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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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17、神様のお願い

17、神様のお願い

 おやつを食べ終わったリーちゃんは子供部屋のある3階に上り、レイちゃんを無事戻せた事を神様に報告するため、気が進まないがカミテレコンを元の姿に戻すため、教えてもらった言葉を唱えた。


 「オーチャイジュー」


 カチューシャは元のへんてこりんな姿に戻った。リーちゃんはヒエール様のボタンを押し、あの臭そうな呼び出し音を近くで聞きたくないので、ベッドの上にポイと放り投げ、床にペタンと座った。


 ビチビチビチビチ♪ビチビチビチビチ♪


 カチャ


 「おお、リーちゃんよ、レイ太は上手く戻せたかヴェ? ……あれ? おーいリーちゃーん」


 ヒエール様の声が受話口から聞こえてきた。リーちゃんは立ち上がりカミテレコンを拾い上げ、ベッドに座って話出した。


 「神様おまたせー、レイちゃんはちゃんと冷蔵庫に入ったみたいよ。入れるときオナラみたいな音したけど大丈夫かな? いつ頃元気になるかなぁ」 


 心配そうにしているリーちゃんにヒエール様は、やさしく答えた。


 「そうかそうか、よくやってくれたヴェ。レイ太も明日の朝には元気になるから、今はそっとしておいてやってくれヴェ。ところでリーちゃんよ、先ほど店で我がそなたに頼みたいことがあると言っていたのを覚えておるかヴェ?」


 ああ、そうそう、店のお姉さんの邪魔が入って話が途中で終わってしまったけど、そんなこと言ってたわね。リーちゃんはベッドの上をゴロゴロしながらそのことを思い出した。


 「うん、覚えてるよ。それで頼みたいことって何なの?」


 ヒエール様は答えた。


 「頼みたいこととは、人探し、いや、家電探しじゃヴェ。我の親友、電気釜のSR-18を探してほしいのじゃ」

 「え? デンキガマ? それって何?」

 「電気釜とは、今風に言えば炊飯器じゃヴェ。ご飯を炊くヤツじゃ、リーちゃんの家にもあるじゃろ?」


 リーちゃんの頭の中にキッチンにある炊飯器が浮かんだ。


 「ああ、あれのことね」


 ヒエール様の話では、リーちゃんの住むこの地域の平和を今までは3神で見守ってきたが、ここ最近の急激な宅地開発で住民が急増し、ヒエール様達だけでは手に負えなくなってきた。困った神様たちは天界の神々に増員をお願いし、電気釜SR-18を神に昇格してもらう事になった、ということだ。


 「ふーん」


 「天界の神からいただいた魂を吹き込まれたSR-18は、とても驚いた様子だったヴェ。無理もない、たった今まで我の後ろの棚に置かれていた、ただの古ぼけた電気釜じゃったんだからのう。SR-18は自分の手足をプラプラ動かし、物珍しそうにしておったヴェ」


 「ふーん」


 「そして我は新しく神になってもらう事を説明し、彼と『言霊の契約』をしようとしたヴェ。すると、彼はそれを拒否し急に走り出し、店のガラスを突き破り逃げて行ってしまったのだヴェ」


 「グー」


 「あれ? 何かイビキのような音が……? おーい、リーちゃん起きてるかー!」


 色々あって少々お疲れ気味のリーちゃんは、ヒエール様のよく分からない長い話を聞いているうちに、ウトウト寝てしまっていた。


 「ふにゃ……あ、起きてるよ、電気釜がいなくなったのね、それを探してほしいのね」


 「やれやれ、リーちゃんもバタンキュー寸前かヴェ、やはりレイ太と二人では心配じゃのう」

 「そうだォ、早くタマシールで仲間を増やさないとこれから大変だォ」


 退屈していたブラウン様が話の中に入って来た。仲間を増やす?


 「ねえねえ、ブラウン様、タマシールで仲間を増やすってどういうことなの?」


 「それはのぅ、リーちゃんの持っているタマシールをほかの家電にも貼るんだォ。そうすればその家電もレイちゃんのように話せるようになるだォ。簡単だォ?」


 貼るだけ。

 確かに簡単だけど……


 「でもさぁ、前に電気のスイッチに貼ったけど、喋れるようにならなかったよ、貼り方が悪かったのかな?」


 「家電に関係があっても何でもいいって訳ではないのだヴェ。スイッチは部品じゃからタマシールの効果がなかったのじゃヴェ。もちろんぬいぐるみとかもダメだヴェ」


 タマシールは呪符を子供でも簡単に使えるよう、ヒエール様が創り出したもの。その効果は家電製品に魂を定着させること。ただし、スイッチとか乾電池など部品や消耗品に貼っても効果はない。


 「分かったわ、今度はレイちゃんの時みたいに慌てないで、ちゃんとやるから。あ、お名前もあたしが付けるからね、まかしといて」


 リーちゃんはまだ小さいがとても気が利く子だ。神様に「言霊の契約」を任すとまた変な名前を付けそうだから先に主導権を握っておいた。

 いい名前を二つ三つ用意していたヒエール様は、ちょっと残念そうに承諾した。


 「そうか……わかったヴェ。じゃがリーちゃんよ、ふざけたような名前を付けては絶対ダメじゃぞ。平凡な名前でいいから優しい気持ちを込めて付けてやってくれ。レイ太の時のようにの」


 もし、変な名前を付けてしまったら、その子が可哀そうだもんね「おいで、ババマミーレ」なんて呼ぶのもカッコ悪いし。

 リーちゃん自身も変なあだ名で呼ばれ、イヤな思いをしているので、あたしは絶対そんなことはしないよと、心の中で決めていた。


 「うん、わかった。かわいい名前を付けてあげるね……あ、そうだ」


 リーちゃんはもう一つ大切なことを思い出し、神様に訊ねた。


 「ヒエール様、このカミテレコンいつカイリョーしてくれるの? ヒエヒエホイってすぐに出来るんじゃないの?」


 「おお、忘れておらんヴェ。今作っておるからもうしばらく待ってくれヴェ」


 簡単な改良ならその場でホイっと出来るのだが、リーちゃんの要求があまりにも多かったので他の神様とも相談し、一から新しく作り直すことにしたのだ。


 「ふーん、つまりキシュヘンってやつね」


 「ほ? キシュヘンとは何か知らんが、天界から良い材料を取り寄せて作っておるから少し時間がかかったのじゃヴェ、まもなく完成するからそのままにしておいてくれヴェ」


 「分かった。じゃこのままにしておくね」


 「ねえ、それ、いつから持ってるのさ」


 「いつからって、神様がさっきくれたんじゃ……えっ?」


 思わず返事しかけたが、その声がカミテレコンからの物でない事にすぐ気が付いた。


 「ちょっと、なんでリーが携帯持ってるのよ。私も持ってないのに!」


 背後からの不機嫌な声にリーちゃんはベッドの上でビクッとして振り返った。そこにはお姉ちゃんがムッとした顔で立っていた。

 リーちゃんがヒエール様達との話に夢中になっている間に、いつの間にか部屋に入ってきていたのだ。リーちゃんはあたふたしながら、ヒエール様に報告した。


 「わっヒエール様、お姉ちゃんにバレちゃったよ、ど、どうしよう」


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