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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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26、神様との契約

26、神様との契約

 リーちゃんは、コードをたぐり寄せベフを抱き上げた。


 「よーしよしよしダメよベフ、ヒエール様は今、大事なお話をしてるんだからね」

 「キャイキャイーン、ベフベフベフ」


 リーちゃんに抱っこしてもらったベフちゃんは嬉しそうにコードをパタパタした。その様子を見てヒエール様は目を細めて感心した。


 「フォフォ、昨日はリーちゃんがベフのようにガサガサしておったのに、今日はしっかりベフの面倒をみておるわい。たった一日で随分成長したものじゃのう……」


 まるで孫の成長を喜ぶおじいちゃんみたいなことを言ってまったりしているヒエール様に、両脇にいるブラウン様とペタンコ様がツッコミをいれた。


 「ヒエール殿、感心している時でないォ? 新しく来た家電達に魔力を授けるダォ」

 「そうだボーそして、みんなで電気釜殿を探すんだボー」

 「おっと、そうじゃったヴェ。では話の続きを……えーっとどこまで話したかのう」


 ヒエール様は再び話の続きを始めた。内容は昨日レイちゃんに話したこととほぼ同じ。

 実はここだけの話、家電達に魔力を授けるのに「神様との契約」は必要ない、というかそんな契約は最初から存在しないのだ。

 定着された魂の性格、そして優しき心で名前を付けてもらっているか等々、説明をしている間に魔力を授けていいかどうかを見極めるための面接タイム。はっきり言って、ただの時間稼にすぎない。


 「よっしゃ、電気釜とやらを探して連れてきたらエエんやろ? 楽勝やん」

 「神様、承知致しました。リーちゃんと協力して電気釜殿を探し出して見せます」

 「なんか、かくれんぼみたいで楽しそうねー、やるわー。やるやる」

 「ベフッ」


 もちろん3人と一匹の家電達は全員合格。「神様との契約」を結んだ。

 ただ……


 「リーちゃんよ、家電達はこれで全員魔法が使えるようになったんじゃが……ベフだけはのう」

 「え? ベフちゃんは魔法が使えないの?」


 リーちゃんは抱いているベフをよしよししながらヒエール様に聞いた。


 「使えるようにはしたんじゃがホレ、ベフは犬じゃヴェ? トリセツが読めないヴェ」


 そりゃそうだ。だって犬だもん。話していることは大体わかっているみたいだけど、文字を読むのは多分ムリ。


 「なんやそれ、ほんならベフはただのペットかいな」


 ジャブ君は、リーちゃんに抱っこされているベフを見てそう言った。ベフちゃんは小さな唸り声をあげ、ジャブ君をにらみつけた。


 「いやいや、魔力はちゃんと授けておるから魔法は使えるヴェ。だからリーちゃんよ、すまんがベフのトリセツを読んで教えてやってほしいヴェ。ベフは汝になついているようじゃし、きっと覚えてくれるはずじゃヴェ。他の物は自分のトリセツを読んで自習してくれヴェ」


 レイちゃんはベフのフタを撫でながらリーちゃんに言った。


 「犬に『おすわり』をしつけるみたいな感じやな。リーちゃん、ボクも手伝うから。ベフとボクはキッチン家電仲間やからな」

 「ええなぁ、オレもしつけてえな、トリセツ読むのめんどくさいし、キャインキャイーン」


 ずぼらなジャブ君は、犬っぽく甘えてレイちゃんにすり寄った。レイちゃんはすごく迷惑そうに後ずさりした。


 「ハハッ冗談やがな、じょ、お、だ、ん。さっ五重丸君、すずちゃん、屁こいて自習でもしよか」

 「やだもーうジャブ君、下品なんだから。扇風機が屁こいたらすごく迷惑でしょうに」

 「こかへんよ、オレかって。『屁こいて』はボケっちゅうか、枕詞(まくらことば)っちゅうか、そんなもんやし。すずちゃんも天然やな、オモロイわー、扇風機が屁こいたら、そりゃ部屋中がクサ……」


