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リーちゃんと家電たちの夏  作者: 大門しし丸
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107、家宅の神様

107、家宅の神様

 ペチペチ


 「ふーん、冷蔵庫だから固いのかと思ったらお餅みたいなのね」

 「お、お母さん……?」

 「中は見れるのかしら、あ、開いた。出し入れは出来ないけど買物に連れて行ったら便利ね。リー、今度貸してね」

 「貸すって、お母さん何で?」

 「決まってるじゃん。スーパーに買い物いくでしょ? あら? 卵何個残ってたっけーってなるでしょ? そんな時、横に冷蔵庫君がいたらシャっと確認できてチョー便利……」

 「そうじゃなくって! 何でレイちゃんが見えるの、触れるの?」

 「へー、レイちゃんって言うんだ、カワイィー。他の子も名前あるの?」


 お母さんは目の前の家電達に興味津々で、リーちゃんの質問はまったく耳に入っていないようだ。ジャブ君や他の家電達も順番にいじくり廻され、お母さんはキャーキャー騒いでいる。


 「えっ? 犬? 炊飯器は犬なの? お手とかするの? よーしよしよし」


 ……家電達の姿は、タマシールを使った者にしか見えないはず……はっ!

 リーちゃんは急いでショルダーバッグの中をゴソゴソ探し、残った最後の1枚タマシールを見つけた。


 「あ、あった。このタマシールを使ったのかと思ったけど違うのね」


 ヒエール様にもらったタマシールは全部で10枚。

 5枚はレイちゃん達に使って、1枚はうっかり落としたのをサンヨーが拾って、炊飯器さんに貼りつけてしまって、あと東芝とソニーに1枚ずつ渡したわ、


だから全部で8枚と残った1枚で9枚……あと1枚……あ、そうだ。

 あと1枚はリビングの電気のスイッチの所に貼ったんだっけ。

 リーちゃんは、電気のスイッチの方に目をやった。


 「あれ?」


 ピカピカ光っていたタマシールが、いつの間にか黒いシミになっている。


 と言う事は……


 前に貼ったタマシールが発動し、家電に魂を定着させたと言う事だ。でも、なぜ今頃?

 それに、そもそもタマシールはスイッチや乾電池みたいな「部品」に貼っても効果は無いはず。


 「リーちゃん、どないなっとんねん、ボクらお母さんにめっちゃ見えてんねんけど」

 「わかんない、タマシールもちゃんと残ってるし、あっ電気釜さん、なにかした?」

 「する訳ないでしょ、そんな事どうでもいいから、そろそろ出してくれない?」

 「あら? リーまだ誰かいるの? 電子レンジのチンコさんとか? あらヤダ下ネタ、ははっ」


 「ハッハッハー、みんな楽しそうで何よりじゃェイ。家内安全は我の願いじゃ、よきかな、よきかな」


 突然、お風呂の中で喋っているようなエコーのきいた声が、みんなの心の中に響き渡った。


 「神眼コンタクト? でもヒエール様達の声じゃないし、誰? 誰なの?」

 「ハッハッハー、我は松下家を守護する家宅の神々じゃイェイ。この度、太陽光発電システムの家電達として仲間入りすることにしたェイ。よろしくじゃェイ」


 「太陽光発電システムの家電達? そうか、電気のスイッチのタマシールが黒くなったのは、あなたが生まれたからなんですね」

 「そのとおりじゃ、五重丸。まあ生まれたと言っても我はこの家の守り神として建った時からずっとこの家におるんじゃがのう」

 「魂が二つ入って大丈夫なんですか? 以前ヒエール様から聞いた話だと、変色したり爆発したりするって聞いたんですけど」

 「ハッハッハー、我の魂は元々火の神、水の神など、多くの神々の集合体の様なものじゃ。人の魂が一つ張り付いたくらいへっちゃらじゃイェイ」


 ひとまず爆発したりすることはなさそうだ。っていうか、ヒエール様達よりスゴイ神様みたいだけど、友達になっていいの?


 (それに、なんでお母さんに家電達が見えるようになったのかしら。あのタマシールを張ったのはあたしなのに……)


 「それはの、レイちゃんらが攻撃を受け壊れてる時に、お母さんが我を自立運転させようとしたからじゃイェイ。そんなことしたらレイちゃん等は即死、家のテレビや冷蔵庫もぶっ壊れてしまうからの、ついうっかり話しかけてしまったんじゃ、イェイ」


 リーちゃんが心の中で思った疑問に速攻で答えが帰ってきた。しかもやたらと軽い。

 家電達の性別や性格は、貼りつけられた魂できまる。関西系コテコテのレイちゃんやジャブ君、冷静沈着な五重丸、キャピキャピすずちゃんに江戸っ子ダイさん……しかしこの太陽光発電システムの家電達は元々家宅の神、しかも多くの神々が融合しているらしい。

 格の高い神様のようだが、全然威厳を感じないこの軽さは、張り付けられた人間の魂が影響しているのか? それとも元々こういう方なのか? 五重丸は尋ねてみた。


 「あの、神様。神様は以前からなんて言うかその、気さくな方だったのですか?」

 「さあ、どうじゃったかの、ただ最近何か若返ったというか、ひじょーに気分爽快なんじゃがの、イェイイェーイ」


 ……やっぱり何かしら影響しているようだ。

 複雑な表情の五重丸の横から、リーちゃんが質問した。


 「あのさ、神様、まだ名前聞いてなかったんだけど、何ていうお名前なの?」

 「ハッハー、そんなの決まっておろう。我の名は表札書いてあるイェイ」

 「表札に? 玄関の?」

 「そうじゃイェイ、我の名は『松下』じゃ。松下さん家じゃイェイ。リーちゃんと一緒イェイ」

 「えーっ、そうなの。ややこしいね、あたし達も松下さんだし。どうしようかなぁ……そうだ! 松下さん家から松下を取って、サンチ。サンチ様にしましょ。それでいい?」

 「おお? 我に名前を付けるとな? 面白いのうリーちゃんは。よしよし気に入ったぞ、これから我のことをサンチ様と呼ぶがよいぞイェーイ」

 「イェーイ」


 あらま、神様にあだ名みたいな名前つけちゃったよ。大丈夫かな。

 まあいいか、明日ヒエール様に電気釜さんを渡したら、一応ハッピーエンドだしね。


 あ、そうそう。完璧なハッピーエンドにするにはもう一件。

 電力会社の作業員、復旧作業はもう終わったのかしら。


 「よーし、これで全部直ったぞ。何とか日没には間に合ったな」

 「よかったっすねえ、じゃ早速電源を入れてみましょう」


 そう言って作業員はキュービクルのスイッチを入れた。LEDが点灯し、あちこちのメーターの針がピンピン動き出す。


 「数値も正常、大丈夫そうですね」

 「よし、じゃ引き上げるか。早く帰って不法投棄と、宇宙人の話も報告しなきゃな。信じてくれないかもしれないけどな」

 「ググゥ……」

 「なんだ? 何か言ったか?」

 「オ、俺じゃないっすよ……そのウンコの山からうめき声が……」


 作業員が震えながら指さす方を見てみると、地デジカのフンでできた山がポロポロ崩れ始めた。


 ハッピーエンドはもう少し先のようだ。


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