27、地デジカ事件
27、地デジカ事件
「おいおい、やめるんじゃ五重丸。魔法はかくし芸じゃないヴェ」
ヒエール様は静止しようとしたが、その前に五重丸が呪文を唱え切ってしまった。
「あちゃ~だヴェ」
「ねえ、レイちゃん、地デジカってあの地デジカ?」
「う、うん、そうやな。でも魔法で地デジカってなんやろ」
五重丸の呪文に首を傾げるリーちゃん。すると、遠くで突撃ラッパのような音が聞こえてきた。どうやらホビーコーナーあたりで鳴っているようだ。
音のする方向を見てみると、そこにモクモクとトンネルのような雲の輪っかが現れた。
「なんだ、なんだ?」
「何かのイベントかな? そんなお知らせ貼ってなかったけどなあ」
突然の出来事に辺りにいた他のお客さんたちがガヤガヤ騒ぎ始めた。
すると、雲の輪っかの中から地デジカが一匹、あら? もう一匹、またまた一匹……ドドドドドドドドーッ。
数え切れない、いや、大体50匹位の地デジカが、部活のランニングのようにカポカポ走りだしてきた。
「わーい! 地デジカがいっぱい出て来たよ」
「地デジ化キャンペーンのイベントが始まるみたいだぞ、行ってみよー」
他のお客さんたちも、地デジカの後を追っかけてついてきた。五重丸の前に整列した地デジカの周りはお客さんで一杯になった。
※「いでよ、地デジカ」この魔法は、いつでもどこでも地デジカを呼び出すことができ、地デジカは呼び出した家電達の命令を(なるべく)聞いて行動してくれる。
もちろん、他のお客さんには五重丸や家電達の姿は見えないので、パッと見、リーちゃん姉妹の前に地デジカが整列しているように見える。困ったリーちゃんは、オロオロしながらミーちゃんに抱き着いた。
「どうしよう、お姉ちゃん、地デジカめっちゃこっち見てるよ」
「そ、そんなの私に言われたって……五重丸! あんたが呼び出したんだから、早く何とかしなさいよ」
「あはは、ちょっと試しにやっただけなのに大騒ぎになったね」
「あははじゃないヴェッ。もーう、だからやめておけと言ったのにヴェ。五重丸よ、このゆるキャラ鹿どもを何事もなかったように解散させるヴェよ」
ああ、落ち着いた雰囲気で「できる子」だと思っていた五重丸もやっぱり……五重丸はヒエール様に言われた通り地デジカたちに命令を出した。
「わかりましたヒエール様、えーっと、じゃあ地デジカ諸君、怪しまれないように解散!」
出て来ていきなり「解散」の命令を告げられた地デジカたちは、一瞬ひるんだが、直ぐに気を取りなおし、最前列にいた一匹の地デジカが振り向いて他の地デジカに言った。
「はいっ、今日の練習はここまでっ、お疲れさまでしたぁー」
そう言われた他の地デジカも、後ろに手を組み一斉に答えた。
「オッケー! デジデジッ」
……しゃべるんだね……地デジカって。
とりあえず命令にはそこそこ答えてくれるようだ。地デジカたちは隊列を組み、回れ右をし、雲の輪っかに向かってカポカポ走り出した。地デジカは輪っかの中にどんどん消えてゆき、最後の一匹が入ると雲はかき消すようにフワッと消えてしまった。
「なーんだ、練習だったのか。つまんねー」
「しかし、あの雲のトンネル、よくできたイリュージョンだねえ、どんな仕掛けなんだろ」
何かを期待していたお客さんたちも残念そうにワラワラ解散していった。
「アヒャヒャヒャ、なかなか面白かったォ? 地デジカ気に入ったダォ」
「ブラウン殿、笑い事じゃないヴェ、変に騒ぎになったら、電気釜殿を探すのに支障がでるヴェ」
「大丈夫だボー、いざとなったら我の神技『マッシロケー』で記憶を消してやるボー」
「ま、今日のところは地デジカたちが上手くごまかしてくれたし、そこまでしなくていいヴェ。そして、よいか五重丸よ。魔法は遊び半分で使っちゃだめだヴェ、大事な時だけに使うようにするヴェよ。他のみんなもじゃぞ」
「承知しました。神様、以後気を付けます」
「ごめんなさーい神様、私が勝手に飛んだからいけなかったのね」
「オッケー! デジデジッ」
ヒエール様はため息をつき、両手で目を覆い、ブツブツぼやいた。
「はあ~、なーにがデジデジじゃ、ジャブよ、魔法を使うと魔力を消費して活動できる時間がそれだけ短くなるヴェ。遊び半分で使うでないぞ」
ここで少し時間を戻し、ドーナツ公園にいるサンヨー達3人の様子を見てみよう。
「キャー!」
女の子のような悲鳴を上げたのはサンヨーだった。
ま、手に持っていた氷玉が突然消えてしまったのだから仕方ないか。東芝とソニーは、氷玉が消えたこととサンヨーの悲鳴にびっくりし、はじけ飛ぶように飛び上がり、尻もちをついた。
「み、三井君、何? 手品なの?」
「できねーしそんなの。あの氷は、どっかから突然オレの頭の上に落ちてきたんだから。それが今、勝手に消えちゃったんだよ、ホラまだ手が冷たいだろ?」
そう言いながら、びちゃびちゃの手を触らせようと近づいてくるサンヨーから逃げるように二人は後ずさりした。
「わかった、わかったから、でも不思議だよな、こんな事ってあんのか?」
「夏でも『ひょう』っていう氷が降ることがあるってニュースで見たことあるけど」
「こんないい天気でも? 一個だけ? それにさ、あんな大きいの空の上から落ちてきて当たったらオレ絶対死んでるし」
「そーだよな、いくらサンヨーが石頭でも、死ぬな」
小学1年生の男子3人がいくら考えても分かるわけがない。ましてや冷蔵庫が魔法で作り出した氷玉でした、なんて大人でも思いつかないだろう。
濡れた手をTシャツで拭きながら、サンヨーはフッと思いついた。
「でもさ、昨日といい、今日といい氷で変なことが起こった時、いつもアイツがいるんだよなあ」
「あいつって、ひょっとして松下さんのこと?」
昨日もサンヨーと一緒にいた東芝も、なんとなくリーちゃんが関係しているんじゃないかと思っていた。
「そうそう、でもそんな魔法みたいなことアイツにできる訳ないし……あ、もしかしてアイツの正体、実は雪女とか」
「バカだなサンヨー。今は夏だぜ? 雪女なら溶けちゃってるよ」
「なんだよソニー、バカにするなよ。だいたい雪女なんている訳ねーだろ。それよりさオレ、秘密基地でスゲーもの見つけたんだ、昼ご飯食べてからみんなで行こうぜ」
「すげぇものってあのザリガニ?」
「違う違う、もっともっとスゲーーもんだぜ、絶対びっくりするから」
小学1年生男子3人。今はとにかく……腹が減った。
サンヨー達3人はお昼ご飯を食べてから、またドーナツ公園に集まることを約束し、それぞれの家に帰っていった。