 「ホレホレ、お前達。漫才はその辺にしておいて自習するヴェ、ジャブもめんどくさがらずにちゃんとするヴェよ」


 ヒエール様は、お笑い番組みたいにワイワイ騒いでいるジャブたちにくぎを刺した。ジャブとすずちゃんはボケツッコミをやめ、それぞれのトリセツを取り出し、表紙のデザインとか厚みとかを見せ合いっこ、比べっこしながら自習を始めた。

 

 「さてと、みんなが自習しておる間にミーちゃんにこれを渡しておこうかヴェ」


ヒエール様はそう言って、人差し指をクルリと回し呪文を唱えた。「ヒエヒエホイっと」するとミーちゃんの手の中にカチューシャがふわりと現れた。カミテレコンだ。

 デザインはリーちゃんのものとほぼ同じだが、色は渋い目の青色。ミーちゃんはぴょこんと飛び上がって喜んだ。リーちゃんも近くに寄ってきて、お姉ちゃんが頭につけたカミテレコンを見て微笑んだ。


「わーい! ヒエール様ありがとう、いい色ね、気に入ったわ」


「そうかそうか、気に入ってくれてよかったヴェ。リーちゃんのカミテレコンと話せるようにボタンを追加しておいたからの、もちろん英雄ドッコモは関係ないからお金はいらないヴェ」


 ミーちゃんは、英雄ドッコモって誰? と首を傾げながらリボンを外してみた。それを見てリーちゃんもリボンを外し、比べてみた。ミーちゃんのリボンには「香織」のボタンが、リーちゃんのリボンには「美香」のボタンが追加されていた。


 「あ、ホントだ。これでお姉ちゃんといつでも話せるね」

 「だからと言って、やたらと電話しないでよ。私だって忙しいんだから」

 「ぶー、ちょっとくらいならいいでしょ……? あ、あれ? お姉ちゃん、ちょっと見て見てっ!」


 リーちゃんが指を差したのは店内の天井付近。ミーちゃんと神様達がそっちを見ると、そこにはすずちゃんがいた。飛んでる! 羽を回転させ、まるでヘリコプターのように飛んでいるのだ。


 ※すずちゃんの魔法「空を飛ぶーん」上昇気流を作り出し、空中を飛ぶことができる。見た目弱々しいが魔法の力で飛んでいるので、結構重いものでも一緒に飛ぶことができる。


 「わーい! わたし飛んでるわ! 気持ちいぃーブーン」

 「おーい、すずよー、ほどほどにしておかないとバタンキューになるヴェー」


 ヒエール様は店内を楽しそうに飛び回っているすずちゃんに降りてくるよう手招きした。


 「え、何ー? ヒエール様、なんなの? バタンキューって何?」


 すずちゃんは、つまらなそうな顔でフロアーに降りてきた。初めての飛行にしては着地も上手く決まった。すずちゃんは、なかなか運動神経がよさそうだ。

 そして駆け寄ってくるすずちゃんにヒエール様はぼやいた。


 「まったく、レイ太といい、お前といい、最近の若いもんはトリセツをちゃんと読まぬ者ばっかりじゃのう。よいか、トリセツには魔法の使い方だけでなく、大切なこともいっぱい書いてあるから隅々までしっかり読むヴェ」


 「えーっとバタンキューバタンキューっと、あ、あった。何やねん小っちゃい字でこんな下の方に……めんどくせー、なぁ五重丸」


 ジャブ君はレイちゃんと、ほぼ同じ文句をたれて、五重丸に同意を求めた。五重丸は一枚のカードを出して見せた。表には「トリセツ」と書いてあり、裏返すと「詳しくはウェブで」と「ググレヤ」の魔法の説明が記されている。


 「僕のトリセツはこれだけなんだ。ここに書いてある『ググレヤ』の魔法を唱えただけでほかの魔法が全部インストールされたんだ」


 「おぉー! さすがデジタル家電やな、かっけー。じゃ、なんかやってみてや」

 「やって、やってー」


 みんなにせがまれ満更(まんざら)でもない顔で、五重丸は静かに目を閉じ言った。


「そうだね、じゃ一つやってみるか」


 五重丸は人差し指と親指をL型に立て呪文を唱えた。


 「いでよ、地デジカ!」


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