

 「ふーん、じゃ、貼るよ」


 サンヨーはタマシールの裏紙をはがし、SR-18に張り付けた。SR-18はキラキラ光るシールを見て(うれ)しそうに笑った。


 「どう? 似合うかしらね」


SR-18はバレリーナのように片足でくるっと回って見せた。すると突然シールが光を放ち始め、中央から黒い色に変わり始めた。SR-18は苦しそうにうめき声を上げた。


 「ぐうぅっ! なに……これ、あ、あんた私に何貼った……の?」

 「わわわっ、し、知らねーよ、なんだよ、どうなってんだ?」


 サンヨー達3人も腰を抜かして、その場にへたり込んでしまった。やがてシールを貼った所は黒いシミになり、そのシミは徐々に広がりSR-18の体を黒色に変えていった。


 「グフゥ……」


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