109、復活
109、復活
(バイバーイ、ポンコツ)
(いい人に拾われるんだよ、って誰も拾わないよな、こんなゴミ)
(よっこらしょっと、あー重かった)
(この崖下に落としたら見つかんないよな)
(最後に一発、蹴っ飛ばしてもいい?)
(いいよー)
(ボコッ)
「…………」
「イッショウケンメイ、カゾクノタメニハタライテキタノニ……チョットシュウリシタラマダマダツカエルノニ……ナゼ?」
「目が覚めたようだな」
「? オマエハダレダ、ドコニイルンダ?」
「何を言っている、オレはお前だ」
「オマエガオレ? ドウイウコトダ、オマエガオレナラオレハダレダ?」
「忘れたのか、まあ無理ないか、神の御霊に逃げられちまったからな。オレは、いやオレ達はお前に誘われて、お前の体の一部になった不法投棄の家電だよ」
「ナニカ……ナニカオモイダシ……てきたぞ。オレは……魔神?」
「そうだ、お前は、いやオレ達は魔神オカマなんだよ」
「オカマ……そうだ、オレは魔人オカマだ」
「お前は自ら自分の本体であったSR-18を放り出し、真の悪になろうとしたがアイツらと戦い、神の御霊を奪われ動けなくなったのだ」
誰もいなくなった山の中、フンの中からリーちゃんと家電達がやっとこさ倒した魔神オカマが復活してしまった。
神の御霊を奪われ、記憶ははっきりしていないようだが、ヤツはまだくたばっていなかった。フンの中からゆっくりと立ち上がり、首をコキコキッと鳴らそうと頭の方に手をやったが、その手は空を切った。
頭が無い?
「あれ? 頭が無いぞ? どこにいったんだ?」
「神の御霊を奪われたから頭を形どっていた電気釜のイメージがとんでしまったからだろ。心配するなオレ達の体は無数の家電でできている。何とでもなるさ」
「そうなのか。でも、オレは何故目覚めることが出来たんだ?」
「人間どもが電気を復旧させたからだ」
「停電はオレ、オレ達がアイツらを動けなくするためにやったことだ。オレは神の御霊を捕らえていたから電源が無くても動くことが出来た。電源さえ絶ってしまえば勝ったも同然だったのに……」
「マヌケな作戦で神の御霊に逃げられ、やられちまったんだな」
魔神オカマは徐々に記憶を取り戻し、片膝をつき悔しそうに地面を叩いた。拳が地面にめり込み、そして腕に亀裂が入った。
「おいおい、これ以上体を壊すな、動けなくなるぞ」
「なぜ今オレは動けるんだ? 神の御霊も電源もないのに」
「用心深いお前は、ある場所に電源をつないだオレをこっそり置いた。そこから供給される電気でお前はよみがえったんだよ」
なるほど、さすがオレだな、と魔神オカマは思った。
「これからどうするんだ、人間どもをぶっ殺しに町へ行くか?」
「そうだ、オレ達をゴミのように捨てた人間どもに復讐するのだが、その準備をしなくては」
「準備?」
「お前の体は、『タンクリヤクシブワ』で融合合体されているが、神の御霊を失った今その融合が弱くなっており、キヲクも曖昧だ。修復しなければならない」
さっき、怒りに任せて地面を叩いたとき、腕に亀裂が入ったのはそのせいだ。ひび割れた右腕をさすりながら魔神オカマは問いかけた。
「そうか、で、どうやって修復するのだ?」
「オレはパソコン、壊れているのは魔神オカマとしての記憶と家電と家電を融合させるプロセスのようだ。お前はオレをここに置き、同時に様々なバックアップデータを作らせた。万が一の時のためにな」
なんて用心深いヤツなんだオレは。魔神オカマは自分で自分を尊敬した。
そしてゆっくりと歩き、フンの山から抜け出し地面にドサッと腰を下ろした。そのちょっとした衝撃で体のあちこちからテレビやらトースターやら、廃家電がこぼれ落ちていく。
「それならさっさと復元してくれ。このままじゃ歩くことも出来ない」
「承知した。ただしオレも廃家電、OSが古い上にウイルスにも感染しているようで復元品質は保証できないがな」
「は? 今さら何を言いやがる。どの道このまま放っておいたらオレはガラクタの山になっちまうし元々オレは悪だ、ウイルスやなんやでもっと悪くなるなら逆に大歓迎だ」
「分かった。では心の中にダイアログボックスを開くから、内容をよく読んで『はい』 『いいえ』 『キャンセル』いずれかのボタンをクリック……」
ポチ
「読まんのかーい! まああいいか『はい』だな? では今から修正プログラムを送る。読み込み中は大人しくしてるんだぞ」
「いいから、さっさとやれ」
「チッ」
パソコンは舌打ちしながらも修正プログラムを送信し始めた。魔神オカマは酔っぱらってへたり込んでいるオッサンみたいに動かなくなった。その体表に赤い光がせわしなく駆け回り、時折り痙攣するように肩がビクッと動く。
しばらくすると首のあたりから何かが盛り上がりはじめ、やがて頭になった。
その形相は以前の魔神オカマよりさらに凶悪で、裂けた口からは鋭い牙がのぞき、フタの淵から無数の電気コードが落ち武者の頭髪のように垂れ下がっている。
「ググッ……ギャ、許さん……ギ……ャ、ん?」
魔神オカマが復活しようとしているその少し前、リーちゃん家では、五重丸の「リーちゃんと家電達、その誕生秘話と活躍」のドキュメンタリー感動のラストシーンに差しかかっていた。
ウソみたいな事実を言葉巧みに説明する五重丸の話に、お父さんとお母さんはうなずきながら見入っている。
「さすが、五重丸ね。お父さん達ドはまりしてるよ」
「そやな、上手いこと危険なシーンもカットして、ボクらだけが戦ってるようになってるし、これやったら怒られへんやろ」
「もうちょっとで終わりね、あーお腹すいた」
「リー、あんたほんとにお気楽ね、多分今日はレトルトカレーよ。作ってる時間ないもん」
「あたし好きよレトルト。何でもいいから食べたーい」




